源泉徴収って何?源泉徴収の基礎情報やよくある疑問点について解説します!
目次
パート、アルバイト、派遣社員と働き方は違っても、年末に雇用者から受け取るのが源泉徴収票です。これまで何気なくもらっていた方も、保管場所だけはしっかりと覚えていてください。もしかしたら、その源泉徴収票が必要になることがあるかもしれないです。
源泉徴収票とはいったいどんなもので、どのような役割をはたすのか詳しくみていきましょう。
源泉徴収ってどんなものなの?
源泉徴収票には、1年間働いた証として次のような内容が記載されています。
①支払い金額
給与の全収入金額です。ここに記載されているのは、収入のみの金額で、いっさい何も引かれていません。この額が「年収」になります。
②給与所得控除後の金額
給与所得は、収入金額に応じて給与所得控除があります。ここには、支払金額から給与控除所得を差し引いた額が記載されます。控除額は次のように定められています。
収入金額 |
給与所得控除額 |
180万円以下 |
収入金額×40% 65万円に満たない場合は65万円 |
180万円超~360万円以下 |
収入金額×30%+18万円 |
360万円超~660万円以下 |
収入金額×20%+54万円 |
660万円超~1,000万円以下 |
収入金額×10%+120万円 |
1,000万円超 |
220万円 |
③所得控除の額の合計額
基礎控除、社会保険料控除、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除、寡婦控除、寡夫控除、生命保険料控除、地震保険料控除などの控除額の合計がここに記載されます。
④源泉徴収税額
源泉徴収された税額がここに記載されます。源泉徴収額は次の計算式で算出します。
(給与所得控除後の金額-所得控除の額の合計額)×税率-控除額=源泉徴収税額
たとえば源泉徴収票に記載されていた金額が次のとおりだとします。
①支払い金額:200万円
②給与所得控除後の金額:122万円 (200万円-200万円×30%+18万円)
③所得控除額の合計:50万円
まず課税させる所得金額を算出します。
122万円-50万円=72万円
年収は200万円でしたが、実際に課税される所得金額は72万円となります。国税庁の速算表では、195万円以下の課税所得にかかる税率は、一律5%とされています。このため以下の数式によって算出します。
72万円×5%=36,000円
これにより源泉徴収額は、36,000円になります。この金額が「源泉徴収額」の欄に記載されるのです。
在宅ワークで赤字だったらどうなるの?
それでは、年収200万円あったパートを辞めて、在宅ワークを始めたけど、初期投資が大きくて、初年度は赤字に終わったらどうなるのでしょうか。
こういうときにこそ源泉徴収票が役に立つのです。源泉徴収票を添えて、翌年の3月15日までに確定申告をしましょう。
在宅ワークがパソコンや周辺機器の購入で20万円の赤字になったとします。この場合それぞれの額が次のように変わります。
①支払い金額:180万円 (200万円-20万円)
②給与所得控除後の金額:108万円 (180万円-180万円×40%)
③所得控除額の合計:50万円
108万円-50万円=58万円
課税所得が58万円ですから、一律5%の所得税が課せられます。
58万円×5%=2万9千円
これにより、既に源泉徴収された3万6千円の中から、2万9千円との差額である7千円が還付されてくることになります。
どんなときに源泉徴収票が必要なの?
源泉徴収票が必要になるのは、次のような場合です。
①確定申告をするとき
源泉徴収票が最も必要になるのは、確定申告をする場合です。パートの仕事以外に、在宅ワークをしているのであれば、確定申告が必要です。その際の添付書類として源泉徴収票が必要になります。
②子どもが保育園に通っているとき
保育所の保育料は、夫婦の年収を基本にして決められます。このため入園してから毎年源泉徴収票の提出が義務付けられています。副業などで確定申告をした場合は、市役所で交付してもらった納税証明書を添付します。
③住宅ローンを組むとき
住宅ローンの融資枠の審査では、年収が大きなポイントになりますから、源泉徴収票の提出を求められます。金融機関によっては、プリンターから打ち出したものではなく、朱印が押された源泉徴収票を求められることがあります。
④扶養家族に入れるとき
配偶者を扶養家族に入れようとすれば、会社から配偶者の源泉徴収票の提出を求められます。源泉徴収票により、扶養家族の要件を満たしていることの確認をします。
⑤転職をしたとき
退職した年と同じ年に別の会社に就職したときは、以前勤めていた会社の源泉徴収票の提出を求められます。前の会社で源泉徴収をされていた額を換算して年末調整をします
⑥賃貸マンションの保証人になるとき
賃貸マンションを借りる人の保証人になる際に、不動産会社によっては、年収の記入と源泉徴収票の提出を求められることがあります。
源泉徴収の対象はどれ?
会社や個人が人を雇った場合、「源泉徴収義務者」として、給与の支払や業務委託の報酬の支払の中から支払金額に応じた所得税を差し引く義務が課せられています。
このためパートやアルバイトとして働くと、給料から所得税、社会保険料、住民税が差し引かれたものを受け取ることになります。毎月の給与で差し引くのは、暫定金額なので、年末調整によって、引きすぎた分が還付されたり、不足の場合は反対に次の給与から差し引かれたりします。
同様に個人事業主であるライターやデザイナーが取引先から原稿料の報酬を受け取る際にも、源泉徴収義務者である会社から、所得税を差し引かれた金額を受け取ることになります。
この他にも、役所が委嘱する委員会の委員として出席した際の報酬も源泉徴収の対象になります。また企業が広告のために公募を行った際の賞金についても所得税が源泉徴収された金額を受け取ることになります。
源泉徴収の注意事項!
フリーランスのライターとして報酬を受け取る際、支払金額によって源泉徴収金額の計算方法が異なるので注意が必要です。
計算方法は次のとおりです。現在は所得税の他に復興特別所得税0.21%(0.42%)も含まれています。
・支払金額が100万円以下……支払金額×21%
・支払金額が100万円超……(支払金額-100万円)×42%+10万2千百円
また消費税の扱いがどうなっているのかのチェックも必要です。
源泉徴収は消費税を含めた金額を対象にして計算をするのが原則です。しかし請求書内で報酬金額と消費税が区分されている場合は、報酬金額のみを源泉徴収の対象とすることができるのです。
報酬の請求をする際は、消費税の対応を含め、源泉徴収額をきちんと記載して請求をした方が後々のトラブルを回避することができます。
なお個人事業主においては、その年の収支が赤字だった場合、確定申告をすることで、源泉徴収された税金が還付されることになります。反対に源泉徴収をしない取引先があった場合、確定申告の内容によっては、その取引の税金を納める必要が生じることがあります。
源泉徴収票を失くしたときはどうすればいいの?
とても大事な源泉徴収票ですが、提出が必要になった際に紛失をしていたらどうすればいいのでしょうか。
源泉徴収票を失くしたら、あまり思い悩むことなく会社に再発行してもらうのがベストです。源泉徴収票は確定申告以外の用件でも必要な場合があり、給与担当者にとっては、日常の業務のひとつです。会社内に対応マニュアルもあるはずなので、スムーズに交付してもらえます。
たとえ退職をした会社であっても、あまり気にすることなく電話で再発行を依頼しましょう。会社に立ち寄って直接受け取るのが基本ですが、割り切った会社であれば郵送してくれるかもしれません。
しかし中には、いくら依頼しても源泉徴収票を発行してくれない会社があります。所得税法では、源泉徴収票の発行を拒むことはできないとされているのですが、会社と争っても仕方ありません。
その場合は「源泉徴収票不交付の届出書」を作成して税務署に提出すればいいのです。
この書式の中には、収入金額を記載する欄があります。そこに給与明細や記憶を頼りに可能な限り正確な金額を記載しましょう。
税務署の方からも、その会社に対して源泉徴収票を発行するよう勧告してくれます。
それでは退職した会社が倒産してしまった場合はどうすればいいのでしょうか。倒産をした会社であっても、破産管財人が事後処理をしているのであれば、源泉徴収票を発行してもらえることがあります。
しかし会社関係者が所在不明で、何の実態も残っていない会社であれば、さすがに源泉徴収票を発行してもらうことは無理です。この場合は、給与明細などで代替が可能か税務署と相談の上で確定申告をすることになります。
確定申告をした後で源泉徴収票を失くしたのであれば、市役所で交付してもらえる市県民税課税証明書が、源泉徴収票と同じ役割を果たしてくれます。
確定申告以外で源泉徴収票が必要になった際に、市県民税課税証明書で代用がきくのか確認をしましょう。
源泉徴収票は大事に保管しておきましょう
ここまで、源泉徴収票ってどんなものなのか、そして何に使うのかについて説明をしてきましたが、いかがでしたでしょうか。源泉徴収票は1年間働いたことに対する証です。前年の収入額を証明しなくてはいけない場面は、いろいろな状況でありますから、紛失しないように大事に保管しておきましょう。
過去の源泉徴収票も保管しておくと、収入の変化が目に見えるので、今後の生活レヘルの予測に役立ちます。