収入金額と所得金額の違いとは?
収入金額とは?
「収入金額」とは、その事業の売上金額のことを言います。
もし、りんごを100個仕入れ、1個あたる100円で全部販売した場合は、100円✕100個で1万円が収入金額となります。
サラリーマンの場合は、税金や社会保険料などが差し引かれる前の金額となります。
年末に配られる「源泉徴収票」のなかの「支払金額」が、収入金額に相当します。
毎月配られる給料明細には「総支給額」や「差し引き支給額」などといった記載があるかと思いますが、それは、いわゆる「手取り」と呼ばれるもので、収入金額とは異なります。
なお、公的年金を受給されている方の場合も同様で、源泉徴収や社会保険料などが引かれる前の金額を指します。したがって、記帳された金額(振り込まれた金額)とは異なります。
所得金額とは?
収入金額と似た言葉に「所得金額」があります。
2つを混同していらっしゃる方が多いですが、実は全く異なります。
所得金額とは、収入金額(事業の売上げ)から、必要経費を引いた金額のことです。
所得金額 = 収入金額(売上) ― 必要経費
さきほどのりんごを例に説明をしますと、売上から仕入れ値などの必要経費を引いた金額のことです。仮に、りんご1個あたり30円で仕入れたとすると、100個のりんごを仕入れるのに3,000円の経費がかかっていることになります。売上1万円から経費である3,000円引いた7,000円が所得となります。実際には送料や梱包費、賃料などがかかることが一般的ですが、それら経費をひっくるめて引いた金額が所得になるというわけです。
いっぽうで、サラリーマンの場合は収入金額から「給与所得控除」を引いた金額になります。
源泉徴収票のなかでは「給与所得控除後の金額」といった表記で書かれています。
給与所得控除とは、サラリーマンの必要経費相当額として定められた金額であり、収入金額によって変わってきます。
なお、年金所得者も同様に「公的年金等控除額」が引かれた後の金額となります。
年末調整における「収入金額」の定義
では、年末調整における収入金額の定義とはどういったものなのでしょうか。
年末調整は年に一度ということもあり、毎年頭を抱えている人が多いはずです。
改めてここで整理していきましょう。
▽年末調整の収入金額とは総支給額のこと
年末調整のなかにある収入金額の欄には、税金や社会保険料が差し引かれる前の金額(総支給額)を書きます。社員でもパートでも年に1度は源泉徴収票をもらっているはずですので、そのなかの「支払金額」のことです。
※国税庁「給与所得の源泉徴収票」の申請書用紙の一部を加工
ちなみに、給料は現金でもらうのが一般的ですが、まれに商品などで支給される場合もあります。
または、会社の保有する建物や土地などで支給されるケースもあります。
この場合、それに相当する金額も収入金額に入れる必要がありますので注意して下さい。
※労働基準法では賃金を現物支給によって支払うことは原則認められていません。
ただし、労働協約などで現物支給を行う記載がある場合は、例外として現物支給が認可される可能性もあります。また、賞与は労働基準法の定めがないため現物支給が可能となりますが、会社の就業規定などに賞与に関する取り決めがない場合のみ認められます。
▽所得金額は収入金額から給与所得控除を引いた金額
では、年末調整にある、所得金額には何を書けば良いのでしょうか。
答えは、収入金額(総支給額)から給与所得控除を引いた金額です。
繰り返しになりますが、給与所得控除は収入金額によって変わります。
収入金額が162万5,000円までの方は一律55万円で、それ以上は計算式に当てはめます。
※国税庁「No.1410 給与所得控除」
たとえば、収入金額が600万円の方は、
600✕20%+440,000円=164万円
となります。
▽さらに特定支出控除を差し引く場合も
給与所得控除とは別に、「特定支出控除」というものもあります。
これは、通勤費や資格取得費など、7.項目への支出が、給与所得控除額の半分以上占めた場合に適用されます。
適用されると所得金額は以下のとおりになります。
所得金額 = 収入金額 ― 給与所得控除 ― 特定支出控除
ちなみに、対象となる7項目は以下のとおりです。
1.通勤費
2.出張費
3.転居費
4.研修費
5.資格取得費
6.単身赴任者の帰宅旅費
7.勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費など)
たとえば、さきほどの例で出た収入金額が600万円、給与所得控除額が164万円の人が、業務上必要な資格を取得するのに100万円かかったとします。その場合、給与所得控除額の半分である82万円を引いた金額18万円が特定支出控除となります。
結果、所得金額は以下のようになります。
600万円-164万円-18万円=418万円
ただし、今回説明した内容は、令和4年1月現在での計算方法によるものです。
最新の計算方法は、国税庁のHPにてご確認ください。
参照元: 国税庁「No.1415 給与所得者の特定支出控除」
2020年度からの年末調整における変更点とは?
2020年度から年末調整の制度に変更点がありました。
具体的には以下のような点です。
1:給与所得控除の引き下げと要件変更
2020年度からは、それ以前と比較し、給与所得控除額が一律10万円引き下げとなっています。
たとえば、収入が162万円5,000円までの方は、以前は給与所得控除が65万円でしたが、2020年以降は55万円と変わりました。
なた、以前は1,000万円を超える方の給与所得控除額は一律となっていましたが、2020年度からは850万円の世帯から一律金額と上限が変更になりました。
2:基礎控除の引き上げと適用要件の変更
以前基礎控除は一律38万円でしたが、2020年からは最高48万円となりました。
ただし、一律ではなく、所得金額に応じて「16万円から」の設定となっており、2,500万円を超えると基礎控除の対象外となるのです。
参照元:国税庁「No.1199 基礎控除」
3:所得金額調整控除の新設
2020年の改正では「所得金額調整控除」という新しい制度が取り入れられました。
これは、給与所得控除の引き下げに伴い、給与所得が850万円を超える人のなかで大きな影響を受けるとされる子育て世帯や特別障がい者のいる家庭に対し、税負担を軽くするための制度です。また、年金と給与所得の両方がある方についても20万円の課税所得増が発生するため、その調整のための制度でもあります。
4:申請書類の様式変更
改正に伴い、申請書類の様式の一部が変更となりました。
5:各種控除対象者の合計所得金額要件の見直し
扶養親族や源泉控除対象配偶者等の合計所得金額の要件が変更になりました。
新申告書における金額項目はどう記載すればいい?
前項でご案内したとおり、申請書類の様式が変更になっています。
そこで、新申告書では、それぞれの金額項目にどう記載すれば良いかについて解説していきます。
▽ステップ1:氏名・住所の記入
「給与支払者の法人番号」は基本的に企業の担当者が記入するため、記入の必要はありません。
▽ステップ2:「給与所得者の基礎控除申告書」の記入
(1)給与所得には収入金額と所得金額の両方を入れる欄があります。
収入金額→源泉徴収票に記載されている「支払金額」を記入
所得金額→源泉徴収票に記載されている「給与所得控除後の金額」を記入
なお、申告書の裏面の「4.合計所得金額の記載についてのご注意」の(1)に、注意事項と計算式が掲載されていますので、所得金額はそこから割り出すことも可能です。
年間収入が897万円で、所得金額調整控除の適用者のケース例にとります。
(897万円-850万)✕10%=47,000円 ※所得金額調整控除の金額
897万円-195万円-47,000円=697万3000円
収入金額により計算式は異なります。
年収600万円の方は、
600万円÷4=150万円
150万円✕3.2-44万円=436万円
となります。
(2)給与所得以外の所得の合計額には「所得金額」を入れる欄があります。
給与所得意外の所得とは、会社からもらっている給与以外の所得がある方のみ記入します。
副業をしている方や、退職手当をもらった方などが該当します。
具体的には以下のような所得が挙げられます。
・利子所得
・配当所得
・不動産所得
・事業所得
・給与所得
・退職所得
・山林所得
・譲渡所得
・一時所得
・雑所得
副業をしている場合は、その規模、内容にもよりますが雑所得になるケースが多いです。
得ている収入から必要経費を差し引いた所得をこの欄に記入していきます。
国税庁「各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)」の基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
▽ステップ3:「給与所得者の配偶者控除等申告書」の記入
配偶者など、扶養控除が必要な家族がいる場合のみ記載します。
その場合、個人番号の記載も必要となります。
マイナンバーカードや、通知カード、個人番号通知書等が手元になく分からない場合には、住民票の写しや記載事項証明書等で知ることができます。
給与所得に関する、収入金額、所得金額については本人のものと同様に源泉徴収票を参照して記入しましょう。
給与所得以外の所得がある場合も同様です。
▽ステップ4:「所得金額調整控除申告書」の記入
所得金額調整控除は2020年の税制改革にて新設された制度です。
申告者の給与収入額が850万円以上の場合で、以下の条件に当てはまる場合に適用されます。
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〇子ども、特別障がい者である扶養親族などがいる場合で、いずれかに相当する場合。
・本人が特別障がい者に該当する
・年齢23歳未満の扶養親族がいる
・特別障がい者である同一生計配偶者または扶養親族がいる
〇給与所得と公的年金の両方を受給している場合
給与所得控除後の所得金額と公的年金などの雑所得の合計額が10万円を超える
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なお、共働きで、夫婦ともに給与収入額が850万円以上の場合で、双方要件を満たす場合は、夫婦共に控除対象になります。
また、所得金額調整控除の場合は扶養親族の氏名、個人番号等の記入までで、実際の控除額は計算、記入する必要はありません。
参照元:国税庁「No.1411 所得金額調整控除」
※この記事は、2022年1月現在の情報を元に作成されております。最新の情報は、国税庁のHPをご確認ください。