損金算入のメリットを分かりやすく解説!分類や計算方法も
損金算入・不算入とは?
そもそも、会計とは、会社が得た利益や財政状況の報告を行うことが目的です。
いっぽうで、納めなければならない税額の算定のために行うのが税務であり、会計とは主旨が異なります。
税務も、会計と同様、会社が得た利益を割り出し、その金額に応じて税金を計算することになりますが、この税務上の利益は、厳密に言うと会計上の利益とは概念や計算方法が異なります。
会計上の利益の出し方 :収益-費用
税務上の利益の出し方(所得金額):益金-損金
得た収益から、かかった費用や失った費用を引いて、儲けた金額を算出するといった基本的な考え方には違いはありません。
そして、税務上で言う「損金算入」とは、会計上、かかった費用を収益から引くということと同等の意味であり、支払う税金を適切に押さえることを目的としていると言えます。
損金にできるのは、前述したように「原価」「費用」「損失」の3つです。
しかし、会計上費用にしているものを全て損金とはできるわけではありません。
経費を単純に損金とすることを「損金算入」といい、経費だけれど、損金にできない(しない)ものを「損金不算入」と言います。
儲けが多ければ多いほど、支払い税金は増えてしまいますから、この損金不算入の額は小さいほうが良いということになりますね。
損金算入の対象となるもの
では次に、どういったものが損金算入の対象とできるかを、さきほど3つの項目「原価」「費用」
「損失」に分けて解説していきます。
実はそれぞれ、計上するタイミングが影響するので、しっかりと理解しておく必要があるのです。
繰り返しになりますが、この損金算入は会計上の経費と同等の意味合いですので、多ければ多いほど儲けが減少し、納める法人税が少なくて済むことになりますよ。
◆原価◆
原価とは、前述したように「商品のもとの値段」のことです。
具体的には、仕入れ値や、その商品をつくるときにかかった材料などかかったお金のことです。ものではなくサービスを提供している場合は、そのサービスを提供するのにかかったお金を意味します。
商品をつくって販売する製造業の場合は、以下のような計算式で求めることになります。
売上原価=期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高
期首商品卸売高・・・事業年度の最初にある在庫の原価 ※前期末の在庫の原価のことでもある
当期商品仕入高・・・事業年度中に仕入れた商品の原価
期末商品棚卸高・・・事業年度末に残っている在庫の原価
なお、原価を計上するのは売上げて益金が発生したタイミングです。
同時に計上するということを覚えておきましょう。
◆費用◆
費用とは、「会社の事業活動をしていく上でかかった費用」であり、具体的には販売費、一般管理費、その他の費用を指しています。
商品の販売に必要な備品、例えば文具品などがあったとしたら、それも損金に算入できる可能性があります。
この費用を算入するタイミングは、その費用を支払う義務が確定したときです。
原価とは異なるので注意しましょう。
◆損失◆
損失とはそのままの意味で言うと、「失ったもの」です。
先ほど例に挙げたように、工場の機械やいすや机など、年数により目減りした価値のことを指します。
また、自然災害などにより工場に被害が発生したときも損失と考えることができます。
計上するタイミングは内容によって異なるのが特徴です。
前者の場合は、定期的に損金として計上しますが、後者のように突発的に発生するものは、その事象が発生した時点で形状することになります。
最後に、損金算入ができるものには、どのような費用があるか見ていきましょう。
勘定科目でご紹介していきます。
いずれも、原価や費用、損失に当てはまります。
損金算入できないものはなに?
損金算入が認められていない、あるいは制限されているものの判断の仕方ですが、「基本的に経営者の意思によって金額を増減できてしまうもの」という判断基準がもっとも分かりやすいように思います。
そのことについて詳しく書かれているのが、国税庁公式ホームページの「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」の「1 交際費等の範囲」です。そこでは、次のようなことが「交際費等から除かれ」る事例として挙げています。
(1)専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
(2)飲食その他これに類する行為(以下「飲食等」といいます。)のために要する費用(専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除きます。)であって、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が5,000円以下である費用。
なお、この規定は次の事項を記載した書類を保存している場合に限り適用されます。
イ 飲食等の年月日
ロ 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
ハ 飲食等に参加した者の数
ニ その費用の金額並びに飲食店等の名称及び所在地(店舗がない等の理由で名称又は所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の名称、住所等)
ホ その他参考となるべき事項
(3)その他の費用
イ カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
ロ 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
ハ 新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、又は放送のための取材に通常要する費用
個人事業主の方で、「交際費」として計上できるかどうか、あるいは「損金不算入」かどうかの判断に迷ったときは、まずは国税庁のホームページで調べることをおすすめします。
また、損金算入できるものと同じ費用にあたるけれど、損金として算入ができないものもあります。
それは以下のようなものです。
基本的に損金算入ができないものは、事業主の判断で多くしたり少なくしたりできるものや、罰則金といったものが多いです。
役員報酬がその代表的な例です。
交際費に関しては原則損金算入ができますが、1人あたりの金額や、中小企業か大企業などで条件があるほか、税務署にも細かくチェックされるのでしっかりと判断、処理していくことが重要です。
参照元:国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
損金算入できる?できない?租税公課を分類
損金算入、不算入に対する判断で難しいのは交際費だけではありません。
損金算入ができるかどうか、多くの人が悩むものに「租税公課」があります。
租税公課とは、国や地方自治体へ支払う税金(租税)と、公共団体に支払う会費や罰金、手数料(公課)を合わせたものです。
このなかには、税務上経費に認められる「損金算入できるもの」と、「損金できないもの」とがあります。
だからこそ、「この税金はどっち?」「この支払いは損金にできないの?」などと悩まされることになるのです。
しかし、経費と認められれば、損益計算書において「販売費および一般管理費」として計上できます。
当然、支払う税金を減らすことができますので、企業にとっては非常に重要と言えます。
そこで、損金算入できる租税について代表的なものをご紹介していきたいと思います。
業種により見慣れない租税公課もあると思いますが、以上のようにさまざまなものがあります。
そして、かなりの種類の税金が損金として認められることがお分かりいただけるかと思います。
一方で損金算入できる公課には以下のようなものがあります。
企業やお店は地域の商工会や業種により協同組合に加入していることが多く、その会費や組合費への出費は小さくないでしょう。
では次に、損金算入ができない代表的な租税公課も紹介していきます。
原則、所得に関する税金や罰則的な支払いに関しては損金算入ができないと考えると分かりやすいと思います。
ちなみにここにある法人税というのは、所得に対し国に支払う税金です。
一方で、損金算入できるものとしてご紹介した事業税とは、法人税と同様に所得に対してかかるものでも、地方自治体に支払う税金であり別物となります。
これらは、損益計算書上「販売費及び一般管理費」では処理できず、それぞれの性質に合わせて処理することになります。
損金算入が複数年かかるものって?
一般的に損金算入のタイミングは事業年度に行います。
固定資産税や年契約税など割賦払いのものであれば、割賦を決定した事業年度に行います。
しかし、経費となる支出のなかには、複数年かけて損金算入するものがあります。
それは以下の2つが挙げられます。
・減価償却
・繰延資産
▽減価償却
減価償却とは、固定資産(建物や機械など)を得るために支払った費用を、取得したその年度に一気に計上するのではなく、数年に分けて計上する方法です。
たとえば、商品を生産する機械を200万円で購入したとします。
この場合、その機械はその年だけでなく数年は使用できるので、この200万円を数年に分けて
経費=損金として挙げることになります。
ちなみに年数は自由に決められるのではなく、その種類ごとにあらかじめ耐用年数が定められています。詳しく知りたい方は国税庁HPの「主な減価償却資産の耐用年数表」を参照して下さい。
なお、減価償却費のなかでも、「使用期間が1年未満」または「取得価額が10万円未満」のもの(少額減価償却資産)は、使い始めた年度に全額計上します。
個人事業主が事業を始めるにあたり9万円のパソコンを購入した場合は、ほかの消耗品と同じようにその年度の経費として一気に計上しましょう。
▽繰延資産
繰延資産とは、支出が一度で済んでも、支出高価が数年に渡るものを言います。
具体的には以下のようなものです。
・創立費
・開業費費
・株式交付費
・社債発行費
・開発費
これらは、「均等償却」だけでなく「任意償却」という方法がありますので、利益が少ないときには償却費を減らし、利益が多かったときに増やすなどの対策ができます。
法人税と損金の関係について
まずは「法人税」について。ですがその前に、「会社」のシステムについて簡単に説明をします。会社とは、売り上げをあげて利益を出すことで、従業員の労働に対し、給与を支払うシステムになります。
この流れの結果、出た利益に対して掛けられる税金を「法人税」と言うのです。法人税は、個人が自分の所得に対し所得税として税金を納めているように、法人が国に納める税金になります。
「会社が納める税金なら、法人税って個人に関係のない話なんじゃない?」と思ってしまいそうですが、この法人税は従業員のお給料に影響しています。よって、法人税は個人にも大きく影響するものだといえるでしょう。
「個人事業主には関係ないの?個人事業主は法人じゃないし…。」という意見もあるかと思います。
ただ、こちらも、今回のテーマである「損金が、経費にできるかどうか?」という点では、しっかりと理解をしておいて欲しいことではあります。なぜならば、「損金が経費にできる」となると、法人税に関わってくるからです。
法人税に関わってくるということは、会社の利益にも影響してくることになります。
ここまでで、損金と法人税の関係がご理解いただけたかと思います。そこで次の項目で、「損金とは何か?」をご紹介します。
「損金」ってなに?
そもそも皆さまは「損金」なんて言葉を聞いたことがありましたか?おそらく、経理関連のお仕事をされていたり、それこそ個人事業主の方ならばご存じだとは思いますが、それ以外で「”損金”知ってます」という方は、あまりいらっしゃらないのではないでしょうか。
なぜならば、「損金」という言葉は、税務上の用語であり、一般語ではないからです。その損金ですが、「必要経費や損失などのこと」を指します。
法人所得は、法人税額を計算する上の基本になりますが、その計算方法は、会社の利益から、損金を引くことで計算できます。
余談ですが、この「利益」という言葉と似た言葉で、「収益」という言葉がありますが、皆さまはその違いをご存じですか?もしかすると「え?“収益”と“利益”って違うの?」と驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そしてそれは、何も恥ずかしいことではありません。私もつい最近まで、その違いがよく分かっていませんでした。
ということで、一応説明をしておくと、収益とは「企業が得た収入そのもの」のことです。それに対し、利益とは、収益からそれに掛かった費用(例えば、仕入原価や人件費など)を引いたものを意味します。似ていても随分と意味が変わってくることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
話を元に戻しますが、上記より、損金として計上できれば、法人所得を低く計算することができる、ひいては、法人税額を抑えることが可能であることはご理解いただけたのではないでしょうか。
では、次に後ほどお伝えする項目である「損金算入できるもの、できないもの」を理解しやすくするために、「損金として扱われるもの」について、もう少し詳しくご紹介します。
「損金」の分類について
損金については前項で、「必要経費や損失などのこと」と紹介しましたが、ちょっと分かりづらいと思われた方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、もう少し分かりやすく説明すれば、損金とは、会社から出る「費用」や「損失」のことで、法人税法によって「原価」「費用」「損失」の3つに分けられています。
この「原価、費用、損失」という言葉はおそらく聞いたことがあるとは思いますが、一応これらについても、ご説明させていただきますね。
まず「原価」について。原価とは、「商品のもとの値段」のことです。次に「費用」ですが、費用とは、「会社の事業活動をしていく上でかかった費用」のことを指します。いわゆる「販売費、一般管理費、その他の費用」などがそれに当たります。
そして最後に「損失」についてですが、損失とは、例えば、皆さんは、新築と築20年の家なら一般的に、新築のほうが売られている値段は高いということは、簡単に想像できますよね?
それは会社も同じことで、例えば工場などの場合、工場の機械を使い続けていると、その機械の価値は刃こぼれなどの損傷によって下がってしまいます。また、皆さまが会社で使っているいすや机も、年数がたてばたつほど、その価値は下がっていきます。それが「損失」になるわけです。
「じゃあ、損失はいつから損失になるの?」ということに気付かれた方は、かなりするどいです。損失は種類によって損失としてあげる時期が決まっています。ですから、計上の際に注意が必要です。
ここまででだいたいお分かりいただけたとは思いますが、メインテーマの「損金算入」が何かといえば、「法人利益から損金として引けるものとして計算できるもの」ということになります。
逆に言ってしまえば、もし損金算入できるものを算入していなければ、払わなくていい税金を払わなければならず、非常に損をしてしまいます。ですから、損金算入について知っておくことは、とても大切なのです。
では、損金に算入できないものは何なのでしょうか?そして、先ほどの損失で説明をした、損金算入に何年かに渡ってかかるものとは、いったい何なのでしょうか?次の項目からは、それらについてご説明します。
損金不算入は暮らしにどのようにかかわってくる?
会社を経営している方や個人事業主の方、または個人事業主を目指している方が、絶対に避けては通れないことの一つと言えば、法人税や所得税、消費税などの「税金」に関することですよね。
なかでも個人事業主の方の場合、自分一人ですべての業務を行わなければなりません。経理に関することを行った経験のない方が税金に関することに対応するとなると、まずはそれらを理解することから始める必要があります。しかし「理解する」とは言っても、税金は種類がいろいろあるので、非常に難しいですよね。
少し気を取り直して、まずは簡単なところから始めてみましょう♪
今秋、消費税が8%から10%に上がりました。その結果、例えば100円のタワシは、今夏までは108円で買えていましたが、今秋から110円になりました。つまり、2円分、店頭で多く支払わなければならなくなりましたよね?
この支払う税金は、多いより少ない方が消費者にとっていいことは、誰にでもご理解いただけることでしょう。それは法人税も同じで、企業にしろ、個人事業主にしろ、納める税金は少なくしたいものです。
前置きが長くなりましたが、今回の「損金算入」とはそんな法人税に関することです。今回も、もちろん分かりやすく損金算入についてご紹介しますので、最後までお付き合いくださいね。
おわりに
いかがでしょうか?「損金」とは「必要経費や減価償却費などの損失」を指し、損金に算入できれば、法人税を抑えることができる可能性のあることが、お分かりいただけましたでしょうか?
その一方で、損金を算入できない、いわゆる「損金不算入」なものもあり、交際費や接待費との境目が結構難しいこともご理解いただけたのではないでしょうか。
税金のことは知れば知るほど、公私を問わず、自分の得になります。難しいですが、一つひとつクリアすることができるように、頑張りましょう!