子連れ出勤導入企業で働くメリット・デメリットとは?
働く女性にとって、妊娠、出産、育児と、女性のライフステージによって、「働くこと」のハードルを一つひとつ乗り越えなければいけないことがたくさんあります。
とくに、産後は乳児を抱えて仕事をしなければいけない状況に頭をかかえる女性も多いのではないでしょうか。
まず、第一に子どもの預け先を探さなければいけません。さらに、母乳育児の場合は、ほんの2~3時間ほどしか赤ちゃんと離れることが出来ませんね。
これまで働いてきた女性や、これから働く予定の女性は、「出産後も変わらず仕事を続けたい」、「育児中も社会と繋がっていたい」、「必要とされたい」などと強く希望しています。
また、経済的な理由で働かざるを得ない女性も多くのも事実です。
そこで、昨今企業に増えつつある「子連れ出勤」について見ていきましょう。産後の女性が快適に不安なく働く一つの手段として、注目を浴びてきています。
子連れ出勤とは?
子連れ出勤とは、その名の通り「子どもと一緒に出勤して良い」といった企業内制度です。昨今の待機児童増加や、核家族の増加などによって、子連れ出勤制度を設ける企業が増えてきています。
「子連れ出勤」には、大きく2つのタイプに分けられます。1つは、企業内に設置されている事業所内託児所に子どもを預けられるケース、もう1つは、オフィスなど親が仕事をする同じ空間に子どもを同席できるケース。
事業所内託児所に預けられれば、発熱や急病、トラブル時にもすぐに対応が出来ます。
また、会社勤務の子どもしか預けられないので、預けられないといった不安要素がないのは働く女性にとっては大きいですね。保活の精神的負担がグッと楽になります。
オフィスに子どもを同伴できる場合は、乳児など長時間離れられない子どもにとって、母子ともに精神安定と生活リズムの安定などメリットも大きいと言えるでしょう。
子連れ出勤のメリット
1.預け先の確保
なんと言っても、子どもの預け先が確保できるのは最大のメリットです。産後の預け先を見つけるまでに、なんと妊娠中や妊娠前から情報を収集して探し始める必要があります。
地域によっては、保活はお母さんの精神的負担、肉体的負担が大きいとされています。
子どもの預け先を確保しなければ、安心して働くことが出来ないといったように、女性が働くには、かなり大きなハードルが存在すると言えます。
2.送迎の負担ゼロ
子どもを保育園に預ける場合、どんな距離であろうが、どんな天候であろうが、子どもの送迎を毎日強いられます。
自分の出勤時間を考慮しながら、子どもの通園に付き添わなければならないのは、働く女性にとってかなりの負担です。
この送迎を、夫や実家の親などにサポートしてもらえる環境であればかなり負担も軽減できますが、たいていの家庭では、勤務時間や勤務体系からもお母さんが送迎するお家が多いのではないでしょうか。
その点、子連れ出勤の場合、自分の通勤に子どもを一緒に連れて行けるので余分な送迎時間や負担がゼロといったメリットがあります。
自宅と保育園、そして職場のそれぞれを朝と夕方に往復することを考えると、かなり時間にも余裕をもたらしてくれます。
また、子どもはこちらの思い通りには動いてくれません。寝起きから、登園準備、朝ごはんに身支度など、朝の時間だけでもこなさなければいけないことが盛りだくさん。
自分と一緒に職場まで連れていけるのは、日々の生活の中でかなり大きなメリットではないでしょうか。
3.勤務状況を優先してくれる
認可保育園や私営保育園に預ける場合、多くが土曜日から日祝日が休園となり、預けられません。その場合、実家に子どもを預けたり、友人に預かってもらったりと何かと工夫が必要です。
また、夏休みや冬休みのように長期休みを取る園もあることから、仕事を長期的に続けるのにかなり困難が生じてしまいます。
出勤スタイルも、一定の場合と、シフト勤務のように曜日や時間がランダムな場合があり、一定でない勤務状況では、子どもを預けるのも一苦労です。
その点、子連れ出勤だと、勤務状況を優先的して預けることが出来ます。子どもを安心して預けられる大きなメリットですね。
4.子どもの緊急時に即対応できる
小さい乳幼児は、すぐに熱を出してしまいますね。そんな、急なトラブル時でも、すぐ子どものそばにいられる子連れ出勤ならば、すぐに対応出来ます。
職場と保育園との行き来がないだけでも、かなり時間的ロスも省け、子どものそばに早く駆けつけることが出来ますね。
また、子連れ出勤を勤務スタイルに取り入れている職場ならば、子育てのそういった急なトラブルにも理解を得られ、仕事の面においてもサポートを得ることが出来ます。
これは、働く女性にとっては本当に有難いことで、最高の職場環境と言えるのではないでしょうか。
子連れ出勤のデメリット
1:仕事に集中できない
子どもが職場にいると、寂しがっていないか、迷惑をかけていないかなど気になってしまうものです。保育園に預けていても気になることはありますが、子連れ出勤だと距離が近いこと、職場関係での預け先であることから、より気になりやすいと言えます。
また同じ職場の方のお子さんもいることで、仲良くしているか気になってしまうということもあるでしょう。
2:通勤で疲れさせてしまう
基本的に保育園は、家の近くであることがほとんどですが、子連れ出勤の場合勤務先まで連れて行かなければなりません。
移動距離が長くなり小さいお子さんには体力的にも精神的にも負担になるうえ、満員電車に遭遇することもあり得ます。
3:子どもが伸び伸びと過ごせない恐れがある
職場内託児所が設けられていれば良いですが、子ども用スペースが少し用意されている程度ですと、保育園ほど伸び伸びと遊ぶことは難しいです。
保育園では遊びや学びのプログラムやおもちゃが用意されていたり、外遊びや散歩タイムなどもありますが、子連れ出勤だとそういった機会を奪ってしまう恐れがあります。
子連れ出勤の形式
1:職場のあるビルの中やすぐ近くに託児所が設置されている
子連れ出勤制度を利用する方にとってもっとも助かると言えるのが、この形式ではないでしょか。実際に仕事をする場から適度に距離があるので、比較的仕事に集中できるというメリットがあります。
2:同じフロア内に子どもが遊べるキッズスペースのようなものが設置されている
フロアの一角に、怪我をしにくいマットなどを敷き詰めキッズスペースと確保している企業もあります。マットの外側には、やはり怪我をしにくい柔らか素材の大型積み木や、柵などでさりげなく空間分けしてあったりもします。
メリットとしては何かあったときにすぐに声をかけてもらえること。
なんとなく気配で様子を伺うことができます。
一方で、少し気が散ったりすることは否めません。
3:机のすぐそばに子どもの居場所を設ける
広々とした空間に大きな丸テーブルなどが置かれ、自由な席で仕事ができるようになっているなど、自由な雰囲気の事務所でよくありますが、子どもはその隣でお絵かきをするなど、とくに専用のスペースが用意されていない場合も。
自分自身で子どもの面倒を見るので、他の人の手を煩わせることはありませんが、いつでも子どもが声をかけてくる状況にいるので、集中力が途切れることはもちろん、同僚に声をかけ迷惑をかけてしまうこともあります。
同じ年頃の子が近くにいていい遊び相手になることもありますが、喧嘩になってしまったり、大騒ぎしてしまったりすることも十分あり得ます。
子連れ出勤制度普及の背景として
かつての日本は、大家族が多く、今よりもご近所付き合いが深く、地域社会とのつながりがしっかりと根付いていました。それは、大人同士だけではなく子どもの世界でも同様でした。
公園や広場など、遊び場もたくさんあり、そこには子どもを見守る大人たちの温かいまなざしがありました。
昨今は、子どもが安心して遊べる公園も減り、残忍な事件が後を絶たないことから、他人を悪い人かもと警戒しながら遊ばなければならなくなってしまいました。
ちょっと子どもに声を掛けたりすれば、不審者扱いなどといった経験も少なくないはずです。
大家族であれば、子どもが生まれれば年長者をはじめ、家族が手を貸し、老夫婦が若い夫婦をサポートするといった間柄が自然と生まれてきました。
しかし、核家族が増えた現代では、そういった細やかなサポートがなく、若い夫婦たちは自分たちで稼ぎ、自分たちの手で子どもを育てなければいけなくなってしまいました。
社会の雇用システムも多様化し、正規雇用が減り、契約や派遣などで家族を養わなければいけない若い世帯主も増えました。
共働き家庭が当たり前の状況で、子どもが生まれると即問題になるのが、子どもの預け先ですね。
遠く離れる両親には頼れずに、途方にくれる日々を送るお母さんも多いことでしょう。それに、拍車をかけるのが待機児童問題です。保育園不足、保育士不足から、認可保育園に預けるのが非常に困難な時代になってしまいました。
子どもは、仕事の邪魔をする存在として捉えられるのが一般的です。子どもを預けないと仕事に出られないといったこれまでの考え方を一新してくれるのが、この「子連れ出勤」システムですね。
育児は、可愛い半面、お母さんにとっては非常に苦痛を強いられる仕事です。
授乳や夜泣きによる睡眠不足、抱っこでしか泣きやまないために四六時中の抱っこで肩鞘炎になる腕、家事と仕事の両立、その間に子どもの世話が精神的にも肉体的にも限界ぎりぎりのお母さんがたくさんいます。
そんななかで増え続けるニュースが、幼児虐待、児童虐待ですね。核家族の家の中では、一体何が起きているのかが見えにくい、わかりにくい社会となってしまいました。
子どもは社会で育てるべき、社会が支えるべきとの風潮が増えつつあり、そんな流れのなかに子連れ出勤が生まれたのではないでしょうか。
女性の社会進出
女性の社会進出によって、女性の晩婚化、妊娠、出産の高齢化が増えてきました。
働く女性が、独身時代からキャリアを積み、結婚しても家事との両立に苦戦しながらも仕事を続け、妊娠、出産も乗り越えてなお、働き続けるといった社会となりました。
そんな女性が、子育てしながらでも働ける企業をと率先して子育てをサポートし、働く女性をサポートし始めたことから、子連れ出勤が普及してきたのでしょう。
年長の女性が、若い働く女性をサポートし、仕事も子育ても両立出来るように支える構図が、いわゆる昔の社会の現代版なのでしょう。
企業側のメリット・デメリットとは?
以上のように、子連れ出勤制度がお母さんにとっても、その子どもにとってもメリットが大きいことが分かりました。
では、反対に子連れ出勤によって企業や職場側にとってのメリット・デメリットはどんなものがあるのでしょうか。
先にも挙げましたが、子どもは仕事の邪魔をする存在といった考えが一般的です。
また、同じオフィス内にいるのは、子ども好きばかりではありません。子どもが苦手な人も心地よく仕事を進めなければいけませんね。
乳児であれば、お腹が空けば泣き、お尻が汚れれば泣き、寂しくても泣くといったように、自分にとって不快な状況が起こる度に泣き出します。
幼児ともなれば、トイレに行きたくなったら一緒に同行を求め、遊びに飽きたら構って欲しいとちょっかい出してきます。
とくに、お母さんが仕事をする同じオフィス内で子どもが一緒に過ごすケースでは、こうした子どもの要求に応える度に、作業がストップしてしまいます。
このように、ストップした分の仕事を補うためには、周囲の人のサポートやなんらかの補佐が必要になってきますね。
そういった時に、さりげなくサポート出来る体制がオフィス内に自然と生まれていれば、この企業の子連れ出勤制度は成功していると言って良いでしょう。
また、取引先との大事な電話応対や、重要案件や重要書類の作成作業時には、子どもの声が届かない静かなスペースを確保する、新たに設置するなどの企業側の工夫が必要になってきます。
子ども専用のスペースを設けて、ある程度仕事スペースと区切るなどの環境確保は大事ですね。
そして、子連れ出勤制度を設けている企業が大事にしたいのは、職場での「優しさ」や「余裕」といったところはないでしょうか。
仕事をチームで進める労働の現場では、作業中心になりがちで、つい人間性を後回しもしくは軽視されがちです。
しかし、子どもが職場に存在するといった環境だけでも、人の温かさや優しさの面を嫌でも引き出されるといった狙いもあります。
人と人が助け合う、支え合って築いていくことが、現代社会において、また企業において求められていると言えるでしょう。
「仕事場に子どもを連れ込む」について、企業が今後どのような捉え方をするか、考え方を持っていくかは日本社会全体の問題かもしれませんね。
子連れ出勤の本音~母親と企業側~
子連れ出勤制度で働ける環境にあるお母さんは、本当に恵まれている環境と言えますね。
子どもの預け先を心配しなくても良い、子どもをそばに置きながら仕事が出来る、心配や不安が最小限度で済む、仕事を辞めなくても良いといった環境は、子どもをもつ同じお母さんならば誰もが羨む環境でしょう。
しかし、実際のところはどうでしょうか。実際に働きながら、お母さんたちが感じる本音は色々とあるでしょう。
例えば、安心して授乳できるスペースがない、子どもがぐずったらやっぱり気を遣ってしまう、オフィスのデスクの角や危ない文房具が気になる、仕事で大事な書類やオフィスのものを子どもが触ってしまう、朝は子どもがぐずってどうしても遅刻してしまうなど、土足のオフィスでハイハイさせられない、など子連れ出勤で仕事をし出したらそれなりに、苦労や心配事が増えてしまいます。
オフィスでは、オフィスの最低限のルールとマナーを子どもに教え込まなければ、子連れ出勤は成り立ちません。
仕事をしながら、子どもに教え伝え続けるといった子育てを同時にこなさなければいけないのは、非常にエネルギーを要します。
一方で、企業側や一緒に働く同僚たちの本音もたくさんあるでしょう。
基本的に、子どもは仕事の邪魔をする存在としての認識があれば、非常に子連れ出勤制度を取り入れた企業は同僚にとって苦痛を強いられます。
大事なものには触られたくない、集中したい時は静かにしてほしい、話しかけないで欲しい、子どもがぐずったらすぐに対処して欲しい、ある程度マナーなどわきまえて欲し
いなど、そのオフィス内が子どもを受け入れる雰囲気、寛容に見守れる優しい雰囲気がないと、企業側も母親側も非常につらい状況を作り上げてしまいます。
そんななかでも、子連れ出勤制度を見事に成功させている企業が昨今増えつつあります。
お母さんにとっては、子連れ出勤で迷惑をかけていないだろうか、子どもが嫌いな人は大丈夫だろうかと、心配と不安で押しつぶされそうな時もあります。
子連れ出勤制度を成功させている企業が一番大切にしているのは、やはり「オフィスの雰囲気」でした。
雰囲気を良くするために、オフィス内の工夫をし続けること、子どもを寛容に受け入れる雰囲気作りを一番にすることで、結果作業効率も上がり、業績も上がるといった事例がたくさんあります。
お母さんは、最初からうまくやろうとせず、企業側は「お互い様」といった考えが全体の潤滑油となって、温かいオフィスが作り上げられるのですね。
賛成派の意見と反対派の意見
>>賛成派の意見<<
・職場に必要な方が仕事を続けることができるため
皆を引っ張っていくリーダー、またはムードメーカー的な存在だった場合や、経験が豊富で頼りになる存在だった場合は、その人がいなくなることで業務に支障が出てくる恐れがあります。
ついては、その方が続けられるよう賛成意見をもっている方が多いです。
・自分も子どもができたときに続けることができるため
自分が実際に結婚し、子どもができた場合に辞めざるを得ないとなると困るため、制度自体に賛成という方も多いです。
>>反対派の意見<<
・仕事に支障がでるため
子どもが同じ場所にいることで、気をとられたりお世話が発生することから仕事の効率が落ちたり、支障が出る恐れがあります。それを不公平と感じる方も。
・子どもが苦手であるため
そもそも、子どもが苦手という方も多いです。違うフロアではなく、キッズスペースが近いと、子どもの声や出す音にストレスを感じ、仕事にも影響する恐れがあります。
・不妊治療者に精神的なダメージを与えるため
子どもが欲しくても、なかなかできなかったり、不妊治療に通っている場合は、子どもやその親の姿を見ることで、苦痛だという方もいます。
子連れ出勤の注意点とは
子連れ出勤制度のなかで、とくにオフィスで一緒に子どもと過ごす場合には、やはり安全面の確保は非常に重要です。
なんでも興味を示す子どもの手の届くところに、カッターやハサミなどの危ない刃物や文房具を置かない、デスクの角や開けられては困る書棚の扉、給湯室のポットや包丁など、とにかく子どもに触られたくないもの、危険なスペースを安全に対処することを最優先にします。
また、乳幼児が安心してハイハイやつかまり立ちが出来るような土足厳禁のマットを敷くなどスペース確保や別室確保が必要ですね。
お母さん側の注意点は、仕事中も自分の子どもからは極力目を離さない、心を離さないのは大前提です。また、見てもらって当たり前、配慮してもらって当たり前ではなく、常に感謝の気持ちでマメにコミュニケーションを取るようにしましょう。
お互いの配慮で心地よい子連れ出勤が実現します。
また、同僚に理解を得られるかということが、しばしば問題になり得ます。
子連れ出勤を取り入れている企業でも、まだ子どもがいない方、自分は保育園に預けているなんて方々みなに歓迎してもらえるかは別の問題です。
制度に理解は示していても自分の子が実際に他の人の邪魔をしてしまったり、大声を出して迷惑をかけたり、飲物をこぼして重要書類を汚してしまい嫌な顔をされる恐れがあります。
これをクリアするには、制度があるからといって当然という顔をするのではなく、つねに真摯な気持ちでいることが重要ですし、子どもにはやってはいけないこととして注意をしておくことも必要です。
また、子連れ出勤の大変さについては愚痴を言いたくなることもあるでしょうが、聞いていて楽しい気分になるものではないので、周囲に不快感を与えないためにも、できるだけ控えるようにしたいものです。
なお、子連れ出勤制度のデメリットでも挙げた満員電車ですが、時短制度やフレックスタイム制を利用するなどして、できるだけ避けることも大事です。
子連れ出勤制度のほか、そういったサポート制度がないか、上司や人事部に相談してみることもおすすめです。