意外と知らない!個人事業主と法人の違いやそれぞれのメリット・デメリットをご紹介☆
個人事業主の方が法人よりもお得なのか?
会社勤めをやめて、自営業に転向したいと考えるサラリーマンも増えている昨今。
独立の際には、個人事業主になるかそれとも会社法人を設立するか、その事業規模によって形式を選ぶことが可能です。
まず、個人事業主と法人にはどんな違いがあるのか?そこがよく分からないことには、どちらを選択してよいかも分かりません。
そこで、今回は、フリーランスや自営業で独立したいと考えている人に役立つ、個人事業主と法人の違いや、それぞれのメリット、さらには、個人事業主を選ぶか、法人を選ぶかのポイントについても詳しく解説していきます。
個人事業主とフリーランスの違いは?
その前に少し、個人事業主とフリーランスの違いについて整理をしておきましょう。
個人事業主とは税制上の区分です。事業で所得を得る法人以外の人のことを指します。つまり自営業の人はもちろんフリーランスの人も事業で所得を得ている限りは、個人事業主なのです。
一方フリーランスとは働き方の区分です。個人事業主の中には、店舗を構えて働く人がいます。あるいは芸人やプロスポーツ選手のように特定の組織と業務委託契約を結んでいる人もいます。こうした人達はフリーランスとは呼ばれません。
つまりフリーランスとは、個人事業主の働き方として、どこにも属さず拠点を持たない働き方をするということなのです。
そもそも個人事業主って何?
個人事業主と法人の違いについてご紹介する前に、まずは、個人事業主とはどういった方のことを指すのか、その法律上の定義についてお話しましょう。
個人事業主は、文字通り「個人」で「事業」を行っている人のことですが、ここで言う「個人」とは、法律上では「法人」に対する対義語として使われています。個々を指す個人に対して、法人とは会社という意味で使われます。
一方「事業」については、「反復」「継続」「独立」して行う仕事のことを指しています。
「反復」は、例えば、商品を仕入れて顧客に販売するという行為を繰り返して行うなど、同じ業務を反復して利益を得ているという状態を指します。
「継続」は、1回切りで終わる事業ではなく、5回、10回、100回と続けて事業を行って利益を得るという状態を指します。例えば、毎日パンを販売するといった行為は、1年、2年と「継続」しているという風にとらえます。
最後に「独立」についてですが、どこかの企業や団体など、組織に属さずに収益をあげる(あるいは収入がある)状態のことを「独立」と言います。
確定申告の際には、事業所得として計上するのか、一時所得や雑所得になるのかなど、内容によって、どの項目で所得を申告するか迷う場面もあるかと思います。
その際には、「反復」「継続」「独立」の3つに当てはまるかどうかで判断すると良いでしょう。
個人事業主になったら、所得に応じて確定申告を行う必要が出てきます。サラリーマンから個人事業主に転向したばかりの場合は、事業としてこの仕事が継続していくかがまだ分からないという方も多いと思います。
その場合は、「雑所得」として確定申告を一時的に行い、事業が継続できると判断できた時点で「事業所得」に切り替えて確定申告するというやり方もあります。
個人事業主の確定申告の方法は2つあり、青色申告または白色申告で申告することが可能です。
青色申告は、特別控除で最大65万円を収入から差し引いて計上することができるため、個人事業主にメリットの大きい申告方法です。しかしながら、青色申告では、複式簿記による帳簿の作成が義務付けられていますので、事業にまつわるお金の出入りをすべて報告しなければなりません。
こういった会計・経理に関わる処理は、サラリーマン時代には経験したことがない方がほとんどだと思います。個人事業主になった初年度は、帳簿の準備などが難しい、あるいは、税理士さんへの相談資金などの調達が難しいなど、いろいろと不都合もあるかと思います。
そういう事情のある方は、簡易帳簿で申告できる白色申告で申告するというのも一つの選択肢です。
青色申告で確定申告を行う場合は、管轄の税務署に個人事業主としての「開業届」を提出しなければなりません。また、開業後2か月以内に「青色申告承認申請書」も提出しなければなりませんので、忘れずに手続きを行う必要があります。
個人事業主として、青色申告を行う際に、大きなネックとなっているのが、複式簿記による帳簿付けですが、最近では、オンラインソフトのfreeeなどで、比較的簡単に帳簿付けができるようになってきていますので、初年度から青色申告を考えたい個人事業主の方は、こういった会計ソフトを活用するのがおすすめです。
独立開業するなら個人事業主か法人のどちらかが選べる
サラリーマンを辞めて独立開業をする時には、個人事業主または法人のどちらか一方の事業形態を選択することができます。
個人事業主と法人では、事業を開始する際の手続きや、税金の支払い方法が違っているため、両者にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
ざっくりと両者の特徴をあげるとすれば、個人事業主は、法人としての登録手続き等が不要で、税務署への「開業届」のみで、事業がスタートできるので、独立したいと思ったときに、比較的簡単にビジネスを始められるというメリットがあります。しかし、個人事業主には、法人に与えられている税金の優遇措置がありませんので、税金対策という観点から見ると法人に劣ります。
一方、法人として独立する場合は、手続きが複雑だったり、開業コストがかかるというデメリットがある半面、社会的信用が高くなったり、税金の面で優遇されるというメリットがあります。
どちらを選ぶかのポイントについては、後ほど別の章で詳しくお伝えします。
個人事業主と法人の違いとは?
税制上のメリットやデメリットの他にも、法人と個人事業主には、様々な違いがあります。
たとえば、法人を設立する場合は、株主などの出資者を募る必要があります。個人事業主の場合は、事業の出資者は必要なく、個人で開業することが可能です。
個人事業主の開業手続きは、先述の通り税務署に「開業届」を提出するだけです。それに対して、法人の場合は、会社の登記や定款の作成に費用がかかり、手続きも複雑です。法人設立の手続きにかかる費用は、およそ20万円から30万円ほど必要です。
個人事業主は事業を廃業する場合は、税務署に廃業届けを提出しますが、法人の場合は、登記手続き等が再度必要となり、お金も時間もかかります。
個人事業主と法人の場合では、受けられる税制措置も変わってきます。
個人事業主の場合は、累進課税方式で所得に応じて税率が上がる仕組みとなっており、所得が増えるほど、支払う税金が多くなってしまいます。
一番所得が多いグループに該当する場合は、所得税や住民税が50%以上徴収されることになりますので、利益が多い年度は、個人事業主の方が不利になってしまいます。
逆に、法人税は、税率が一律30%前後に定まっていますので、事業所得が多ければ多いほど、税金の支払いがお得ということになります。
個人事業主の場合は、確定申告を行った事業年度が赤字の場合は、3年まで繰越が可能ですが、法人の場合は、赤字となった場合も7万円の税金を納付しなければなりません。
所得が低いうちは、個人事業主で良いかもしれませんが、所得が多くなったら、法人化を検討した方が良いというのはこういった理由からです。
個人事業主として独立した場合のメリットとデメリットは?
個人事業主と法人の違いについて、大まかにご紹介しましたが、具体的にはどんなメリットやデメリットがあるのか、もう少し詳しく見ていきましょう。
個人事業主の最大のメリットは、何といっても開業手続きがシンプルという点です。厳密に言うと、税務署に申告しなければならない所得がない場合は、開業届を提出しなくても、個人事業主として働くこともできるため、在宅ワークや副業などで年収20万円以下となる方達も、大きく見ると個人事業主ということができます。
また、個人事業主のメリットとしては、税金の手続きが法人に比べて簡素化されていると言う点です。
個人事業主の場合は、規程の所得を越える場合は、年に1回確定申告を行う義務があります。
個人事業主の確定申告の方法は、青色申告と白色申告の2種類になりますが、法人と違って、会計ソフトなどを利用して、個人て手続きできる場合がほとんどで、法人が税理士を雇って手続きを行う場合が多いのに対し、税金の申告の際も手数料などがあまりかからないというメリットがあります。
控除額が多い青色申告で確定申告する場合でも、会計ソフトを使えば複式簿記の帳簿を比較的簡単に作成することが可能です。また、個人事業主として事業専用の口座とクレジットカードなどを持っていれば、これらの情報をデータベース化して、会計ソフトで自動的に経費などの帳簿付けをするという方法もあります。
控除額のない白色申告なら単式簿記というお小遣い帳のような簡単なお金の出入りの記録だけで確定申告が済みますので、法人に比べると、さらに手続きが簡単というメリットがあります。
個人事業主は、赤字の場合は3年分まで翌年度に繰越できるため、事業を始めたばかりで、まだ利益が出ないような時期や、あまり景気がよくなく、たくさん仕事を受注できない時期など、所得が少ないうちは、個人事業主の方がメリットが大きいと言えます。
個人事業主のデメリットは、法人と違って社会的信用度が低いという点です。例えば、従業員を雇いたいという場合にも、法人化していないと、収入が不安定にならないだろうかと不安に思う方が多いようです。
また、クレジットカードの申請や住宅ローンや車のローンを組む際も、個人事業主は社会的信用が低いため、審査が通りにくいというデメリットがあります。
所得が増えると、それに応じて納める税金の額が多くなってきますので、個人事業主から法人に切り変えることを検討する方が良い場合も考えられます。
法人として独立した場合のメリットとデメリットは?
個人事業主と法人を比較した際の、メリットとして、まず第一にあげられるのが税金の支払い方法です。
法人税は、個人事業主に比べて税率がほぼ一律となっているため、収益が高い場合は、個人事業主に比べてかなり節税できるというメリットがあります。
また、法人の場合は、個人事業主と違って、会社の収益を法人の所得として申告することができるため、経営者の所得税を減らすことも可能です。
法人経営者の報酬にのみ、所得税を支払い、残りの所得については、法人税を適用するように調整することも可能なのです。
法人化すると、個人事業主よりも当然社会的信用度が上がりますので、銀行のローンなどを取り付けやすいというメリットがあります。また、事業規模の大きい企業の中には、個人事業主とは取引しない会社もありますので、そういった面でも個人事業主よりは法人の方がメリットが高いと言えます。
個人事業主の赤字金の繰越は、最長3年までと決められていますが、法人の場合は、赤字繰越の期間が長く設定されています。もちろん、赤字年度でも、最低7万円の税金はかかりますが、経営状態がよくない時期が長く続いても法人ならすぐに倒産とはなりません。
また、出資者を募って設立しますので、資金調達の面でも個人事業主よりはメリットが高いと言えます。
法人のデメリットは、個人事業主と違って、開業するにも廃業するにも登記や定款作成などの諸手続きが必要となり、その度にコストが発生するという点です。
長期的に見ると、ある一定以上の利益をあげられるようになったら、法人化する方が所得全体が多くなると言えます。
個人事業主と法人ではかかってくるお金もいろいろと違う!
法人と個人事業主では、事業運営にかかるお金もいろいろと違っています。
例えば、開業費用については、個人事業主は一円も必要ないのに対し、法人の場合は、定款作成や登記費用で、最低6万円から30万円ほどの費用が必要です。
廃業についても同様で、個人事業主は0円なのに対し、法人は、解散登記や公告などの手続きに数万円の費用が必要となります。
一方、税金の面では、個人事業主は、経費として計上できる項目の範囲がかなり狭くなっていますが、法人なら、経営者への給与や生命保険が全額控除されるなど、様々なメリットがあります。
社会保険の負担については、個人事業主なら5人未満の経営なら会社負担はありませんが、法人だと、必ず会社負担分が発生する等の違いがあります。
個人事業主か法人かの選択は事業収入を見て慎重に!
個人事業主と法人の違いについて、メリットやデメリットも含めてご紹介してきました。
独立後の売上が1000万円以上を見込める場合は、個人事業主ではなく、法人化した方が、税制の面でかなり有利になります。
気軽に始めたいという方は、まずは、個人事業主から独立開業してみてください。