フリーランス・個人事業主の節税とは?経費や税金対策の方法をご紹介
フリーランスはどうすれば節税できる?
2018年日本の労働法の一部が改正され、「副業」することが認められる時代になりました。
副業元年とも言われた昨年から、サラリーマンを辞めてフリーランスに転向する方も増えています。
フリーランスの場合は、基本的には、2つの確定申告の方法があります。
一つは、帳簿付けのいらない「白色申告」、そしてもう一つは、複式簿記による帳簿の提出が義務付けられている「青色申告」です。
この他、フリーランスの内容が、FX投資やアフィリエイトブログの運営の場合は、所得によっては雑所得で確定申告を行うという方法もあります。
今回は、フリーランスが節税するためには、一体どんなことを行えばよいのか?経費、確定申告、そして各種控除など、知っておきたい節税のための知識を3選紹介します。
フリーランスが納めるべき税金は4種類
節税のために、まずは、どんな税金を納めなければならないのか?というところから勉強していきましょう。
フリーランスが納めなければならない税金は主に4つあります。
所得税
住民税
個人事業税
消費税
それでは、順に解説していきましょう。
1.所得税
所得税は、売上から経費や控除などを差し引いて得られる「最終的な利益」に対してかけられる税金のことです。
所得=(売上ー経費ー各種控除)
所得税=所得 x 税率%(収入額で変動)
確定申告では、「所得」を確定させそれに応じて納税額を算出することになります。
ここでかけられる税率は、所得が高くなればなるほど、税率も上がるという仕組みになっています。そのため、所得ができるだけ少ない方が節税になるということが分かります。
2.住民税
住民税とは、都道府県や市区町村に対して納める税金のことで、学校や市立図書館、公民館など住民が利用する行政サービスの必要経費をその地域の人が負担するというものです。
個人が納める都民税と区市町村民税をあわせて「個人住民税」といい、前年度の所得を元に算出されます。
所得が多かった年の翌年は住民税も増えるので、フリーランスの場合は、この辺についても注意が必要です。
住民税を確定するための所得も、確定申告の所得金額を連動させます。つまり、確定申告での所得が少なければ、その分住民税も節税できるという仕組みです。
3.個人事業税
個人事業税は、年間の事業所得が年間290万円を越えた場合に、フリーランスの方に課税される税金です。
個人事業税はの納付先は、各都道府県で地方税の一種です。
所得税→国
個人事業税→地方自治体
のように納付先が違っています。
個人事業税が課税される業種はあらかじめ決められており、業種によっても税率が違います。詳細については、各都道府県の窓口で確認してください。
4.消費税
消費税は、2019年10月から10%に値上がりして、いろいろと話題になっているので、皆さんご存じの通りです。
私たちが何かものを購入したときに、本体価格とは別に納付しなければならないのが、消費税です。
フリーランスを含めた個人事業主や法人は、顧客から集めた消費税を国に納付しなければなりません。
消費税納税の義務がある事業者は、原則として2年前の課税売上高が1,000万円以上の法人、及び個人事業主となっています。
1000万円以下の場合は消費税の申告・納税が免除されているので安心してください。
フリーランスが節税のためにできること3選
続いて、フリーランスや個人事業主の方が、節税するためにできることを具体例を挙げつつ、紹介していきます。
まず、フリーランスの税金のうち一番多くの方に当てはまるのが、所得税と住民税でした。節税するためには、この2つの税金をできるだけ抑えるということがポイントになります。
先述の通りフリーランスの所得税は、以下の数式で確定します。
A. 所得=(売上ー経費ー各種控除)
B. 所得税=所得 x 税率%(収入額で変動)
A.の数式を見ると分かりますが、「経費」と「各種控除」をしっかりと売上から引くことで、課税対象となる「所得」をできるだけ少なくするということが、節税対策につながります。
経費には、どんなものが含まれるのか?また、各種控除にはどんな種類があるのか?この2点をしっかりと理解し、正しく計上することでかなりの節税効果が期待できます。
<経費を計上する>
まずは、節税対策の柱となる経費について見ていきましょう。
経費に含まれるものには、以下のようなものがあります。
・事務用品
・オフィスの家賃
・オフィスの光熱費
・家族への給与(青色事業専従者給与)
・交通費
などです。
経費はその種類によって分類しておく必要があります。事業収益を記録する帳簿は、青色申告の場合は複式簿記による帳簿となりますが、この際に記入する分類項目のことを「勘定科目」と言います。
どの勘定科目に入るのか、最初は分からない方がほとんどですが、最近では、クラウドソフトなどを利用すれば、簡単に帳簿付けもできるようになっているのでおすすめです。
経費とみなされるかどうかは、事業との関わり具合で判断されます。少しでも事業に関連した場合は、経費として計上できますので、必ず領収書やレシートを残しておきましょう。
経費の勘定科目と主な例を以下に挙げます。
・消耗品費
・事務用品費: 文房具や10万円以下のソフトウェアを購入した
・新聞図書費: 事業に関係のある書籍や雑誌、新聞を購入した
・通信費: 携帯電話、インターネット代、クラウドの会計ソフトやデザインソフト、郵便など 会計ソフトやAdobe関連のクラウドソフトも通信費に分類される
・会議費 : カフェで打ち合わせをした
・雑費 : カフェで仕事をした
・交通費 : 仕事に関する移動に使用した交通費
・広告宣伝費: 事業に関する広告を掲載した
・外注費: 人材派遣料を支払った
・交際費: 仕事に関わる人たちと食事をした
自宅を利用してフリーランス活動をされている場合は、仕事で使用している面積分のみ、光熱費や家賃を計上することが可能です。
税務用語では、家事按分(かじあんぶん)といいますが、これについては、きちんと証明できるような書類(電気代などの支払い明細等と宅地面積などを証明する書類)等が必要です。
<各種控除を確認する>
売上から経費を差し引いた金額は「事業所得」と言い、ここからさらに所得控除を差し引いたものが所得金額となります。
各種控除を差し引くことで、所得を少なくすることができますので、こちらも重要です。
所得控除は全部で14種類あり、代表的なものを挙げると「基礎控除」や「配偶者控除」などがあります。
控除は種類も多く、内容も多岐に渡りますので、次の項目で詳しく解説します。
■控除の種類は全部で14種類
所得税の控除として認められている項目には、全部で14種類あります。控除の種類ごとに大別すると
所得控除
青色申告特別控除
専従者控除
保険系の控除
寄付系の控除
のようにざっくりと分けることができます。
それぞれの控除の特色について、一つずつ見ていきましょう。
<所得控除>
所得控除は、条件を満たして入ればどなたでも受けられる基本的な控除の一つです。配偶者控除、扶養控除などがこれに当たります。
1.配偶者控除
配偶者控除は、一定の条件を満たした配偶者がいる場合に、38万円を所得から差し引くことができます。配偶者が働いていない場合は無条件で38万円を所得から差し引いてもらえます。
もし、配偶者が働いている場合は、年間の合計所得金額が38万円以下、あるいは、給与のみの場合は103万円以下の場合にのみ、配偶者控除が受けられると定められています。
そのため、主婦のパートアルバイトでは、この103万円を越えないように働く方も多いようです。
2.扶養控除
配偶者以外の親族で一定の条件を満たしている場合は、扶養親族として、38万円~(最大58万円)の控除を受けられます。扶養家族として認められるのは、3親等内の親族で同居している、もしくは別居でも扶養可能な親族であることなどが挙げられます。
<青色申告特別控除>
確定申告には、白色申告と青色申告の2つの申告方法があり、白色申告では特別控除が無いのに対し、青色申告では最大65万円までの「青色申告控除」が受けられます。
青色申告は白色申告と違って複式簿記帳簿による帳簿の提出などが義務付けられています。また、白色申告の場合は、簡易簿記で済ませることができますので、経理処理が楽というのが違いです。
事業初年度はそれほど売上がないという場合は、白色申告でもかまいませんが、売上が伸びていくと、最大65万円まで控除していただける青色申告の方がメリットが大きく、節税効果が高いと言えるでしょう。
<専従者控除>
専従者控除は、フリーランスや個人事業主の方が、配偶者や親族に対して払った給与を控除できるというシステムのことです。
例えば、事務処理や書類作成、経理補助など、事業者の配偶者や親族が仕事を手伝った場合に払った給与は、そのまま控除が受けられるのです。
専従者控除については、白色申告と青色申告で控除の条件に違いがあります。白色申告では、事前の届け出も必要なく、条件に応じて給与額に上限が決まっています。
青色では、控除ではなく経費として計上することになります。条件はありますが、給与額の上限がなく、節税効果が高い項目と言えるでしょう。
もし、専従者控除を受けると配偶者控除が受けられなくなりますので、どちらを利用する方が結果的に節税になるのか、よく考えた上で控除を受けましょう。
<保険系の控除>
続いて、保険系の控除について見ていきましょう。保険系の控除には「小規模企業共済」や「経営セーフティ共済」と言ったフリーランス(個人事業主)だけが利用できる上に、所得控除の対象となっている商品があります。
1.小規模企業共済
小規模企業共済は、フリーランスの方が毎月積み立てる退職金のようなもので、個人事業主が加入できる共済制度です。
小規模企業共済は、毎月1000円~7万円までの間で自由に掛金を設定できます。掛金の全額が控除対象となりますので、節税効果が十分見込めます。
個人事業主やフリーランスは、サラリーマンに比べて年金が二階建て構造になっていないため、老後の生活資金が心配という方も非常に多いです。
掛金は、後で変更することも可能ですので、事業をやめた後の退職金のつもりで、できるだけ積み立てておくのが良さそうです。
2.経営セーフティ共済
経営セーフティ共済とは、取引先の倒産による連鎖倒産や資金不足による倒産など、予期せぬ自体から個人事業主を守るための保険です。
取引先の倒産により売掛金債権が回収困難となった場合など、経営資金の貸付といった救済措置が受けられる制度です。
掛金は月額5000円~20万円までとなっており、総額800万円まで積立可能です。資金繰りが悪くなった際の保険という位置づけですが、フリーランスにとっては、税制上の優遇が大きな魅力となっています。掛け金は月額で5000円から20万円まで、総額で800万円まで積み立てることができます。
個人事業主であれば、この掛金を経費として計上できるため、節税効果が非常に高いのです。
また、積立期間が40カ月(3年4カ月)を越えていれば、解約時に掛金を100%払い戻ししてもらえるというのが特徴です。仮に5000円ずつの掛金を支払っていた場合は、1年間の節税額は6万円。また3年4カ月で解約した場合は20万円の掛金を払い戻ししてもらえます。
税金として納めるより、将来のために積み立てておく方が得策と考えるフリーランスの方が多いようです。
<国民年金基金>
国民年金基金も、所得から差し引くことができます。社会保険控除の対象となっています。フリーランスや個人事業主の場合は、公的年金への加入が義務付けられています。
国民年金基金の掛け金は、上限が6万8000円となっています。少ない額に設定することも可能で、掛金は自分で選択できるようになっているのが特徴です。
<確定拠出年金>(401K)
国民年金基金だけでは、老後資金が心配というフリーランスの方には、確定拠出型年金を利用する方もいます。
この確定拠出型年金も社会保険控除の対象となっており、所得から差し引くことができます。
国民年金基金と確定拠出型年金は、合計で6万8000円と上限が定められており、いずれか一方を払うか、両方払うかも選択できます。
<寄付系の控除>
最後に寄付系の控除について見ていきましょう。寄付系の控除として所得から差し引くことができるものには「ふるさと納税」があります。
ふるさと納税は、地方自治体に税金を納める制度のことで、実質的に「寄付金」という扱いになります。ふるさと納税を行うと、その土地の特産品や名産品を代わりに受け取れる仕組みになっていることから、近年人気が高まっています。
ふるさと納税の控除は、住民税の20%ほどとなっています。仮に年間10万円の住民税を納めている方なら、ふるさと納税で控除できる目安は2万円となります。また、自己負担金2000円がここから差し引かれますので、実際の控除額は1万8000円ということです。
節税効果はそれほど大きくありませんが、災害のあった被災地への支援や、自分の出身地(故郷)を応援するなど、ふるさと納税を行うことでさまざまな貢献ができるというのがメリットです。
また、特産品も豪華なものがいろいろとあり、地方自治体によっては、それを目当てにたくさんのふるさと納税を集めることに成功しているケースもあるようです。
フリーランスの経費や控除を差し引いて節税に取り組もう!
フリーランスの節税対策について解説しました。
フリーランスが節税するためには、経費になるものをきちんと計上すること、そして各種控除に当てはまるものがないかを確認すること、さらに青色申告で確定申告を行うことという3つの対策方法がありました。
また、フリーランスだからこそ加入できる魅力的な保険商品もいくつかありましたので、こういった制度をうまく活用して、節税することが重要です。
青色申告を行うためには、複式簿記の帳簿付けの他、貸借対照表や損益決算書の提出も必要となります。経理処理がなかなか大変ではありますが、クラウドソフトなどを利用すれば、初心者でも簡単に記入できます。
今回ご紹介した対策を参考にしながら、できることから節税対策に取り組んでみてください。