個人事業主必見!住宅ローン控除を受けるための条件・注意点とは?
個人事業主でも住宅ローン控除を受けられる方法があるってほんと?
住宅を購入する際に、金融機関から融資を受けて組む「住宅ローン」。会社勤めのサラリーマンだと大抵の場合は、ローンを組むことができますが、最近は、個人事業主でも住宅ローンを組む方が増えてきました。
一定の条件を満たして入れば、所得税から「住宅借入金等特別控除(以下、住宅ローン控除)」を受けられるので、個人事業主の方もこの特典を利用することが可能です。
住宅ローン控除は、購入した「住宅の種類」や返済期間などによって適用される金額が異なります。
個人事業主の場合は、購入した住宅の一部を自宅兼オフィスとして使用したり店舗として使用したりするケースもあるため、控除申請の際には少し注意しなければなりません。
今回は、個人事業主や自営業の方が住宅ローン控除を受ける際の手続き方法と、申請の際の注意点などを挙げながら、どうすれば住宅ローン控除を最大限活用できるのかといった疑問にお答えします。
住宅ローン控除ってそもそもどんな制度?
個人事業主も申請可能となっている住宅ローン控除。一体どのような制度なのか?分からないと言う方も多いのではないでしょうか?
まずは、住宅ローン控除とは一体どんな制度なのかというところから解説していきましょう。
国税庁のホームページでは「住宅ローン控除」について以下のように定義されています
<引用>
住宅借入金等特別控除とは、個人が住宅ローン等を利用して、マイホームの新築、取得又は増改築等(以下「取得等」といいます。)をし、平成31年6月30日までに自己の居住の用に供した場合で一定の要件を満たす場合において、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除するものです。
出典:国税庁No.1213住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)より
国税庁の定義によれば「住宅ローン控除」は「住宅ローン等の制度を利用して、住宅の購入またはリフォームなどを行った場合、住宅ローン残高に応じて、決められた計算式によって算出した金額を所得税等から直接控除できる」ということです。
この制度を利用すると、住宅ローンの支払いが発生する一定期間に限り、所得税の負担を軽減することができるのです。
住宅ローン控除が適用されると、年末調整での還付金が増えるなど、他にもメリットがあります。
<所得税の控除>
サラリーマンで給与所得がある方は、給料から直接源泉徴収税が差し引かれています。住宅ローン控除を利用すると、源泉徴収税の一部が還付される仕組みになっていますので、年末調整の際に還付金が戻ってくるのが通例です。
では、個人事業主の場合はどうでしょうか?個人事業主や自営業者の場合は、確定申告の際に所得税をどれだけ納付するかが決まります。住宅ローン控除を受ける場合は、この確定申告の際に所得税から直接控除するという形で所得税が減税される仕組みとなっています。
<住民税の控除>
住宅ローン控除の一部は、住民税にも対応しています。所得税の直接控除の中で差し引くことができなかった分の控除については、住民税に対して控除が受けられるケースもあります。
個人事業主の場合は、いずれにしても確定申告手続きを行わなければ、住宅ローン控除を受けることができませんので、必ず手続きを行うようにしてください。
個人事業主が住宅ローン控除を受けるにはどんな条件がある?
サラリーマンの場合は、源泉徴収税に対して住宅ローン控除が適用されるため、年末調整で還付金が戻ってくるというルールになっています。
では、個人事業主が住宅ローン控除を受けるには、どのような条件があるのでしょうか?
実は、自営業者の場合も住宅ローン控除を受けるための条件は、業種・業態に関わらず共通しています。
以下に、国税庁のホームページからの情報を元に、「住宅ローン控除の条件」をご紹介していきますので、参考になさってください。
<確定申告は必須>
住宅ローン控除の適用条件、1つめは確定申告を受けるということです。
国税庁のホームページには
(引用)
控除を受ける最初の年分は、必要事項を記載した確定申告書に、次に掲げる区分に応じてそれぞれに掲げる書類を添付して、納税地(原則として住所地)の所轄税務署長に提出する必要があります
出典:国税庁5住宅借入金等特別控除の適用を受けるための手続より
と記載されています。
まず、所得を確定させて納税の義務をきちんと果たさなければ住宅ローン控除が受けられないということです。
ちなみに、住宅ローン控除が適用される期間は10年間と決まっていますので、確定申告の初年度のみ、住宅ローン控除手続きの必要書類を一緒に提出すれば、手続きは完了するということになります。
<所得金額によって判定される>
住宅ローン控除の適用条件は、所得金額によって判定される仕組みと鳴っています。
所得金額の種類は「総所得金額」「合計所得金額」「課税総所得金額」の3つありますが、住宅ローン控除の適用に影響するのは「合計所得金額」の項目です。
国税庁のホームページには
(引用)
この特別控除を受ける年分の合計所得金額が、3千万円以下であること
出典:国税庁2住宅借入金等特別控除の適用要件(2)より
と記載されています。
住宅ローン控除が適用されるのは、控除を申請したい一年分の合計所得金額が3000万円以下でなければならないのです。
合計所得金額が3000万円を越える場合は、住宅ローン控除の適用から外れることになります。個人事業主の場合で、3000万円以上の合計所得がある方は、適用を受けられませんのでご注意ください。
<住宅ローンの返済期間にもご注意!>
続いて、住宅ローン控除の適用条件の3つ目ですが、住宅ローン控除が適用されるのは、ローンの返済期間が「10年以上」の案件に限ります。
もし、住宅ローンの返済期間が10年未満の場合は、住宅ローン控除を受けることができませんので、ご注意ください。
この点について、国税庁のホームページでは以下のように記載されています。
(引用)
10年以上にわたり分割して返済する方法になっている新築又は取得のための一定の借入金又は債務(住宅とともに取得するその住宅の敷地の用に供される土地等の取得のための借入金等を含みます。)があること。
一定の借入金又は債務とは、例えば銀行等の金融機関、独立行政法人住宅金融支援機構、勤務先などからの借入金や独立行政法人都市再生機構、地方住宅供給公社、建設業者などに対する債務です。
しかし、勤務先からの借入金の場合には、無利子又は1%に満たない利率による借入金はこの特別控除の対象となる借入金には該当しません。また、親族や知人からの借入金は全て、この特別控除の対象となる借入金には該当しません。
出典:国税庁2住宅借入金等特別控除の適用要件(4)より
この引用を見ると分かる通り、住宅ローンのすべてが控除の対象となるわけではありません。一定の借入れ債務とは「金融機関からの借入れ」のことを指しますので、銀行などの融資を受ける場合は、これに該当します。
会社からの借入れや利子が1%以下のローンも住宅ローン控除の対象外となりますので、その点を確認してから住宅ローンを組むようにしましょう。
<住宅ローンの繰り上げ返済期間はどれぐらい?>
個人事業主の場合は、営業成績のよい年度には、住宅ローンを繰り上げ返済したいという方もいらっしゃるかもしれません。
繰り上げ返済を行うと結果として住宅ローンの返済期間が10年よりも短くなってしまう可能性があります。
もし、繰り上げ返済を行うことで住宅ローンそのものの期間が10年未満になってしまうと、控除の対象から外れますので、その点には注意が必要です。
節税しながら返済するには、10年間の住宅ローン控除対象期間はそのまま控除を受けながら返済し、控除を受けられなくなった11年目から繰り上げ返済を行うというパターンがおすすめです。
<自宅を事務所や一部店舗にする場合はどうするの?>
個人事業主が住宅ローンを組む際に気をつけていただきたいのが、自宅の一部を事務所や店舗として使用する場合です。
というのも、住宅ローン控除が適用されるのは「居住部分のみ」となっているからです。1階を店舗に2階を居住スペースにしている住宅の場合は、2階部分のみが住宅ローン控除の対象となります。
住宅ローン控除の対象となる部分については、以下のように計算します。
居住部分の床面積が2分の1以上の場合は、住宅ローン控除額 × 居住部分の割合で算出。
居住部分の床面積が2分の1未満の場合は、控除は受けられないというルールになっています。
このように、自宅兼事務所や自宅兼店舗のような形で住宅を建てる場合には、居住部分の床面積が、2分の1以上でなければ住宅ローン控除を受けられませんので、ご注意ください。
個人事業主が住宅ローン控除の要件
個人事業主が住宅ローン控除を受けられないケースには、どのような場合があるのでしょうか?
住宅ローン控除を受けるために、必要な要件を以下にまとめてみます。
<住宅ローン控除の要件>
・住宅ローンを利用して家を取得し、取得後6カ月以内に居住する。かつ、控除を受ける年度末まで居住していること
・住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が3000万円以下であること
・控除を受ける予定の住宅の床面積が50平方メートル以上であること
・床面積の1/2以上が居住用であること。
・中古住宅の場合は
1. 耐火建築物なら築後25年以内
2. 耐火建築物以外の場合は築後20年以内
3. 1.2に該当しない場合は一定の耐震基準を満たしていること
・生計を位置にする一定の親族から購入したものではないこと
・住宅ローン控除の対象となる借入金(銀行融資)などで、返済期間が10年以上である
・勤務先からの借入金で年利1%以上である
以上8つの要件を満たしている場合には、住宅ローン控除の対象となります。
個人事業主が住宅ローン控除を受けられる金額はどれぐらい?
個人事業主が住宅ローン控除を申請した場合に受けられる金額は、一体どれぐらいあるのでしょうか?
住宅ローン控除の適用金額は、
住宅ローンの年末借入金残高 × 1%
または居住年数ごとに50万円、40万円、30万円のいずれか少ない方と言う風に算出することができます。
3,000万円の住宅ローンを組んだ場合を想定して計算してみましょう。
頭金100万円
12月31日時点での借入金残高 2,900万円
2,900万円x1%=29万円
この年度の住宅ローン控除額は29万円という風に算出できます。購入した住宅が「一般住宅」か、あるいは「優良住宅」かによっても適用金額が異なります。
また、住宅ローン控除や住民税控除がどれぐらい受けられるかは、居住を開始した年度によっても異なります。
平成21年1月1日~平成22年12月31日に居住開始した住宅の場合は、
①年末残高等×1%
②50万円
のいずれか少ない額が住宅ローン控除の対象額となります。
また、住民税の控除額については97,500円となっています。
平成26年4月1日~平成33年12月31日に居住を開始した住宅では、
①年末残高等×1%
②40万円(住宅の取得が消費税率5%だった場合は20万円)
のいずれか少ない額が住宅ローン控除金額となります。
また、この条件の場合は住民税の控除についても別の計算方式を用いて計算します。
①所得税の課税総所得金額等の7%
②136,500円
のいずれか少ない額で住民税を差し引くというルールになっています。
控除される金額はこのように対象となる家屋の居住年数によっても異なってきますので、詳しくは税務署で確認することをおすすめします。
個人事業主が住宅ローン控除申請に必要な書類
住宅ローン控除を申請するには、確定申告書と住宅に関わる登記、および銀行からの融資に関する証書などが必要となります。
住宅ローン控除申請の初回手続きに必要となる書類は以下の通りです。
・確定申告書
・住宅借入金等特別控除額の計算明細書
・住民票
・住宅ローンの残高証明書
・土地・建物の登記事項証明書
・不動産売買契約書または工事請負契約書
・源泉徴収票
住宅ローン控除は、全部で10年間受けられることになっていますが、2年目以降は年末調整で対応してもらえますので、上記の書類は初年度のみの提出となります。
個人事業主でも住宅ローン控除は受けられる!
個人事業主が住宅ローン控除を受ける際の注意点や手続きの方法についてご紹介いたしました。
個人事業主が住宅ローン控除を受けるには、まず確定申告を行うことが大切です。
合計所得金額が3000万円以下であることや、控除対象となる家屋の2分の1以上の床面積が自宅用であることなど、個人事業主だからこそ気をつけなければならないポイントもいくつかありました。
住宅ローン控除が受けられるのは10年間となっており、ローンそのものが10年未満だと、そもそも住宅ローン控除を受けられられないというルールになっています。
また、居住する住宅のタイプや居住開始年度によって、住宅ローン控除の金額や住民税控除の金額の計算は、違っていることも分かりました。
個人事業主でも、必要とされる要件を満たして手続きすれば、必ず住宅ローン控除が受けられます。
そもそも、個人事業主だと住宅ローンそのものを組むことが難しいと考えるかもしれませんが、きちんと確定申告を行っていれば、銀行から融資を受けることは可能です。
今回ご紹介した情報を参考に、ぜひ、住宅ローン控除を申請して経費節減や節税にチャレンジしてみてください!