副業で経費は計上できる?確定申告における雑所得の計上手順や条件を解説
副業を始めたけど確定申告の経費はどうしたらいい?
2018年働き方改革の施行により、サラリーマンとして働いている方でも自由に副業できるようになりました。
本業の仕事が忙しく、なかなか副業できる余裕がない方も多いかもしれませんが、土日祝日などを利用して気軽にお小遣い稼ぎを始める人が増えています。
また、主婦のかたわらポイントをためる「ポイ活」をする人やクラウドソーシングサイトでライター業務を行う人など、副業を行うスタイルも多様化しています。
副業収入がある人で、ある一定以上の報酬を得ている場合は、確定申告をしなければなりません。
確定申告手続きでは、副業収入を得るために使った経費を売上がら差し引くことが可能です。
今回は、副業を始めた方が確定申告をしなければならないのは、収入がいくらになってからなのか?また、その際に計上する経費にはどんなものがあるのか?
副業の種類や収入内容別に、経費として計上できるものについて詳しく解説します。
そもそも「副業」とは何なのか
そもそも副業とは?
副業とは、本業とは別に行っている仕事自体や収入を得る行為のことを指します。
サイドビジネスといった呼び方をする方もいますし、本業に対して従事している時間や収入差が少ない場合はダブルワークや複業と呼ぶ方もいます。
いずれも明確な定義があるわけではありませんが、収入を得る手段が2つ以上ある場合が副業と判断されることが一般的です。
ちなみに、会社員としてもらっている給料は、所得法上でいう「給与所得」となります。所得の種類は給与のほかにも、利子所得や一時所得など全部で10種類あり、それぞれ控除や計算方法など細かい決まりがあります。
では「副業による収入はどれに当てはまるのか?」というと、その副業がマンション経営によるものであれば「不動産所得」になりますし、事業経営をしていれば「事業所得」になったりと、その内容によって変わりますが、「雑所得」に分類するケースがほとんどです。
ただし、飲食店でのアルバイト等で給与をもらっているという場合は、本業と同じく給料所得に当てはまります。
確定申告の際に副業と判断されるものはどんなもの?
確定申告の際に、副業と判断される所得には、どんなものがあるのでしょうか?まずは、所得税法で定められている所得の種類から説明してみます。
所得税法に定められている所得の種類には、以下のようなものがあります。
・利子所得
・配当所得
・不動産所得
・事業所得
・給与所得
・退職所得
・山林所得
・譲渡所得
・一時所得
・雑所得
10に分類された所得のうち、上記の9つのどれにも含まれないものを「雑所得」に分類します。
サラリーマンやパートアルバイトの方が会社から受け取る給与は「給与所得」そして、それ以外の方法で得た所得のうち、不動産運営から得たものは「不動産所得」、FX投資などで得た副業収入などは「雑所得」などに分類して確定申告を行います。
同じ副業でも、アルバイトの場合は「給与所得」になり、プログラマーとしてクラウドソーシングなどで収入を得ていれば「事業所得」として確定申告することになります。
つまり、自分が行っている副業の種類に応じて、課税される所得が変わるため、経費として計上できる部分や受けられる控除などが違ってくるということです。
まずは、自分の行っている副業が、どの所得区分になるのかということを理解してから、確定申告手続きに臨みましょう。
経費に「なるもの」「ならないもの」
経費としてあげられるもの、経費にあげられないもの
経費としてあげられるものは、副業の種類によって変わってきます。
代表的な副業ではどのようなものを経費としてあげられるのか解説していきます。
▽経費が認められるのは「不動産所得」「事業所得」「雑所得」の3つ
そもそも、所得の種類により経費が認められているものと、そうでないものがあります。
経費が認められているのは以下の3つの所得です。
・「不動産所得」
・「事業所得」
・「雑所得」
たとえば、事業を運営するにあたり事務所を賃貸するとします。その賃貸料は収入から経費として引けるということです。
ものを販売する場合は、その商品を仕入れる必要があるため、売上げがそのまま所得となるわけではありませんよね。当然、売上げから仕入や梱包にかかった費用などを経費として引けることになるのです。
「給与所得には経費はきかないの?サラリーマンに必要なスーツやバッグなどは経費で落とせないの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
たしかに、これらの費用は必要経費とも考えられますが、もともとサラリーマンの場合は給与所得控除が受けられるはずです。それがサラリーマンにとって、「経費をひく」ことになるので、別途給与から経費として引くことができないというわけです。給与所得控除の範囲を超える場合に適用される「特定支出控除の特例」という制度もありますが、本記事とは趣旨が異なるので割愛させていただきます。
▽まずは「完全に経費扱いとなるもの」、「完全に経費にできないもの」を知ろう
副業をする方に心して知っておいて欲しいのは、「完全に経費扱いとなるものは経費としてあげるべき」ということです。
経費として計上しないと無駄に所得税を支払うこととなり、損することとなります。
たとえば、先ほどの例で挙げたように、ものを販売するときにかかった「仕入れ値」が完全に経費にあたります。
逆に、生きていく上で必要な食料品は仕事とは関係ないので経費にはできません。
なにが経費扱いになるかを知ることが副業の経費を考えるうえでの最初にステップです。
そこで、完全に経費扱いとなるものを所得別に紹介するので、参考にしてください。
ざっと見ても、難しいものはないと思います。
いずれも仕事に使うものばかりなので、迷うことなく完全に経費にすることができるはずです。
もし迷うことがあれば、「もし副業をしていなくても支払いが発生していたか」と考えてみましょう。答えがNOであれば経費として考えることができます。
▽プライベート・仕事、どちらにも私用しているものは割合を考える
次のステップとして必要なのが、プライベートと仕事と、いずれにも使用しているものについては、その割合を考えることです。
たとえば、自宅を事務所に使用している場合、自宅の家賃を全部経費にあげることはできないからです。
面積にしたとき、4分の1にあたるスペース(部屋)を事務所として使用している場合は、家賃の4分の1を経費にあげることが一般的です。
こういった考え方を「家事按分」と言います。
ほかにも、携帯電話などは使用時間で、自家用車の場合は、仕事に使用した走行距離などで家事按分を出すことができます。
なかには、按分を出すことが難しいものもあるでしょう。
しかし、使用時間や使用割合などを1度はしっかりと記録することで平均的なものを出しておき、実際に近い形で経費としてあげることが望ましいです。
多少変動があったり、電気代などは難しい面もあると思いますが、もし税務署に質問された場合、それぞれどのような根拠を元に出したのか、示せるようにしておくようにしましょう。
経費の証拠書類は5年間の保存が必要
経費として計上する場合、その経費に関する証拠書類は5年間保存することが必要です。
証拠書類とはレシートや領収書といったもので、支払った金額はもちろん、日付などがきちんと書かれている必要があります。
分かりやすいよう月ごとに整理しておくと良いでしょう。
ちなみに、複数の買い物をしていて、経費になるものとならないものとが混在している場合、経費になるものに線を引いたりチェックを入れるなど工夫することもおすすめです。
また、光熱費やガソリン代など家事按分があるものに関しては、%を記入しておくと分かりやすくなります。
副業の経費を計上するタイミングとは?
経費とできるかどうか、そして証拠書類の適切な保存方法についてはお分かりいただけたかと思います。
次は、いつその経費を計上するべきなのか、タイミングについて説明していきます。
▽経費は発生時に計上しよう
「経費は支払いが行われたときに計上すれば良い」と思っている方が多いですが、実際は経費が発生したタイミングで計上することが正しいです。
たとえば、仕事に使用するパソコンを8万円という金額でクレジットカード購入したとしましょう。
その場合、クレジットカードの引落し日ではなく、購入したタイミングであらかじめ計上しておきます。10万円以下のパソコンであれば消耗品費または事務用品費とすることが一般的ですから、購入日の日付で、借方に消耗品費、貸方に未払金とそれぞれ8万円を計上することになります。
▽計上し忘れた場合
発生したタイミングで計上を忘れてしまった場合、どのようにすれば良いでしょうか。
年度内の場合や、翌年になってしまっていてもまだその年の確定申告がまだ終わってないのであれば、通常の申告手続きで計上することができます。
一方で既に確定申告が終わっていた場合は、「更正の請求」といった形で手続きを行うことになります。
更正の請求とは、修正した結果納付する所得税が減額される場合に行う修正手続きです。似たような言葉で修正申告というものがありますが、こちらは所得税が増える場合に行う手続きのことです。
なお、すでに所得税を納めていた場合、差額の還付といった形で受け取ることができます。
参考: 国税庁【申告が間違っていた場合】
副業で確定申告が必要となるのはどんな時?
サラリーマンとしての本業の他に、副業収入がある人が、すべて確定申告を行う必要があるわけでありません。
一般的に、会社員として勤めている方が、ブログ運営や株式投資などの副業で収入を得る場合、経費を差し引いた後の所得が20万円以下になる場合は、確定申告の必要はありません。
しかしながら、副業としてどこかに勤める「パートタイム勤務」を行った場合は、その収入が「給与所得」となりますので、年20万円以下だったとしても、確定申告が必要です。
というのも、給与所得については、合算して確定申告するという決まりがあり、1社からの年末調整だけでは、すべての所得を計上していることになりません。
例えば、月曜~金曜まではサラリーマンとしてプログラマーをやっている人が、週1回(月4回)プログラミングスクールの講師を担当した場合、このアルバイト給与が20万円以下だったとしても、確定申告しなければならないということです。
本業も副業も「給与所得」をもらったら、金額の大小に関わらず、合算して確定申告しなければなりませんので、ご注意ください。
では、クラウドソーシングやアルバイトの他に、個人投資などいくつかの副業を掛け持ちしている場合はどうでしょうか?
この場合も、本業以外のすべての副業を合算して経費を引いたあと、すべての副業所得合計が20万円以下になれば、確定申告の必要はありません。
アルバイトの年間収入が5万円、クラウドソーシングの収入が20万円あった場合、クラウドソーシングの経費が10万円あれば、
5万円(アルバイト)+20万円(クラウドソーシング)ー10万円(経費)=15万円
となり、確定申告は必要ありません。
ただし、このように経費を計上する場合は、必ず帳簿記録とレシートを保管しておかなければなりません。
後々、クラウドソーシングの収入などが増えた場合、過去の収入についても精査される可能性が出てきます。その際、証明できるレシートや帳簿を保管していないと、税金を滞納していたという風に扱われて課税されるリスクもあります。
帳簿の保管は、7年間と定められていますので、20万円を越えなかった場合でも、必ず証拠となるレシート類は残しておきましょう。
副業の確定申告はどのように行うの?
会社員で副業をしている方は、年間所得が20万円以上になった場合は、確定申告が必要だということが分かりました。
確定申告には、青色申告と白色申告があり、それぞれ受けられる控除の金額が違っています。副業の確定申告を行う場合には、できれば、控除額の大きい青色申告で確定申告をするのがおすすめです。
しかしながら、青色申告で確定申告するためには、管轄の税務署への事前の届け出と複式簿記による帳簿の作成などが義務付けられています。
そのため、初めての副業で確定申告を行う場合は、事業所得なら白色申告、それ以外に雑所得として申告するというケースが考えられます。
FX投資やメルカリなどでの転売利益などは、事業所得として計上しようとしても、雑所得に分類される場合もありますので、分からない場合は管轄の税務署で確認してください。
<副業でアルバイトをした場合の確定申告>
続いては、会社員がパート・アルバイトなどの副業で給与所得を受け取った場合は、本業の年末調整は会社が行います。副業の分については、あらかじめ差し引かれている源泉徴収額を本業で行われた年末調整額と合算し、あらためて所得税をすべての所得から差し引くという形になります。
年末調整の時期になると、本業とアルバイトの両方の源泉徴収票をもらうことになります。確定申告書Aの第一表、第二表に必要事項を記入して、申告することになります。
この際、所得に応じて税率が決まりますので、決まった税額を計上すると、差額が発生します。不足分あるいは、余分に納めた税金を還付してもらえる可能性もあります。
■アルバイト給与所得の確定申告方法
1.本業とアルバイトの両方の源泉徴収票を入手する。
2.確定申告書A第二表に、給与額、源泉徴収額、事業所名など必要事項を記入する
3.国民健康保険料や厚生年金保険料など、控除対象となる社会保険料を差し引く。
・納付した源泉徴収額の総額を計算し、本業・アルバイトの給与額を合算して確定申告書A第一表の給与欄に記入する。
・合計金額に所定の税率をかけて納税金額を算出。
・確定申告書A第一表に、社会保険料、生命保険料、源泉徴収総額を記入する。
・最終的な税金を計算し、納付済の源泉徴収総額との差額を計算する
パートアルバイトの源泉徴収は、金額が大きい場合が多いので、確定申告すると還付金が戻ってくる可能性が高いです。
確定申告を行って、納めすぎた税金を払い戻してもらいましょう。
<クラウドソーシングで副業している場合の確定申告>
次に、サラリーマンの方がクラウドソーシングなどで副業した場合の確定申告方法について見ていきましょう。
例えば、クラウドソーシングサイトでプログラマーとして副業収入を得た場合には、年間所得が20万円以上になったら確定申告が必要です。
パート・アルバイトの副業とは異なり、クラウドソーシングサイトで復業している場合は、経費を計上することが可能です。
請求書、納品書、支払い明細、そして支払い調書のような書類を準備します。確定申告書A第二表の給与額欄にすべての収入を記録していきますが、書き切れなくなった場合には「所得の内訳書」を別途準備してください。
確定申告の書類には、所得、社会保険料、生命保険料などを記載して、そこから経費を差し引いたものが副業所得となります。
例えば、商品開発のために新しいプログラミング言語を学んだ場合は、その勉強にかかった書籍代やセミナーなどの受講料なども経費として計上することが可能です。
パートアルバイトと違って、この経費を計上できるという点が、確定申告手続きでの違いです。
経費として計上するものは、すべて領収書やレシートが必要ですので、必ず保管するようにしてください。
ついでながら、FXや株式投資の場合は、確定申告書Bへの記入も必要です。
雑所得、譲渡所得などの金額計算明細書jの準備など、他の副業所得とは計算方法や提出書類が異なります。
プログラマーとして復業した場合は、本業のサラリーマンの年末調整で確定している所得・税金に加えて、副業で得た収入と源泉徴収額を記入します。
最後に、総所得から所定の税率をかけて納税額が確定します。
<複数の副業を平行して行っている場合>
複数の副業を平行して行っている場合は、それぞれの副業所得を本業のサラリーマンの所得に合算する必要があります。
本業と副業の源泉徴収票、クラウドソーシングの支払い調書、そして雑所得の金額明細書などが必要です。
提出する確定申告書類は、確定申告書Aまたは、必要に応じてBも提出することになります。
所得欄・雑所得欄は記入できる項目が限られていますので、複数の副業を掛け持ちしている場合は、所得の内訳書を合わせて提出する必要があります。
<確定申告の例>
ここまで、会社勤めのサラリーマンが副業を行った場合に、どのように確定申告を行うかについて見てきました。
ここからは、副業所得が20万円を越えて、実際に確定申告を行うと、どのぐらいの税金を納めることになるのかを、事例をあげながら解説していきます。
本業の年収460万円、社会保険料60万円、厚生年金5万円、源泉徴収額11万3500円という設定で算出してみます。
※復興税、及び扶養家族控除などはないものとみなして計算。
【週末にプログラミング講師をして年間120万円稼いだ場合】
月曜から金曜までは本業でサラリーマンの仕事をしながら、週末のみプログラミングスクールの講師として働いた時の年収が120万円だった場合について計算します。
アルバイト講師として年間120万円の給与収入があった場合は、源泉徴収が引かれています。
計算式は以下の通り
1,200,000 (収入)- 650,000(基礎控除) = 550,000円
550,000円x5%(税率)=27,500円
パート・アルバイトなどの場合は、給与所得になりますので、経費が認められていません。
本業の給与収入とアルバイトの収入を合わせて給与所得を計算し、社会保険・厚生年金・基礎控除などを差し引いた金額に所定の税率をかけて計算します。
先に給与所得が確定していますので、支払済の源泉徴収との差額を追加で納めればOKです。
計算式は以下の通り
収入(合計) 4,600,000 + 1,200,000 = 5,800,000円
給与所得 4,100,000円
社会保険料+基礎控除:600,000 + 50,000 + 380,000 = 1,030,000円
課税所得:3,070,000円
所得税:209,500円
支払済源泉徴収:113,500 + 27,500 = 141,000円
不足分:68,500円
上記のケースでは、アルバイトの所得についても基礎控除が差し引かれた状態で源泉徴収されていました。結果敵に、68500円分の所得税を追加で納税するということになります。
確定申告で副業経費を計上するための手順
副業所得が20万円を越えた場合は、どういった副業にせよ確定申告を行わなければなりません。
これまでの計算式をご覧になって分かる通り、経費をできるだけ多く計上した方が、課税対象所得が小さくなり、その分納税額を抑えることができるので節税となります。
アルバイト収入は、経費が認められませんが、それ以外の副業であれば、経費を計上することができますので、手順をしっかりと理解して、正しく経費を計上しましょう。
<計上できるのは所得に関連する経費のみ>
先ほどいくつかの副業事例と確定申告の方法についてお伝えしました。ここでは、経費として計上できるアイテムには、どのようなものがあるのかを、もう少し詳しく確認していきましょう。
確定申告の際、雑所得から経費として差し引けるものは、業務を行う上で必要となったコストのことを指しています。
例えば、クラウドソーシングでライター業を行った場合に、記事を書くのに必要な情報を書籍から得たとします。この場合、購入した書籍代は経費として計上することが可能です。
あるいは、取材を行って記事を執筆した場合は、どうでしょうか?この場合は、移動に使った電車代やガソリン代、高速料金などを経費として計上することができます。
また、パソコンを使用しますので、パソコンの購入代金、インターネットの回線利用料なども経費として計上することが可能です。
しかしながら、在宅で作業している場合は、家賃や光熱費と同じように、ネット回線費用の中に「プライベートで使用している部分」が含まれています。その場合は、経費の家事按分と言って「事業割合」を出すことによって、経費を計上することが可能です。
プライベートとして利用した部分を差し引く必要がありますので、十分ご注意ください。
例えば、副業の業務で使用するパソコンをプライベートでも使用している場合は、経費として認められるのは購入費用の40%と決められています。
また、自宅での家事按分の割合については、実際に業務で使用している面積と1日の作業時間を計算して、どのぐらいの割合を占めるのかを算出して計上します。
購入した書籍や参加したセミナーの費用などは、すべて領収書やレシートを残し、業務との関連性をきちんと説明できる内容にしておく必要があります。
税務調査の対象となった場合に、副業との関連性を明確に証明できない事案については、課税対象となる可能性がありますので、十分ご注意ください。
<雑所得の場合は帳簿管理を5年間は行うこと>
冒頭で、個人事業主が確定申告を行った場合、領収書やクレジットカードの利用明細、帳簿などの書類は、7年間保管が必要とされていました。
雑所得の場合は、確定申告の際にすべて税務署に書類を提出しますので、個人で資料を保管する必要は基本的にありません。
しかしながら、税務署での保管期間は1年のみとなっているため、確定申告の手続き終了後に税務署から資料を返却してもらうことも可能なのです。
例えば、現在は雑所得で確定申告していたとしても、その後に他の事業を開始した場合は、過去の申告記録として手元に資料を持っておいた法が安全です。5年間ぐらいは手元で資料を保管しておき、その後処分する方がよいでしょう。
ライター業務などを定期的に請け負っている場合は、雑所得ではなく事業所得として確定申告の方法が変更になる可能性もあります。
素の場合は、白色申告での確定申告または、青色申告での確定申告が必要です。雑所得では帳簿などは必要ありませんが、白色申告の場合は簡易帳簿、青色申告の場合は複式簿記による帳簿の提出が義務付けられています。
そのため、簡単なお金の流れ(収入と支出)を記録し、経費に関連するレシートをきちんと保管しておくことをおすすめします。
副業でも確定申告で経費を引くことができる
続いては、副業でも確定申告で経費を差し引くことができる場合についてみていきましょう。
例としては、FX投資で年間50万円稼ぐサラリーマンを挙げてみます。
【FXで年間50万稼ぐサラリーマンの場合】
FX投資で利益を得た場合は、先物取引扱いになるため、雑所得に分類されます。FXで得た利益に対しては一律20.315%の所得税がかかることが所得税法で定められて居ます。
この場合は、本業の所得税と合わせて分離課税分(=FX利益にかかる所得税)を納税する義務が発生します。
本業の所得税については年末調整で納付済みですので、FX利益の分のみ確定申告で追加して納税するという形になります。
副業アルバイトと違って、FX取引にかかった経費は確定申告の際に計上することが可能です。例えば、FXで勝つための書籍の購読や、取引に使うパソコンなどの購入費、さらに、インターネットの接続料やセミナーの参加費用などもすべて経費として計上することが可能です。
分離課税として計上しなければなりませんので、FX投資の場合は確定申告書Bを利用して手続きを行います。
書類の作成方法としては、まず、雑所得の金額計算明細書を準備しましょう。
FX利益が50万円、経費が10万円だった場合は、FXの所得金額は
50万円ー10万円=40万円
となります。ここに、20.31%の税率をかけて所得税を算出します。
40万円x20.31%=81,260円
確定申告書Bの第二表、第三表には、本業であるサラリーマンの源泉徴収内容を記入します。
第一表には、本業の収支とFX利益の収支を記入します。申告書を提出し、先ほど算出したFXの分の所得税を納税して手続きは完了です。
FX投資の場合は、他の所得と異なり税率が非常に高いのが特徴です。差し引ける経費はできるだけ多く差し引いて節税対策を心がけましょう。
【アフィリエイトで年間40万円を稼ぐサラリーマンの場合】
もう一つ、経費を計上できるタイプの副業についてケーススタディを見ていきましょう。
ブログの広告収入「アフィリエイト」も、先ほどのFX投資と同じように雑所得として計上することができます。
ただし、税率についてはFXと異なり、195万円以下のカテゴリーでは税率は5%となっています。
サラリーマンの給与所得については、年末調整で既に納税済みなので、アフィリエイトで得た広告収入から必要経費を差し引いて20万円を越える場合に、確定申告が必要となります。
仮に広告収入が30万円あったとして、経費が12万円かかった場合は、
30万円ー12万円=18万円
となるため、確定申告は必要ありません。
経費として認められるものの中には、サーバーレンタル代、ドメイン取得代、あるいは、商品を紹介する場合はその商品の購入代や消耗品費なども経費として計上することが可能です。
【フリーマーケットなどで年間30万円稼ぐOLの場合】
会社勤めのOLさんで、フリーマーケットやメルカリなどへの不要品の出品などで年間30万円を稼ぐ場合はどうでしょうか?
この場合は、雑所得として収入を確定申告することになります。経費として引けるものは、フリーマーケットへの出品料(場所代)や運搬に使った交通費、もし修理してから出品する場合は、修繕費用なども経費として計上できます。
仮に収入30万円、経費8万円の場合は、22万円となりますので確定申告が必要です。
この場合の税率は5%ですので、
22万円x5%=11,000円(所得税)
ということになります。
確定申告を行う時期
様々な副業所得について確定申告の方法を紹介してきました。
確定申告が必要な場合は、その年の1/1〜12/31の間に発生した所得に対し、翌年2/16~3/15までに確定申告して納税する必要があります。
確定申告の会場は、お住まいの地域の管轄税務署になりますが、地域によっては出張所ができますので、どこで確定申告を行うべきかを事前に確認しておくことをおすすめします。
また、国税庁のホームページでも、申告書類の作成コーナーができるほか、必要な書類をそろえられれば、郵送やe-TAXシステムによる確定申告手続きも可能となっています。
初めて確定申告する場合は、分からないことがあれば、税務署が混雑し始める前に、手続き方法の確認や自分の所得の分類を質問してみることをおすすめします。
税務署では、所定の係員がいて申告書の記入方法から手続きまでの流れを丁寧に教えてくれます。すべて無料ですので、税理士などに相談する前に、まずは管轄の税務署へいってみてください。
副業の確定申告に使えるクラウドソフト
最後に確定申告のやり方が分からないし、どのように書類作成するのか不安があるという方にむけて、便利なクラウドソフトを紹介してみます。
■freee
「確定申告freee」は、確定申告書類の作成を行えるクラウドソフトの一つ。業界No.1の会計ソフトfreeeのパッケージとして提供されているサービスで、自宅で簡単に確定申告書類を作ることができます。
サラリーマンの副業なら個人向けのパッケージがおすすめで、freeeのソフトウエア上で質問に答えていくだけで、会計ソフトに記帳されたデータから確定申告書類を作成することができます。
freeeには、便利なアプリも搭載されていますので、例えば会社のお昼休みなど空いた時間に出先からスマホで確定申告書を作ることもできます。
領収書やレシートをスマホで撮影して、記帳済みのデータと紐づけすることができる他、事前に副業専用の口座とクレジットカードを紐付けしておけば、面倒な入力作業なども一切発生せず自動計算してくれるというすぐれものです。
また、e-TAXでの電子申告にも対応していますので、所定の端末などをそろえれば自宅から確定申告書類の提出まで済ませることも可能です。
freeeの場合は、副業と本業の所得合算や税金再計算も行えるほか、FX取引、不動産所得などの分離課税対象所得にも対応しています。
いくつかの副業を掛け持ちしている場合でも、簡単に確定申告手続きを行えますので、大変便利。もし、副業を本業として事業化した場合は、青色申告による確定申告もfreeeで対応していますので、安心して手続きする事ができます。
公式サイト:https://www.freee.co.jp/
副業の経費を計上して節税しよう!
副業の経費はどのように計上すれば良いかを紹介しました。
一口に副業収入と言っても、FX投資を行うか、ブログアフィリエイトで収入をあげるか、あるいはプログラミング講師などのアルバイトを行うかによって確定申告の方法が異なります。
経費を計上できるのは、給与所得以外の副業収入があった場合のみで、税率については、確定申告する副業の種類と所得金額に応じて変わります。
副業の経費を計上することで、課税対象所得を小さくすることができれば、大きな節税効果が期待できます。
まずは、自分の所得がどのジャンルに分類されるのかをしっかりと把握し、経費として計上できるもののレシートや領収書を管理することから始めましょう。