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フリーランス新法をわかりやすく解説!ガイドラインや罰則について

「フリーランス新法」という言葉を耳にしたことはありますか?

フリーランスが取引先との関係で、報酬の不払いやハラスメントなど様々な問題やトラブルを経験していることが明らかになっています。

こういったことからフリーランスの人たちの権利を守るために作られたのが、フリーランス新法です。

この法律では発注事業者に対する義務や罰則を定めているので、わたしたちフリーランス側も法律に詳しくなっておくと心強いです。

また、他のフリーランスに業務委託する場合は、フリーランス自身が事業者となるので、当事者になるかもしれないという意識をもってこの法律を理解していきましょう!

目次

いつから始まるの?政策の目的(ガイドライン)とは

フリーランス新法の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といい、2024111日から施行されます。

令和6531日に出された、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」(解釈ガイドライン)の「はじめに」には、

 

“特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律は、我が国における働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備するため、特定受託事業者に業務委託をする事業者について、特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示を義務付ける等の措置を講ずることにより、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的として制定されたものである。”

 

と、政府の方針が記されています。ざっくり言うと、

「労働基準法に当てはまらないフリーランスは、事業者と比べ弱い立場になることがあるため、事業者に義務や罰則を設け、フリーランスが安心して仕事ができる環境を整えます」ということです。

上記の解釈ガイドラインには聞き慣れない言葉も多々含まれていたと思いますので、解説しながらフリーランス新法の内容を見ていきましょう!

 

対象者は?そもそもフリーランスとは?

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」(以下本文ではフリーランス新法)の対象者は、

フリーランス:「特定受託事業者」

発注事業者 :「特定業務委託事業者」または「業務委託事業者」

なのですが、それぞれどのような人が当てはまるのでしょうか?

 

【フリーランス】

フリーランスはこの法律では「特定受託事業者」と定義されています。

・個人であって、従業員を使用しないもの
・法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの

★業務委託を受ける側(受注側)であり、個人事業主や、法人であっても従業員を雇用していない、いわゆる「一人社長」などが対象です。

【発注事業者】

2種類に分けられます。どちらも業務委託を発注する発注事業者です。
まずは「特定業務委託事業者」と定義されるものです。

・個人であって、従業員を使用するもの
・法人であって、役員がいる、または従業員を使用するもの

上記のいずれかに当てはまるものとされています。

次に「業務委託事業者」と定義されるもの。

・フリーランスに業務委託をする事業者

★従業員を雇用していなくても、フリーランスに業務委託をする人は発注事業者となります。つまり、フリーランスの人も、業務委託を行うことで発注事業者になりえます。

フリーランスも発注事業者になりえるというところがこの項目の一番のポイントです。

「自分も発注事業者になるかもしれない」と念頭におき、この記事を読んでください!

私って本当にフリーランス?

「フリーランス」の定義について述べてきましたが、形式的には業務委託契約を締結していても、実質的に労働基準法上の労働者と判断される場合があります。その場合、フリーランス新法は適用されず、労働基準法が適用されることになります。

業務委託契約は原則として、

・依頼を拒否する自由がある
・業務遂行上の指揮命令がない
(業務の遂行方法は本人に任せて、細かい指示や契約にない指示をしない)
・時間や場所などの拘束性がない(少ない)
(勤務場所や勤務時間の指定は必要最小限)


などが挙げられます。

業務委託で仕事をしているけど、労働者に当てはまるのでは……と心配になったら、仕事先の事業所を管轄する労働基準監督署などに相談してみると良いでしょう。

 

対象となる取引、そもそも業務委託とは?

対処となる取引は、事業者からフリーランスへの委託、つまり「B to B」(フリーランスからフリーランスへの業務委託も対象)です。

フリーランスが消費者や事業者に売買をする場合は、この法律の対象外です。

そもそも「業務委託とは何か?」フリーランス新法の条文(第二条)より引用すると、

”この法律において「業務委託」とは、次に掲げる行為をいう。
一 事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造(加工を含む。)又は情報成果物の作成を委託すること。
二 事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託すること(他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。)。”

ということですが、業務委託の代表的なものとして、

・物品の製造・加工(内職など)
・情報成果物の作成(ソフトウェア、映像コンテンツ、デザインの作成など)
・役務の提供委託(運送、コンサルタント、営業など)

などが挙げられます。

フリーランスは「特定受託事業者」なので、発注事業者との間に雇用関係はありません。事業者と事業者ということで、両者の間には公正さが求められます。

 

知っておこう!7つの義務項目

①書面等により取引条件を明示する
②報酬は、物品等を受領した日から60日以内に支払う
③募集情報を的確に表示する
④ハラスメント対策の体制を整備する
⑤禁止行為をしない
⑥育児や介護と業務の両立に対して配慮する
⑦中途解約などをする場合は事前に予告し、理由を開示する

①書面等により取引条件を明示する
は、すべての発注事業者に義務付けられます。

発注事業者が従業員を雇用している場合、②~④も加えて義務付けられ、
発注事業者が従業員を雇用していて、一定の期間以上行う業務委託をする場合、
①~⑦の全ての項目が義務付けられます。

②③を除く項目について、次項以降で詳しく述べていきます!

書面等により取引条件を明示する ~口約束は厳禁!契約書は必要?~

取引条件として明示を求められるのは、

・業務の内容
・報酬の額および支払期日
・発注事業者とフリーランスの名称
・業務委託をした日
・給付を受領/役務提供を受ける日(いつまでに納品するのか、いつ作業をするのか )
・給付を受領/役務提供を受ける場所(どこに納品するのか、どこで作業をするのか)
・(検査を行う場合)検査完了日
・(現金以外の方法で支払う場合)報酬の支払方法に関する必要事項

ということで、口約束ではなく内容の明示が定められているものの、様式までは定められていないので、「契約書」でなくてもOKです。上記条件が明確に分かるようにしましょう。

条件の明示は書面または電磁的方法で行なわれるように定められていますが、電磁的方法とは、電子メールのみならず、SNSのメッセージやチャットツールなどでもOKとされています。

SNSのメッセージを利用する場合、万が一メッセージが削除されたり、閲覧ができなくなる場合を考え、スクリーンショット等で保存するとよいでしょう。

 

ハラスメント対策の体制を整備する ~努力目標ではなく、義務です~

ハラスメントとは具体的に、

・パワーハラスメント(パワハラ)
・セクシュアルハラスメント(セクハラ)
・妊娠・出産などに関するハラスメント(マタハラ)

などが挙げられます。

フリーランス新法では、ハラスメント行為に適切に対応するための体制を求めています。のちに述べますが、この法律には、違反した場合の措置が定められているため、ハラスメント対策について述べられていることが画期的と言われています。

さて、具体的なハラスメント対策ですが、

①ハラスメントを行ってはならないことを明言し、従業員に対してその方針を周知・啓発する
(対応例:社内報の配布、ハラスメント防止の研修の実施)

②相談窓口を設置し、フリーランスに周知する
(対応例:相談担当者を定める、外部機関に相談対応を委託する)

③ハラスメントが発生した場合の事後の迅速かつ適切な対応
(対応例:相談者及び行為者の双方から事実関係を確認する、相談者に対する配慮措置)

などが定められています。

 

禁止行為をしない ~フリーランスが必ず知っておきたい7つの禁止行為~

一定期間(1ヶ月以上)フリーランスに業務委託をしている発注事業者には、7つの禁止行為が定められています。

  • 受領拒否(注文した物品又は情報成果物の受領を拒むこと。発注の取り消しなども含む)
  • 報酬の減額(業務委託時に定めた報酬の額を、後から減らして支払う)
  • 返品(受け取ったものを返品すること。ただし、不良品などがあった場合には、受領後6か月以内に限って、返品することが認められます)
  • 買いたたき(物品等に対して 、通常支払われる対価に比べ著しく低い報酬の額を定めること)
  • 購入・利用強制(自社の商品やチケットなどをノルマとして買わせるなど)
  • 不当な経済上の利益の提供要請(フリーランスに金銭、労務の提供等をさせること)
  • 不当な給付内容の変更・やり直し(費用を負担せずに注文内容を変更し、又は受領後にやり直しをさせること)

「買いたたき」されないように、こちらも相場を知っておくなど常に情報収集をすることが大事です。報酬の額は、発注事業者としっかり協議して決めましょう。

「不当な経済上の利益の提供要請」と「不当な給付内容の変更・やり直し」については、「そんなことある?!」と思われるかもしれませんが、

「不当な経済上の利益の提供要請」の例としては、運送ドライバーに委託内容には含まれていない荷積み作業を無償で行わせることが挙げられます。「ついでによろしく」と言われるところ、想像がつきますよね。

「不当な給付内容の変更・やり直し」の例としては、発注側の都合で発注の取り消しを行なうことなどです。フリーランスがすでに作業に着手していた場合は、発注側は材料にかかった費用や、作業時間等に応じた報酬を支払わなければなりません。

 

育児や介護との両立に対して配慮する ~配慮の内容についてはしっかり話し合おう~

6ヶ月以上の期間で行う業務委託(契約の更新により6ヶ月以上となるものも含む)の場合、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、フリーランスの申出に応じて必要な配慮をしなければならないことを定めています。

6ヶ月未満の期間であっても、配慮を努めるよう求めています。

・子や介護者の急病などの事由による納期の繰り下げ
・オンラインによる業務を可能とする

などが配慮の具体例として挙げられています。

育児や介護との両立における配慮の申し出により、

・契約を解除する
・報酬の減額を行なう
・取引を減らす

などの行為は「契約の解除その他不利益な取扱い」となり、法律違反となります。

ただし、配慮の申出を受けて話し合いをした結果、フリーランスが従来の数量の納品ができないことが分かり、その分の取引の数量を減らす場合は禁止行為に当てはまりません。

雇用の場合は育児休業や介護休業がありますが、フリーランスの場合、話し合いにより業務を減らした場合は報酬も減ることとなるので、心得ておきましょう。

また、配慮の内容や選択肢について十分に検討した結果、やむを得ず事業者が必要な配慮を行うことができない場合も認められています。
その場合はその主旨を伝え、必要に応じて書面の交付・電子メールの送付等により、理由を分かりやすく説明することが必要とされています。

すべてこちらの言い分が通るわけではないけど、ダメな理由を説明してもらうことができるということですね。

 

中途解約などをする場合は事前に予告し、理由を開示する

発注事業者は、6ヶ月以上の期間で行う業務委託において、フリーランスとの契約を解除または契約不更新とする場合には、原則として30日前までにその予告をしなければなりません(例外事由に該当する場合は除く)。

また、フリーランスから契約解除の理由の開示を求められた場合には速やかに開示する必要があります。
ここでポイントなのは、6ヶ月以上かかる案件だけでなく、契約の更新により6ヶ月以上継続して行うこととなる業務委託も当てはまるということです。
長期にわたり定期的に案件をもらっていたのに、急に打ち切りとなったら困ってしまいますよね。

・災害などのやむを得ない事由により予告が困難な場合
・フリーランスに再委託している場合で、上流の事業者の契約解除などにより直ちに解除せざるを得ない場合

などは例外事由に当てはまり、予告が不要となります。また、業務委託の期間が30日以下など短期間である場合も予告は不要です。

理由の開示方法は、取引条件の明示方法と同じく、書面以外にも、電子メールやSNSでも可とされています。こちらもトラブル防止のために、情報を保存しておくようにしましょう。

フリーランス新法に罰則ってあるの?

フリーランスは、中小企業庁、厚生労働省に対して、発注事業者に本法違反と思われる行為があった場合には、その旨を申し出ることができます。

上記省庁の名前が出てくると物々しい感じがしますが、違反の申出はオンラインでもできます。また、お近くの公正取引委員会(本局・地方事務所等)、経済産業局、都道府県労働局でも可能です。

行政機関は、その申出の内容に応じて、報告徴収・立入検査といった調査を行い、発注事業者に対して指導・助言のほか、勧告を行い、勧告に従わない場合には命令・公表をすることができます。命令違反には50万円以下の罰金があります。

申出を行ったことによるトラブルも恐れてしまいますが、「発注事業者は、フリーランスが行政機関の窓口に申出をしたことを理由に、契約解除や今後の取引を行わないようにするといった不利益な取扱いをしてはならない」ということまで定められています。

そうは言っても、申出をためらったり、「これって違法かな?」と迷うこともあると思います。そんな時は、『フリーランス・トラブル110番』に相談すると良いでしょう。

フリーランスと発注事業者等との取引上のトラブルについて、フリーランスが弁護士にワンストップで相談できる窓口です。

相談先の詳細は、『特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)パンフレット』

https://www.mhlw.go.jp/content/001278830.pdf

をご覧ください。

 

まとめ

ここまで『フリーランス新法』についてわかりやすく解説してきましたが、いかがでしたか?

取引条件の明示方法はSNSでもOKですが、スクリーンショットなど情報を残しておきましょう。

また、「受領拒否」「報酬の減額」「返品」「買いたたき」「購入・利用強制」「不当な経済上の利益の提供要請」「不当な給付内容の変更・やり直し」の7つの禁止行為は忘れずに。発注事業者と対等に仕事をするために必要な知識です。

フリーランス新法は2024111日から施行されます。他のフリーランスに業務委託をする場合は、自身が発注事業者となるので要注意!心配になった場合は、このコラムを読み返してください。

筆者もフリーランスですが、この法律を機に、フリーランスがより良く働ける世の中になるといいですね。

 

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