法定調書と法定調書合計表について徹底解説!「なぜ」「誰が」提出するの?
はじめに
突然ですが、皆さんは「法定調書」や「法定調書合計表」という言葉を聞いたことはありますか?
確定申告などに詳しい方でしたらご存じではあるかと思うのですが、正直私は知りませんでした。私のように知らない方達もわかるよう、これから「法定調書」と「法定調書合計表」についてお話していこうと思います。
【最初に法定調書を知りましょう!】
まず、法定調書についてお話しします。この言葉だけを見ると法定調書という1枚の紙面があるのかというイメージがありますが、実はこれは1種類の書類ではないようなのです。実はこの法定調書というのは【所得税法や相続税法上などに提出することが定められている資料】のことなので、所得税法・相続税法に関するすべての書類が「法定調書」として成り立つと言うことになります。この法定調書の提出は義務付けられており、提出先である税務署に提出しなくてはいけないという資料なのです。
もっとわかりやすく言い換えますと、税務署はお金の支払があった場合、その事実を届出させることでお金の動きを把握します。つまり、お金の動きを把握するために提出させる資料=法定調書ということになのです。法定調書として使用される資料の例として支払調書、源泉徴収票を含む全59種類あると言われています。
次は法定調書合計表の番です!
【では法定調書合計表とは何でしょう?】
先程説明した全59種類の法定調書の内、作成した法定調書をすべて種類ごとに集計して記載する表のことを「法定調書合計表」と呼んでいます。そしてこの作成した法定調書合計表は法定調書と一緒に税務署に提出する義務があります。ここで、法定調書合計表に記載する主な内容をご紹介します。
①給与所得の源泉徴収表合計表
給与・賃金・賞与など給与所得に該当する支払いに場合、その人に対して1年間に支払う給与総額、源泉徴収税額、社会保険控除などの所得控除に関する情報などを記載する
②退職所得の源泉徴収票合計表
退職金など、退職所得に該当する支払いをする場合、その人に対して支給した退職手当等の金額・退職所得控除額(在職年数に応じた控除がある)などを記載する
③報酬・料金・契約金及び賞金の支払調書合計表
原稿料・講演料・弁護士報酬・税理士報酬など、源泉徴収の対象となる報酬・金額を支払う場合、その人に対して支給した1年間の報酬等の総額や源泉徴収税額などを記載
④不動産の使用料等の支払調書
不動産などの賃借料を支払った場合に作成する。家賃・地代・権利金・更新料などが該当します。船舶(総トン数20トン以上)や航空機の借受けもここに含まれるのはちょっと意外ですがここに該当しているのです。
⑤不動産等の譲受の対価支払調書
不動産などを譲り受けた場合に作成するものになります。この時に譲受に当たって斡旋手数料を支払った場合は、「斡旋をした者」の欄に記載すると次にお話しする「斡旋手数料の支払調書」の提出を省くことができます。
※こちらを提出する必要があるのは、法人・一定の不動産業者である個人に限られています。
⑥不動産等の売買又は貸付の斡旋手数料の支払調書
不動産等の売買や貸付の斡旋手数料を支払った場合に作成します。上記の⑤の「斡旋した者」欄に記載することで⑥の提出を省くことができます。
※こちらを提出する必要があるのは、法人・一定の不動産業者である個人に限られています。
このうち①・②・③の3項目は記入が必要とされています。
④に関しましてなのですが、
「不動産の貸主が個人で、賃料が年間15万円を超えた場合」
「貸主が法人の時、更新料が年間15万円を超えた場合」
この二つに該当している場合は提出する必要性が出てきますので、提出忘れがないように気をつけてください。
どうして提出しなくてはいけないのか?
そもそも、法定調書や法定調書合計表は何のために提出しているのかがわからない!という人もいると思いますが、この法定調書や法定調書合計表、実はすごく大切な役割を持っているのです。
ここからは例えとしてのお話になります。
■A社がBさんに100万円の報酬を支払う。
■A社はBさんに100万円の報酬を支払ったとする支払調書を税務署に提出する。
■Bさんが100万円の事業所得が発生したと確定申告をする。
ここまでが普通の確定申告の流れですが、ここで問題が発生します。
もし、Bさんが確定申告をしない・50万円しか事業所得を得ていないとして確定申告をした場合、A社が提出した支払調書の内容と一致しないのはわかりますよね?つまり、どちらかが間違っているということになります。この間違いを確認するために税務署は「お尋ね」の問い合わせの文章を送付するか税務調査をして確認をします。つまり、支払調書(法定調書)があったおかげでBさんの脱税を防いだということになります。
このように脱税などの不正行為を見逃さない為にも、法定調書や法定調書合計表はとても重要な役割であり、提出しなくてはいけないものだということが理解できるかと思います。
どんな人が提出しなくてはいけないのか?
ではどのような人たちに対して提出義務があるのでしょうか?順を追ってお話していきます。
■給与所得の源泉徴収票
こちらを提出するのは給与を支払う会社や事業主が対象となります。しかし、年末調整を行っていて税務署に提出しなければいけないのは下記の場合になります。
◇役員…150万円を超えて支払われた給与等
◇弁護士・司法書士・税理士…250万円を超えて支払われた給与等
◇その他…500万円を超えて支払らわれた給与等
■報酬・料金・契約金及び賞金の支払調書
フリーランスの方などは原稿料や作業に対する報酬を受け取ることも多いと思います。これに対する提出義務者は外交員報酬・税理士報酬などの報酬・料金・契約金及び賞金の支払いをする人となります。例として
◇外交員、集金人…合計金額が50万円を超えて支払われた報酬・料金
◇馬主…75万円を超えて支払われた饗場の賞金がある年のすべての支払額
◇プロ野球選手…合計5万円を超えて支払われた報酬や契約金
◇弁護士…合計5万円を超えて支払われた報酬や原稿料
◇社会保険診療報酬支払基金を支払う診療報酬…1人に合計50万円を超えて支払われた診療報酬
という例があります。不明な点や疑問がある場合は税務署に確認してみると良いでしょう。
また、これらには確定申告同様提出期限があります。原則として翌年1月31日がこれらの法定調書の提出期限とされています。つまり、平成29年のいずれかの日に支払いがされたのならば、平成30年1月31日までに税務署に提出しなければいけません。またその際「給与所得の源泉徴収等の法定調書合計表」と一緒に提出します。確定申告の期限とは異なりますので、提出の際には気をつけてくださいね。
マイナンバーで注意しなくてはいけないことがあります
これらの法定調書を提出するには提出する人・法人である自分のマイナンバー・法人番号、支払先のマイナンバーか法人番号を記載する必要があります。支払先が個人の場合、マイナンバーの提供を受ける時には本人確認の為に番号確認と身元確認を行わなくてはなりません。法人の場合は国税庁の法人番号公表サイトでも確認することができます。
ここで一番気をつけていただきたいことが、法定調書はマイナンバーを記載するのは税務署へ提出する分だけで良いということです。特に給与所得や退職所得の源泉徴収票は本人に交付する義務がありますが、本人交付用であってもマイナンバーは記載しないことに注意が必要なのです。
また、法定調書によって不動産の貸主などマイナンバーが取得しづらいケースもあり、そのような場合でも少なくともマイナンバーの提供は義務であることを相手に伝え、それでも集まらない場合はその旨を記録に残すようにしておきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?いろいろな種類の法定調書と法定調書合計表などがありましたが、自分にとってどれが該当する法定調書なのかをきちんと理解しておけば準備や作成に戸惑うことなく作成・用意ができると思います。期日があるものですので、余裕を持って計画的に準備していくようにしましょうね。
参照元
■法定調書とは?知っておきたい法定調書の基礎知識
■法定調書合計表ってなに?|スモビバ!
■年末調整の法定調書合計表・支払調書の書き方|クラウド会計ソフトfree