失業手当はいくらもらえる?金額や受給条件・申請方法について解説
失業手当を受け取るための条件とは?
「仕事を辞めたら失業手当がもらえるはず」と漠然と考えている方が多いと思います。
しかし、実際に失業手当を受け取るためには、ある一定の条件をクリアしている必要があるのです。
そもそも失業手当とは、「十分に働ける状態にあり、かつ、仕事に就く意思があるにも関わらず、職業に就けない状況である場合、支払われるお金のことです。
お金がないことで生活が困難になり、就職活動もままならず、結果、きちんとした仕事に就けないという事態を避けるためです。
つまり、結婚、子育てのために仕事を辞めた場合はこの条件に見合ってないため、当然、失業手当の対象とはなりません。また、同様に、ケガや病気などで仕事ができなくなった場合も、「十分働ける状態にない」と判断されることから、失業手当の対象になりません。
また、そもそも、パートなどで雇用保険に入っていなかった方も対象外となります。
なぜなら、失業手当は、失業保険による手当であり、失業保険料を納めていた方が対象となるため、パートなどで雇用保険に加入していなかった方はもらえないということになるのです。
ただし、パートでも働く条件や勤務する企業の規模によっては雇用保険に加入が可能なので、自分が雇用保険に入っているかどうかは給料明細などで確認をすると良いでしょう。
ちなみに、失業手当を受け取るには、雇用保険に加入しているだけでなく一定の条件をクリアしている必要があります。
また、会社を辞めた理由が自己都合なのか会社都合なのかも関係してくるので、詳しく説明していきます。
【一般的なケース】
「もっと給料が良いところに行きたい」「土日休みの会社に転職したい」などといった完全な自己都合での退職の場合です。
▷失業保険が受け取れる条件
離職する前の2年間において、雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上あること
つまり、就職して雇用保険には加入していたものの、1年未満で辞めてしまった場合は失業手当は受け取れないということになります。
【特定理由離職者であるケース】
自己都合で辞めた場合でも、以下のようなケースは「特定理由離職者」と認定されます。
・家族の介護等、家庭事情により急な離職が必要となった場合
・出産・育児による離職し、受給期間の延長を受けた場合
・期間に定めのある労働契約の更新を希望したものの、認められなかった場合
・企業のリストラなどによる希望退職者募集に応じた場合
・特定の事由で通勤が困難になり離職した場合
・配偶者などと別居生活をしていたが、一緒に生活することが必要となり離職に至った場合
▷失業保険が受け取れる条件
離職する前の1年間において、雇用保険の被保険者期間が通算6ヶ月以上あること
【特定受給資格者であるケース】
企業の倒産や解雇などによる離職、つまり会社都合の場合、「特定受給資格者」と認定されます。
▷失業保険が受け取れる条件
離職する前の1年間において、雇用保険の被保険者期間が通算6ヶ月以上あること
失業手当の受け取り可能期間とは?
⚫いつから受け取りできるの?
失業手当の対象となった場合の、実際に受け取りが開始される時期について説明をしていきます。
まず、「失業保険は、離職後すぐにもらえるわけではない」ということを知っておきましょう。
ハローワークへの手続きにより受給資格が決定されたとしても、その日から7日間は「待機期間」扱いとなるためです。
これは、自己都合で退職した人だけにとどまらず、会社都合で離職した方も対象となります。
そのあとは、離職理由により支給開始日が異なります。
・自己都合の「一般の離職者」⇒7日間の待期期間+2,3ヶ月の給付制限の後
・自己都合ではあるものの正当な理由がある「特定理由離職者」⇒7日間の待機期間後
・会社都合で離職した「特定受給資格者」⇒7日間の待機期間後
会社都合での離職者や特定の理由がある方は1週間程度で支給開始となりますが、実際に振込みがされるのは、申請から1ヶ月ほどかかります。
したがって離職するような事態になる前に、1ヶ月程度は収入がなくても生活ができるような状況に整えていくことが望ましいと言えるでしょう。
⚫どれくらいの期間もらえるの?(所定給付日数について)
失業手当をもらえる期間は、離職の理由によって変わるほか、どれくらい雇用保険に加入していたかという被保険者期間によっても変わります。
・自己都合の場合:
・「特定理由離職者」または「特定受給資格者」の場合:
参考URL:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
失業手当で受け取れる金額は?計算方法・シミュレーション
失業手当ではどれくらいの金額をもらえるのか、その計算方法をお伝えするとともに、シミュレーションをしてみたいと思います。
⚫計算方法
計算式は以下のとおりです。
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失業手当の受給額 = 給付日数 ✕ 基本手当日額
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<基本手当日額とは>
1日あたりの失業手当給付額のことです。
これは、その離職者の賃金によって変わります。
計算方法は以下のとおりです。
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基本手当日額 = 賃金日額(退職前6カ月の賃金合計÷180) ✕ 給付率
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<賃金日額とは>
賃金日額とは、簡単に言うと「辞める直前の1日あたり賃金」のことです。
具体的には、離職する直前6カ月の賃金合計を180で割った数字となります。
なお、この賃金日額には上限額と下限額が設定されていて、厚生労働省が行っている「毎月勤労統計」の「平均定期給与額」の増減により見直しがなされています。
ちなみに2022年9月現在の上限額、下限額は以下のとおりです。
【基本手当日額の上限額】
※()内の数字は、前年度からの増減額
※出典:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります」より作成
【基本手当日額の下限額】
※()内の数字は、前年度からの増減額
※出典:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります」より作成
ちなみに近々では、令和3年8月1日に変更が行われ、表でご紹介したとおり上限額が75~90円程度、下限は64円増額されています。
<給付率とは>
賃金日額で割り出される失業手当に対し、年齢ごとに定められた割合です。
給付率は50~80%(60歳~64歳については45~80%)であり、賃金の低い方ほど給付率が高くなるという特徴があります。
【基本手当日額の年齢別目安】
※引用:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります」から作成
*1:離職時の年齢が65歳以上の方が高年齢求職者給付金を受給する場合も、この表を適用します。
*2:y=0.8w-0.3{(w-5,010)/7,320}w を基に算出
*3:y=0.8w-0.35{(w-5,010)/6,080}w,y=0.05w+4,436 のいずれか低い方の額
⚫シミュレーション
以下のケースで実際に計算してみましょう。
<case>——————————————————————————————-
・年齢:27歳 ・月給:24万円 ・5年間勤務 ・離職の理由:会社都合
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・賃金日額 = 30万円 ✕ 6ヶ月 ÷ 180日 = 10,000円
・基本手当日額 = 10,000円 ✕ 給付率(80~50%) = 5,971円
・受給額 = 5,971円 ✕ 120日(給付日数) = 716,520円
こちらのケースの場合、716,520円受け取れる計算となります。
なお、これが、会社都合ではなく自己都合の場合、給付日数が90日になるので、以下のようになります。
・受給額 = 5,971円 ✕ 90日(給付日数) = 537,390円
つまり、会社都合かそうでないかで、18万円弱の差が生まれることになります。
失業手当の手続きの流れ・必要書類は?
失業手当をもらうための手続きの流れや必要書類について説明していきます。
▷ステップ1:書類の準備をしよう
失業手当をもらうためには、以下の書類を準備します。
・雇用保険被保険者離職票-1
・雇用保険被保険者離職票-2
・マイナンバーカード
※マイナンバーカードがない場合は通知カード、または個人番号の記載がある住民票
・身元確認書類 (1)もしくは (2)(コピーは不可)
- 運転免許証、運転経歴証明書、官公庁が発行した写真付きの身分証明書か資格証明書
- 公的医療保険の被保険者証、年金手帳、住民票記載事項証明書、公共料金の領収書などから、種類の異なるもの2点
・本人の印鑑(認印は可 スタンプ印不可)
・写真2枚(最近の写真、正面上半身、タテ3.0cm×ヨコ2.5cm)
※1枚は離職票-2の貼り、もう1枚は持参する
・本人名義の預金通帳またはキャッシュカード(※一部取り扱いができない銀行もあり)
参考URL:ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」
▷ステップ2:ハローワークへ行こう
ハローワークにて以下の手続きを行います。
・求職申込み
・必要書類の提出(離職票など)
・雇用保険説明会の日時決定
「え?求職の申込みが必要なの?」と疑問に思う方が多いですが、あくまで仕事に就く意思があるのに就くことができないということが条件にあるため、ハローワークでの求職手続きが必要となります。
また、雇用保険についても理解をするため、説明会の参加も求められます。
▷ステップ3:雇用保険説明会に参加する
指定された日に説明会に参加します。
今回記事でご案内したような失業手当をもらうための条件や手続きについて説明してくれます。
不正受給に対する注意点なども含め、およそ1,5時間~2時間程度の説明会です。
服装などの注意点は特になく、スーツなどを着ていく必要はありません。
ただし、疑問点があとで生まれないよう、メモ帳や筆記具などを用意することをおすすめします。
⇒失業認定日が決定されます。
▷ステップ4:失業認定のためにハローワークへ出向く
失業認定日を知らされたら、ハローワークに出向きます。
そして、失業認定申告書を提出すれば失業の認定を受けることができます。
ただし、失業認定を受けるには、月2回以上の求職活動をしていることが必要となります。
失業認定申告書に実績を記載しましょう。
▷ステップ5:失業手当の受給する
失業認定がされたら、認定日から5営業日後に指定口座に振り込まれます。
【注意】失業手当を継続してもらうには、認定日(4週間に1回)ごとに、失業認定を受ける必要があります。
失業手当中にアルバイトは可能?
失業認定をしきちんと手続きを踏んだとしても、手当がもらえるのは先になります。また、働いているときと同じ金額をもらえるわけではないので、当然、生活は苦しくなります。
その間アルバイトをしたいと考える方は少なくないでしょう。
しかし、失業手当中のアルバイトについてはさまざまな条件があります。
しっかりと理解して、「こんなはずじゃなかった!」にならないようにしましょう。
▷待機期間中はアルバイトを控えよう
ハローワークで失業申請をした後、7日間の待機期間中がありますが、このときアルバイトは控えるようにしましょう。この期間中にアルバイトをすると、それだけ認定が伸びてしまいます。
1回目の失業認定がなされた後に開始しましょう。
▷1日4時間以上アルバイトをしよう
失業認定がなされた後、アルバイトをするときは、1日4時間以上にしましょう。
4時間未満の場合、「内職または手伝い」と判断され、失業手当が減額されてしまいます。
ただし、ここで注意したいのは、4時間以上働いた日は支払いの対象になりません。
▷1週間あたり20時間未満に抑える
1週間あたり20時間以上の労働をすると、就職したと見なされ失業保険の支払い対象から外されてしまいます。シフトでアルバイトに入る場合は、20時間以内に調整してもらえるようなところを選びましょう。
▷収入の合計額に注意する
アルバイトによる収入が、1日の基本手当(前職における1日あたりの給料)の8割を超えた場合、支給対象外になってしまうので注意しましょう。
▷ハローワークに申告をする
はじめて失業認定がなされた後アルバイトを始めることが可能ですが、その後も、4週間に1度、失業認定が行われます。その際に働いた日数や収入をきちんと申告することが重要です。
もし、1週間以上働いていたの偽ったり、収入金額を誤って報告すると、不正受給として失業手当の3倍もの金額を返納することとなります。
失業手当受給中の健康保険や年金の支払いはどうなる?
毎月給料をもらっているときは天引されていることもあり、健康保険や年金保険についてあまり意識をしていない方が多いでしょう。
しかし、失業中となると話は別です。前職の給料に対し満額もらえるわけではないので、支払うとなるとかなり生活を圧迫することになります。
失業手当受給中、健康保険や年金保険の支払いがどうなるか、どうすべきか説明していきます。
▷健康保険は3つの選択肢がある
1)国民健康保険に入る
会社で加入していた健康保険を脱退し、市町村が運営している健康保険に入る方法です。
金額は市町村によって変わるので、各自治体に確認をしましょう。
2)任意継続保険
会社で加入していた健康保険を、退職後も継続して加入するという選択肢もあります。
ただし、雇用されていたときには保険料を会社が半分負担してくれているので、退職後は全額負担となります。
とはいえ、月収によっては、1)の市町村の健康保険より安くなる場合があります。
ちなみに、前職で2ヶ月以上加入していたことが条件で、継続も最長2年間となります。
3)配偶者の扶養家族になる
健康保険に加入している配偶者がいる場合、扶養家族になるという選択肢もあります。
ただし、扶養家族になる場合収入額に上限がありますので、失業手当の受給額が超えていないことが前提となります。
▷特定受給資格者は減免措置も
ただし、倒産や解雇、雇い止めなどの会社都合による失業で、特定受給資格者に認定されている場合、国民健康保険料を減免してもらえる可能性があります。
あくまでも減免であり、支払いを免除してもらえるわけではないですが、前年の給与所得をその30/100とみなして算定されます。
軽減期間は離職の翌日から翌年度末までの期間です。市町村によって軽減額が異なりますので、お住まいの市町村に確認しましょう。
なお、住民税の減免制度を設けている自治体もありますので、併せて確認することをおすすめします。
参考URL:厚生労働省「平成22(2010)年4月から国民健康保険料(対象者は?税)が軽減されます。」
▷国民年金には減免措置と納付猶予制度がある
国民年金保険は、特定受給資格者に認定された場合に限りますが、保険料が減免されたり、納付に猶予をもらえたりすることがあります。制度を利用できるのは20歳~50歳未満に限られますが、1/4~3/4、または全額が免除されることもあります。
ただし、免除を受けた場合は、全額を納付したときと比較して年金額も低額になります。
納付猶予の場合、その期間については受給資格期間としてカウントしてもらえるものの、減免されたと同様、受けとる年金が減額されることに注意が必要です。
あくまで、失業して支払いが困難になった方のための措置であり、適用者が得するといったものではないということです。
なお、支払いが困難で納付猶予が認められた場合でも、追納することにより満額納付扱いとすうことも可能です。仕事に就いて支払いができるようになったら、追納制度を利用しましょう。ただし追納期間は過去10年以内のものに限られます。
参考URL:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
雇用保険に加入していたのに失業手当を受け取れないケースとは
雇用保険に加入していたのに、失業手当を受け取れないケースには以下のようなものがあります。
▶ケース1:雇用保険の加入期間が規定の条件を満たしていない
上述したとおり、失業手当をもらうには、雇用保険の加入期間に条件があります。
退職の理由によって変わるので注意しましょう。
▶ケース2:失業認定を受けていない
失業手当を受けるには所定の手続きが必要です。きちんとした段取りを踏まないと失業認定がなされず、失業手当を受け取ることはできません。
▶ケース3:副業やアルバイトをしている
待機期間中にアルバイトをしていると失業認定が伸びたり、1週間あたり20時間以上働いてしまうと支払い対象となりません。副業や在宅ワークも同様です。たとえ本業が失業していたとしても、副業をした日はハローワークへの申請を行うようにしましょう。
▶ケース4:個人事業主やフリーランスなど、自営業に転身した場合
会社をやめ、独立したり、自営業に転身した場合、失業手当は受給できません。
失業状態であるとは言えないためです。
しかし、個人事業主やフリーランスになるための準備を行うのであれば問題ありません。
失業してしまった場合、次の仕事として、自分のペースでできる個人事業主やフリーランス、在宅ワークを探してみることもおすすめです。