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元入金とは?仕訳や計算方法を解説!

はじめに

ママワークスコラムをお読みの皆さまは、元入金(もといれきん)という言葉を聞いたことがありますか?おそらく個人事業主についていろいろと調べている方ならば、ご存じかもしれませんが、それ以外の方だとあまりご存じないのではないでしょうか。

ただ、個人事業主に興味があるなら、知っておくべき事柄ではあります。元入金は、決して簡単な内容ではありません。ただ、基本的な考え方を掴むことができれば、「なるほど!そういうことか!!」という内容ではあると思います。

そこで今回は、そんな元入金について、いつものように分かりやすくお伝えしますので、どうぞお付き合いください。

「元入金」とは?

ママワークスコラムをお読みの皆さまは、求人をご覧のうえ、こちらもお読みくださっていると思いますが、求人をご覧の際、掲載企業のどんなところをチェックされていますか?

きっと皆さまなら、企業の情報を全体的に調べていらっしゃるとは思いますが、その中の一つとして、「企業の資本金」を見ている方が多いのではないでしょうか?そしておそらく、資本金は少ないよりも多いほうがいいと判断されていることでしょう。

実際私も求人を見るときは、そのようにして見ています。この始まりだと、「なんで“元入金”のことじゃなくて、“資本金”のことを書いているの!?」と指摘されそうですが、元入金とは、個人事業主にとっては、企業の資本金に当たるものになるからです。

例えば、個人事業主として、ネットで手作りジャムを販売すると仮定します。その際、必ず必要最低限、揃えなければならないものってありますよね?

まずは「パソコン」。そして販売するための「ジャム・瓶」。あと配送するための「包装」やジャムをストックするための「場所」など、少し挙げるだけでも、こんなにさまざまなものが必要となります。

そして、それらのものを揃えるためには、それらを購入するためのお金が必ず必要になりますよね?その「購入するためのお金」が元入金になるわけです。

では「元入金は資本金に当たる」と言いましたが、資本金と元入金の違いは何でしょうか?

 

・元入金の定義

「元入金」とは、「もといれきん」と読み、賃貸対照表で使う勘定科目のひとつです。
法人で言う「資本金」にあたるもので、個人事業主にのみ使用されます。
物を販売する、Webサイトの制作を請け負うなどといった事業を始める際、その商品やパソコンなど最初に揃えなくてはいけないものがありますが、それらを準備するには元手が必要です。
元入金とは、その元手のことを指す勘定科目です。
なお、個人事業主の場合、事業で必要になったものを購入したりするのに、自分のお財布から出すことも珍しくありません。
そのため、法人の資本金は基本的に変わりませんが、元入金は毎年変動するという特徴があります。

「元入金」と「資本金」の違いとは?

例えば、就職活動を行うにあたり、履歴書はもちろん、職務経歴書も作成しなければなりません。その際、今までの勤務先の情報を調べることと思います。そのとき、今までの勤務先の資本金は、必ず職務経歴書に記載していることでしょう。

その際、あまり気にしていないかもしれませんが、企業の資本金はめったに変わるものではないことにお気付きでしたか?実は資本金を変えようとする場合、正式な手続きをしなければ変えることができないのです。逆に言えば、世間の資本金に対する信頼が厚いのは、そのためだとも言えるでしょう。

一方元入金は、金額が毎年変わります。それは、そもそも元入金とは、「個人事業主が事業を立ち上げるために準備した開業資金であると同時に、個人の財産なのでプライベートで使用する場合もある」ものだからです。

こちらも例を挙げて説明すると、在宅WEBライターは自分が書いた記事の校閲を行いますが、その際、紙で出力してチェックするとします。

例えば、コピー用紙を「プライベート用」と「事業用」で分けて購入しているとしても、コピー用紙が足りなくなったときは、おそらく「プライベート用」の用紙を「事業用」として、使っていることでしょう。

このように個人で事業を行っている性質上、完全にプライベートと仕事を分けることは非常に難しいと思います。

しかも、自分のお金を元入金として扱っている以上、緊急事態が生じた場合、事業用あるいはプライベートから貸し出しを行うのは、ある種当たり前のことではないでしょうか。

ちなみに資本金は、事業主の個人の財産だけではなく、株主からの開業資金も含まれます。つまり、人様の財産も含まれているわけですから、資本金を変える場合は、正式な手続きを踏まなければならないのは当然のことだと言えるでしょう。

元入金の計算方法

翌期首の元入金の計算は以下の方法で行います。

 

【翌期首の元入金 = 前期末の元入金 + 所得 + 事業主借- 事業主貸】

 

所得というのは青色申告特別控除前の所得金額、当座の損益のことです。

 

事業主借とは、事業以外からの入金です。
個人事業主が家計からお金を出して事業に貸すといったケースですが、反対に事業資金の立場から考え、「事業主がお金を借りている=事業主借」と理解すると覚えやすいです。
さきほどの具体例で言うと、コピー用紙が足りなくなったからプライベート用のコピー用紙を使うといったケースが当てはまります。

 

では、事業主貸はどういうことなのか、なんとなく意味が分かるでしょうか。
「事業主が貸す」わけですから、事業のお金を貸す、たとえば、事業資金を生活費として使うといったケースで使用します。

 

なお、決算を行う際、事前に事業主借と事業主貸を相殺します。
決済時に、事業主貸のほうが事業主借よりも多い場合、元入金は当然減ることになります。
逆に、事業主借のほうが事業主貸よりも多い場合、元入金はその差額分だけ増えることになります。

 

元入金の仕訳方法

元入金というのは、個人事業の元手となる資金のことであり、普段使うことはありません。
事業開始時に準備した現金を仕分けしたら、期中は事業主借、事業主貸という勘定科目を使用していきます。
また、開業する際も、元入金という勘定科目を使わず、事業主借という勘定科目で仕分けすることも可能です。
なお、会計ソフトを使用する場合、最初に元入金を入力すれば、翌期の元入金も自動的に計算をしてくれます。

・個人事業の開業時

個人事業を始める際に元手を用意したのであれば、元入金(または事業主借でも可)を使用して処理します。
たとえば、開業時に10万円の資金を用意した場合、借方に「普通預金 100,000」、貸方には「元入金 100,000」と入れて処理します。

・事業主貸が事業主借より多い場合

事業主貸が事業主借より多い場合は、元入金が減ることになるということは前項で説明しましたが、たとえば、決算時に事業主貸が80万円で、事業主借が50万円だった場合は借方に「事業主借 500,000」と、相殺した「元入金 300,000」、貸方に「事業主貸 800,000」といったふうに仕分けします。

 

 

・事業主借が事業主貸より多い場合

事業主借が事業主貸より多い場合も、逆のときと同じように、差額を相殺することとになります。
たとえば決算時に事業主借の残高が50万円で、事業主貸が30万円だったとします。
その場合、借方に事業主借の50万円を入れ、貸方には事業主貸の30万円と元入金20万円というふうに仕分けします。

 

 

 

元入金の特徴について

上記の通り、元入金とは「毎年変動するもの」であり、その理由の一つとして、「そもそも元入金は個人の財産を事業費として扱っているから、プライベートで使う場合もあるため」とご紹介しました。

ところで、元入金は毎年変動するその他の理由は何でしょうか?それは、事業を行っている以上、当たり前のことではありますが、「“利益を得ることができたか、できなかったか”によって変動するため」です。

では、次期の元入金の額を知るにはどうすればいいのでしょうか?それはある計算方法により、判明させることができます。

その計算方法ですが、「元入金+所得+事業主借-事業主貸=次の元入金」になります。

ところで、ここで初めて、「事業主借」と「事業主貸」という言葉が出てきました。おそらくこちらの言葉も、あまり馴染みのない言葉ではないでしょうか?

また、この「事業主借」と「事業主貸」の考え方こそ、元入金を理解するのに非常に大切なポイントなのです!そこで次に「事業主借」についてお伝えします。

「事業主借」ってなに?

まず「事業主借」という言葉の意味ですが、「事業主」とはその言葉の通り、「事業を行っている本人」になります。

ということは、「事業主借」とは、「事業を行っている本人が、自分自身に借りているお金」ということになるのです。本人が本人からお金を借りているなんて、ちょっと変な感じがしますよね?でもこれこそが、個人事業主特有の勘定科目であると同時に、元入金を理解するのに必要な考え方となります。

ただ、ちょっと頭の中が「???」という感じになってしまいそうなので、ここでは分かりやすい事例をあげてみたいと思います。例えば、WEBライターを個人事業主で始めたとしましょう。

取引先の中には請求書を郵送で送ってくるようにと指定するところもあると思います。その際、宛先は万年筆を使って手書きで書いているとしましょう。出先でちょうど、インクがなくなってしまったことを思い出しました。

しかし、あいにく事業用のお金を持ち合わせておらず、自分のポケットマネーでインクを買った場合、これが「事業主借」となります。

つまり、「自分の事業で必要なものを購入するためのお金を、プライベートの自分が事業主の自分に貸してあげること」が「事業主借」となるのです。

聞いているだけでもややこしい話ですが、もし「事業主借」をした場合は、「いつ・何を・何のために借りたのか」はきちんと把握しておきましょう。そうしなければ、あとで確定申告の準備のための振り返りで、かなりの混乱をきたすことになります。

では次に、「事業主貸」についてご紹介します。

「事業主貸」ってなに?

もしかすると先ほどの「事業主借」の説明から、「事業主貸」の意味が想像できるかもしれませんが、「事業主貸」とは、「事業主である自分が、プライベートの自分にお金を貸してあげること」になります。

もともとが自分のお金なのに変な感じですが、個人事業主になるなら、この考え方を身に付けることは、結構大事なことかもしれません。では「事業主借」同様に、「事業主貸」について例を挙げて分かりやすく説明したいと思います。

プライベートの自分が、友人の結婚式に招待されました。お祝い金を用意しなければならないのですが、まとまったお金をすぐに用意することが難しく、プライベートの口座には残高が生活費ほどしかありません。

そんなとき、事業用の自分のお金から、お祝い金を借りるのが「事業主貸」となります。もともとが自分のお金ではありますが、あくまでも事業用のお金であるので、こちらも「いつ・何を・何のために借りたのか」は把握する必要があると言えるでしょう。

ここまでで、「事業主借」と「事業主貸」がご理解いただけたと思います。そこで次に、先ほどご紹介した計算式より、なぜ「元入金は毎年変わるのか?」について、もう少し具体的にご紹介します。

元入金は毎年変わるって本当!?

個人事業主はあくまでも個人で経営しているため、資金は自分のお金で対応します。また自分のお金である以上、急な出費の際はその資金から使うのは当然のことでしょう。

では、既述の元入金と資本金の大きな違いの一つである「企業の資本金のような元入金が、資本金とは異なり毎年変わるのか?」についてですが、こちらも事例を挙げて説明していきます。

まず先ほどの計算式「元入金+所得+事業主借-事業主貸=次の元入金」に当てはめてみましょう。(数字は理解しやすいようにわざと低い金額で設定しています)元入金を2,000円、所得を500円、事業主借1,000円、事業主貸を500円とします。

すると式は次のようになります。「2,000+500+1000-500=3,000」です。つまり今期の元入金が2,000円だったのに対し、次期の元入金は3,000円となり、今期の経営は順調だったということになります。

そしてこちらをご覧いただいて、お気づきになられた方がいらっしゃるかもしれませんが、この元入金は、所得によって変わるのはもちろんですが、事業主貸、つまりプライベートでお金を使ってしまうと結構影響を受けるのです。

その結果、元入金がマイナスになってしまう事態も十分に考えられます。一般的な考え方の場合、資本金に当たる元入金がマイナスになるのは、良くないことのように思いますが、やはり元入金がマイナスになるのはいけないことなのでしょうか?

元入金はマイナスになっても大丈夫!?

何ごとにおいても「マイナス」という言葉は、あまりいい響きのものではありませんよね?特にお金に関することになれば、なおさらのことでしょう。

先ほども軽く指摘をしましたが、元入金の特徴がそもそも「個人事業主本人のお金である」ということもあり、ついうっかり事業用のお金をプライベートで多めに使ってしまうと、元入金がマイナスになる可能性があります。

また儲けが少なければ、事業主貸が少なくても(プライベートで散財しなくても)元入金はマイナスになる可能性もあるでしょう。ただ、元入金は事業用とは言え、そもそも個人のお金ですから、生活費としてどうしても必要になった場合は、その資金を使ってしまう傾向があるのは仕方がないでしょう。

ですから、厳密には元入金がマイナスになるのは、しようがないというのが、多くの個人事業主およびそれに関わる方々の考え方のようです。

とは言え、例えば、マイホームを購入する際、多くの方が銀行からお金を借りると思いますが、それは個人事業主も同じで、事業を開始する際、足りない資金は銀行から借りると思います。

そのとき元入金がマイナスで、事業主貸が多いと、銀行側は「銀行が貸しているお金を事業資金ではなく、生活費に充てているのかな?」と考え、貸し渋りまではいかなくとも、心証が悪くなってしまう可能性は否めないでしょう。

ですから、可能な限りマイナスは出さないように努力したほうがいいと思います。

ここまで読み進めていただくと、「なんだか元入金って、自分のお金なのに、お金を“貸した”とか“借りた”とか面倒くさいな」と思われた方がいるかもしれません。しかし、個人事業主になることを目指すなら、元入金は用意しておいたほうがいいと思います。

そこで次に、元入金があった方がいい理由をご紹介します。

元入金はあったほうがいい?なくても大丈夫?

そのままズバリ!な答えですが、元入金はあったほうがいいと思います。

例えば、個人事業主として在宅WEBライターになる場合、極論、パソコンとプリンターさえあれば、何とか事業を始められます。つまり、開業資金はそれほどなくてもすぐに始められるのです。

「じゃあ、わざわざ元入金なんてお金をためる必要はないんじゃない?」と思われそうですが、決してそういう訳ではありません。なぜならば、青色申告で最大65万円の青色申告特別控除を受けるためには、まず複式簿記による帳簿付けを行ってから、帳簿をもとに貸借対照表を作成しなければ受理されないからです。

ここでまた、「複式簿記」「貸借対照表」という新たなキーワードが登場しました。「貸借対照表」は次にお伝えするとして、まず「複式簿記」のご説明をしたいと思います。

「複式簿記」の対義語として「単式簿記」という言葉があります。この「単式簿記」とは、分かりやすく説明すれば、「お小遣い帳」を想像していただくのが一番いいかもしれません。

例えばお小遣い帳、「お金が1,000円あって、そこから200円の文房具を買った場合、1,000-200=800円の残金がある」となりますよね?この考え方が「単式簿記」になります。

つまり、「お金を使ったから減った」のような一方向のお金の流れが記されているものが単式簿記なのです。

その同じ内容を対義語の「複式簿記」の考え方に当てはめると、「1,000円お金があった。200円の文房具を買うと、200円分のお金は減った代わりに、200円分の文房具という資産が増えた」となります。

つまり、一つの事柄に対し、「増えた理由」と「減った理由」の二面に分けて表す表記法が「複式簿記」になるのです。

またこの二つに分けての表記は、「貸借対照表」でも用いられているのですが、「貸借対照表」と「元入金」にはどんな関係があるのでしょうか?

「貸借対照表」と「元入金」の関係について

まず、「貸借対照表」とは何かといえば、確定申告(青色申告)で提出する書類の一つになります。

つまり、「貸借対照表」を作成しなければ、青色申告をすることができず、青色申告をすることができなければ、65万円の控除を受けることができません。ですから、「貸借対照表」は絶対に抑えるべきものになります。

貸借対照表とはその名称通り、「貸した(貸)ほうと借りた(貸)ほうの合計は、一致する(対照)表」が大きな特徴になります。しかし、元入金がなければ、貸したものと借りたものを対照にする貸借対照表を作ることができません。

以上より、元入金は、貸借対照表を作るために必ず必要なものであると言えるでしょう。

おわりに

いかがですか?「元入金」とか「事業主貸」や「事業主借」、「貸借対照表」などの言葉を見ると、思わず「あ…」と身構えてしまう方が多いかもしれません。

しかし、一つひとつ紐解いていけば、それほど難しいことではないとお分かりいただけたことと思います。

個人事業主として頑張ろうと思っていらっしゃる皆さん、難しい言葉を見てもたじろぐことなく、ぜひ夢に向かって進んでいってくださいね!

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