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夫婦控除のメリットとは?配偶者控除との違いや仕組み・受給の条件を解説

公開日: 2019.11.30
最終更新日: 2021.09.07

夫婦控除のメリットとは?配偶者控除との違いや仕組み・受給の条件を解説

夫婦控除という制度が始まるって本当?

 2017年政府の税制改正に関連する発表で、「夫婦控除」という新しい税制を政府が検討していることが発表されました。

2019年現在、夫婦控除についてはまだ導入されていませんが、現行の配偶者控除は2018年に改訂されました。

配偶者控除と違って夫婦控除では、共働きする世帯でも控除が受けられる仕組みとなるようですが、導入されるめどはまだたっていません。

そこで今回は、夫婦控除という制度が導入されたら、私たちの家計はどのように変わるのか?夫婦控除のメリットやデメリット、そして夫婦控除が抱える問題点について詳しく解説します。

現在の配偶者控除とは一体どんな制度?

 夫婦控除のメリットやデメリットについて解説する前に、まずは、夫婦控除と現行の配偶者控除にはどんな違いがあるかを理解しておきましょう。

配偶者控除制度は、世帯主の配偶者(妻または夫)が働いていない場合や収入が少ない世帯に対して、ある一定の所得税を控除するという税制の仕組みです。
現行の配偶者控除制度では、配偶者の年間合計所得が38万円以下の配偶者に対して、一人につき世帯主の所得額から38万円を差し引いてもらえることになっています。

配偶者控除の制度が導入されたのは、今から56年前の1963年のことです。「男性は外で働き、女性が家庭を守る」という日本の高度経済成長期に導入されました。
所得税を安くすることで、妻が夫に貢献できるように専業主婦を奨励する制度として誕生したのです。

配偶者控除が導入されてから既に半世紀が過ぎ、現代社会では男女共働きする世帯が増えています。
また、女性の働き方も多様化し、パート・アルバイトだけでなく正社員として働く方が増えてきたため、妻が夫より収入が高い世帯も増加しています。

このような社会背景の中で、今後ますます女性が社会進出していくことは避けられず、配偶者控除はもやは時代にそぐわない税制という見方がされるようになってきたようです。

政府が検討している新しい税制「夫婦控除」とは?

配偶者控除が、夫が外で働き妻が家庭を支える制度であったのに対し、現代社会に即した新しい税制として政府が導入を検討しているのが「夫婦控除」という制度です。

夫婦控除制度は、夫婦の両方の所得を合算して、そこから一定額以下ならば所得控除を行う。あるいは、夫婦のどちらかの所得が38万円以下かどうかに関わらず、どちらか一方の所得から一定額を差し引く形で、税金を控除しようとしている制度です。

2017年にこの議論が持ち上がってから今日まで、まだ導入される運びとはなっていませんが、夫婦控除制度が導入されれば、共働き世帯に大きなメリットがありそうだということが分かります。

配偶者控除と比較した夫婦控除のメリットとデメリット

 続いては、配偶者控除と夫婦控除を比較してそれぞれのメリットとデメリットを見てみましょう。まずは夫婦控除が導入された場合のメリットについてです。

<所得格差による不平等が軽減される>

配偶者控除がなくなったら、専業主婦世帯はどうなるのか?という不安もありますが、その一方で、共働き世帯は夫婦控除が導入されることによって、税制の恩恵を受けられると考えられます。

配偶者控除は、夫婦どちらか一方の所得が高ければ他界ほど、税金が安くなるシステムなので、所得の高い夫を持つ妻は、働かない方が良いという仕組みになっているのです。

日本の所得税は、累進課税制度を導入しています。そのため、所得が多い人ほど納めなければならない税金の額が多くなっていきっます。

所得額=収入額 ー 控除額

という計算で所得額が決まるため、控除額が大きい世帯は、所得がその分少なくなり、所得税が減税されるということです。

夫の収入が年収500万円の世帯と1000万円の世帯では、どれぐらい所得税に差があるのでしょうか?
以下に専業主婦の配偶者がいて、扶養控除対象外となる子供(小学生と幼稚園児の2名)がいる二つの世帯を比較してみましょう。

便宜上、扶養控除と基礎控除以外の社会保障控除などについては、考慮しないものと仮定します。

【年収500万円世帯の場合】
500万円(年収)ー給与所得控除=346万円
※給与所得控除は別名サラリーマン控除とも呼ばれ、会社勤めで給与収入を得ている人が一律で差し引かれる控除のこと。

346万円‐38万円(配偶者控除額)‐38万円(基礎控除額)=270万円(所得額)

確定した所得額は270万円となります。
このカテゴリーでは、所得税率10%とになるため、
38万円(配偶者控除額)×10%=3万8000円

配偶者控除で差し引かれる控除額(税額ベース)となります。

【年収1000万円世帯の場合】
では、年収1000万円の世帯ではどうでしょうか?

1000万円(年収)ー給与所得控除=780万円
780万円ー38万円(配偶者控除額)ー38万円(基礎控除額)=704万円

確定した所得額は704万円です。
このカテゴリーでの所得税率は23%ですので、
38万円(配偶者控除額)×23%=8万7400円

税額をベースにして配偶者控除額を見てみると、年収500万円の世帯と年収1000万円の世帯では、税額ベースで約5万円の差があるということです。

もし、年収500万円の世帯の主婦が扶養の範囲内でパートに出たとして、一方で年収1000万円世帯の主婦が専業主婦で一切働いてなかったとしても、その差は変わらないということです。また、所得格差が広がれば、税額ベースで見る配偶者控除の差はさらに大きくなっていきます。

この試算は所得税をベースに計算していますが、住民税も所得税をベースに算出されることを考えれば、住民税にも所得額の差による世帯間格差が広がるということです。
低所得世帯にとっては、少しでも生活費を増やそうとして、働けば働くほど、損をするということが分かります。

配偶者控除をなくして夫婦控除が導入されれば、現在のような所得の違いによる世帯間格差がなくなり、平等になるということです。
夫婦で所得を増やそうと努力している世帯が、きちんと報われるのがこの夫婦控除の最大のメリットと言えるでしょう。

<事情により配偶者が働けない場合はどうなるのか?>

夫婦控除によってメリットを受ける世帯があるということはご理解いただけたと思いますが、反対にデメリットになる世帯もあります。

例えば、親の介護だったり子供の養育だったり、あるいは健康上の理由などで働けない配偶者がいる世帯もあります。夫婦控除という税制は、あくまでも夫婦ともに健康で働けることが前提の制度です。

人生のライフステージには、出産や育児、親の介護、自分自身の病気などで働けなくなるなど、さまざまな場面が想定されます。
しかしながら、夫婦控除の場合は、年間38万円分の所得控除が受けられないということになってしまいます。

配偶者控除が所得税と住民税の両方に影響を与えることを考慮しると、500万円以下の世帯では

38万円x10%=所得税
33万円x10%=住民税

合計7万1000円分の手取り収入が減ってしまうという計算です。
毎月約6000円ほどの手取り収入が減ることになりますので、低所得世帯にとっては、決して小さな額ではないということです。

夫婦控除制度はいつ頃導入されるのか?

メリットを受ける世帯がある一方で、デメリットを受ける世帯も出てくる夫婦控除制度。一体、いつごろ導入される見込みなのでしょうか?

2016年の段階では、夫婦控除についての導入が既に検討されていましたが、2019年現在に至るまで、夫婦控除制度は導入されていない状況です。その背景には、どのような理由があるのでしょうか?

<夫婦控除が導入されない理由はなに?>

夫婦控除を導入するには、税制の整備、社会保障制度の整備などが必要になってきます。社会全体のインフラの準備が進まないことには、制度を導入することが難しいというのが、今日まで夫婦控除制度が導入されない理由の一つです。

また、企業が支給している配偶者手当てについては、所得上限が設けられているため、民間側での準備についても時間が必要です。日本の税制では、個人単位で課税される仕組みになっていますので、世帯ごとに課税する新しい制度を導入することが難しいというのも、夫婦控除制度の導入が遅れている理由の一つ。

その他にも働けない世帯に対する配慮などを含めた社会全体の整備を整える必要が出てくるため、財源の確保なども政府の課題となっているようです。

2016年に大綱が発表されて3年が過ぎましたが、夫婦控除制度が導入される見通しはたっていません。

夫婦控除の必要性について

 2016年に提出されたものの、実質見送りとなった夫婦控除制度について解説しました。

現行の所得税法では、年収103万円の壁を解消するために配偶者特別控除制度が設けられています。

しかしながら、実質的には企業が支給する配偶者手当ての上限が103万円に設定されていることから、結果的に「年収103万円の壁」を越えられないという状況が続いています。

夫婦控除制度が導入されれば、こういった不平等を解消するのに効果があると期待されており、共働き世帯が増加する現代社会において、この制度の導入は必要不可欠だと考える人も増えています。

また、共働き世帯が増加している社会背景と、今後の超高齢化社会に備えて、女性の労働力も必要とされる時代が到来することを考えると、夫婦控除が導入されることが望ましいと言えるでしょう。

企業側の配偶者補助の金額103万円が変わらないかぎり、実際には働かないという考えの世帯が多くはびこっています。この問題を解消するのが先決かもしれません。

夫婦控除導入後に考えられるメリットとデメリット

夫婦控除が導入された場合を想定して、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?今度は別の視点から見ていきましょう。

共働き世帯が増えた現代社会において、夫婦控除の制度は必要不可欠といっても過言ではありません。もちろん、夫婦控除には良くない点があることも事実です。

そこで、ここからは、実際に夫婦控除制度が導入されたことを想定し、どんなメリットやデメリットがあるのかを見ていきましょう。

<夫婦控除導入後のメリット>

夫婦控除が導入されたことを想定すると、まず、夫婦それぞれが所得税を気にすることなく、積極的に共働きできるようになるというメリットが考えられます。これまで、家事・育児が中心だった女性の社会的地位の向上とスキルアップにもつながっていくでしょう。

また、所得税の面でいろいろなメリットがあるため、離婚率が低下するという見解を示す専門家もいるようです。

夫婦控除が導入されることによって、女性のライフスタイルや生き方の選択肢が増えるというメリットが期待されています。

また、共働き世帯で、妻が夫の収入よりも多く稼ぐ世帯も増えていますので、正社員として活躍している女性や会社経営などで成功する女性が今後ますます増えることでしょう。

そういった時代に夫婦控除が導入されれば、社会全体が活性化するというメリットが考えられるのではないでしょうか?

<夫婦控除導入後のデメリット>

夫婦控除導入後に考えられるデメリットは、先述の通り「専業主婦世帯」の税負担が増加するということです。

共働きの家庭の場合は、収入を別にしているケースも増えていますので、お互いの収入を明らかにしなければ、どのように世帯全体の税負担がかかるのかが分かりません。

もし、夫婦控除制度の導入によって、女性がますます社会へ進出しやすい環境が整えば、配偶者である夫は家事や育児への協力がこれまで異常に必要となるという事実もあります。

また、企業側からすると、もし夫婦控除が導入されれば、これまで支給してきた配偶者手当ての制度そのものを廃止しようという動きもあるようです。

夫婦控除制度の内容が、夫か妻のどちらの所得に対して、どの程度の控除額を設けるのかという議論もされている途中ですので、その結果次第によって、また働き方が異なってくる可能性も考えられます。

配偶者としてこれまで家庭の中で育児や家事を担ってきた女性が社会に出るとなれば、育児のサポート(保育所や保育者の確保)も大きな問題となってきます。

待機児童問題が現在も解消されていない状況ですので、もし、夫婦控除制度が導入されたとしても、こういった生活面での問題点がクリアできなければ、実質的に女性の社会進出が促進されるとは考えにくいのかもしれません。

夫婦控除の導入で専業主婦はどうなるのか?

 夫婦控除が導入されると専業主婦世帯の税負担が増加することが懸念されています。
もちろん、こうなると決まったわけではありませんが、夫婦控除制度の導入後に、現行の配偶者控除制度が廃止される動きがありますので、制度がすべて刷新された場合は、さまざまな影響が考えられています。

「税負担があるから強制的に労働することになる」「男性が働き女性が家事をするというモデルは本当に古いのか?」「女性が社会に出たら少子化が促進されるのでは?」

といった見解も多々あります。

夫婦控除の導入に伴って配偶者控除が一切廃止されるとなれば、こういった議論が出てくるのも無理のないことかもしれません
。具体的に、配偶者控除が完全になくなった場合の所得税の影響はどれぐらいあるのかを試算してみましょう。

配偶者控除で差し引かれる金額は、38万円となっています。日本の平均年収は現在400万円ほどですので、これに控除がなくなった分を上乗せすると年間平均所得は438万円となります。年間所得が438万円の方が納める所得税は年間7万6千円も増加するという計算です。

また、所得税に基づいて住民税も計算される仕組みになっていますので、住民税の負担を加えると、合計10万円以上は税負担が増えることになってしまいます。専業主婦世帯にとって、これまでよりも年間10万円もの税負担があるということは、かなり大きな問題です。

夫婦控除が導入されて、共働き世帯が優遇されることになると、健康保険や厚生年金などの社会保障制度にも影響が出てくると懸念されています。

社会保険の扶養の上限が106万円と設定されている状況ですが、ここを越えると扶養から外れるということになります。もし、専業主婦だった方が106万円以上働くことになると、社会保険の加入も個人で行うことになりますので、この点も考慮しなければなりません。

女性のライフプランを変更していく必要も出てきており、これらの事案は、受け手によってはメリットではなくデメリットとなる可能性も十分に考えられます。

夫婦控除が導入されると、専業主婦世帯にはかなり大きな影響があると考えて間違いなさそうです。

夫婦控除では所得制限が設けられるのか?

 配偶者控除を受けている人口は1500万人と言われています。仮に夫婦控除が導入された場合には、配偶者控除を受けている世帯について、どのような所得制限が設けられるのかというのも争点の一つとなっています。

所得制限=控除が受けられる対象ライン

となりますので、夫婦控除のメリットとして考えられている「世帯全体の収入」で控除されるわけではありません。

稼いだ方がメリットが大きいという風にしてしまうと、ますます世帯間格差が広がる原因となってしまいます。そのため、夫婦控除では、一定以上の所得がある世帯に対しては、控除額をゼロにすることも検討されています。

所得制限についても、まだ話し合いの段階で具体的にはいくらという金額が設定されているわけではありません。

「高所得者世帯に適用しない」と言うのは、現行の配偶者控除制度と同じになるという可能性が高いです。

夫婦控除が導入された場合「800~1000万円の間で段階的に控除額を下げていく」あるいは「1120万円までは控除を受けられるが、1120~1220万円の間で段階的に控除額を下げていく」といった案も提出されていました。
また、「1120万円を超えた段階で控除はなしにすべきだ」といった意見もあったため、結果的に夫婦控除の案自体が見送られることとなったのです。

2018年には、配偶者控除の所得制限の上限が引き上げられましたが、影響を受けるのが1000万円以上の世帯であったことから、実質大多数の世帯にはなんの影響もなかったという見方が強いです。

2018年に改訂された配偶者控除の新しい適用条件は「主な稼ぎ手の収入が1220万円以下、配偶者の稼ぎが150万円以下」という所得制限のラインを設けています。

主な稼ぎ手の年収が1120万円以下の場合は、配偶者の年収が201万円を超えた段階で控除額がゼロになります。

高所得者にとっては単なる増税でしかないかもしれませんが、この制度が適用されたことにより、年収103万円の壁が少し和らいだという見方もできるのかもしれません。

夫婦控除が導入されれば共稼ぎ家庭にメリットがある!

夫婦控除制度は、2018年の段階でいったん見送りされることになりました。
配偶者控除の廃止と夫婦控除の新設によるデメリットを考えると、まだまだ社会的な整備が不十分というのが、見送られた大きな理由となっています。

現在の家族モデル考えると、専業主婦世帯よりも共働き世帯が多いというのが事実です。
しかしながら、配偶者控除の廃止や夫婦控除自体が共働き世帯のみが優遇されるというメリットが全面に打ち出されたため、反発が避けられないという意見が多数を占めたのです。

専業主婦世帯はそれほど多くないのかもしれませんが、増税による負担に対しての反発が強く、「国民の理解が得られない」という政府の判断になったと考えます。

待機児童問題、老人介護の問題、これまで家庭のことをすべて担ってきた女性が社会に出ることについては、さまざまな問題が山積みの状態です。税制の面だけ優遇されたとしても、実際の生活にかかる問題点をクリアにしなければ、女性が共働きで頑張っていくのはまだまだ難しい状況と言えるでしょう。

夫婦控除の導入は、現代社会に即した税制だということは確かです。配偶者控除を段階的に廃止する、あるいは条件付きで適用するなど、何かしらの対策が必要となると考えます。

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