「副業自由化」で気を付けるべきルールとは?
副業をしたい人が増えている
「副業を始めてみたい」、そんな人が増えています。
実際に、あなたの周りでも副業をしている、または始めようとしている方はいませんか?
総務省が公表している平成29年の統計「就業構造基本調査」によると、就業者全体に占める副業希望者の割合は、1992年には4.5%だったのに対し、2017年には6.5%と増加傾向にあります。 正規の職員・従業員のなかで、実際に副業をしている人たちの内訳を見てみると、本業の所得が99万円以下、または1,000万円以上の方が比較的高いものの、全体的に平均的な数値となっています。 年収が少ない人のほうが、副業をしている割合が高いわけではないことに注目です。
では、なぜ収入が高い人が副業をしているのでしょうか?
みずほ創業研究所では、副業を希望する理由について調査しています。 「収入を増やしたいから」という理由が最も多く85.1%ですが、「自分が活躍できる場を広げたいから」が53.5%、「さまざまな分野における人脈を構築したいから」が41.7%、「組織外の知識や技術を積極的に取り込むため」が36.6%と、スキルアップなどの前向きな理由を選んでいる人が多いことがわかります。
だからこそ、副業をしている人たちの割合と、本業の収入額には相関関係がないのでしょう。 自分と同じような年収の人のなかに、実は副業をしている人もいると分かると、自分もやってみようかなという気分になりますよね。
実は政府も公認?副業にまつわる裏事情
このように副業が広まってきた背景には、実は政府の後押しもあるのです。
皆さんは「働き方改革」という言葉を聞いたことがありませんか?
2017年に提唱され、その後もニュースなどで度々登場しているワードです。 意味ははっきりとわからないけれども、言葉は知っているという方がほとんどではないでしょうか。
働き方改革には「長時間労働の是正」「多様で柔軟な働き方の実現」「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」という3つの柱がありますが、その一環として、副業を積極的に認めようという方針が含まれているのです。
副業が認められるということは、どういうことにつながるのでしょうか? 逆に、これまでのように副業を認めなかった場合、ある程度の生活を営めるだけの給与を支払わないと、別の企業に転職されてしまう恐れがありますよね。 それに、そもそも人材募集を行っても、応募者が集まらないかもしれません。 しかし、副業が認められ当たり前になってくると、賃金は低くても正社員として勤務し続ける人が増えてくるでしょう。
平均賃金を抑えることができるという意味で、企業にとってもメリットが生まれます。
厚生労働省では、企業向けに「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成しています。
ガイドラインでは、労働者に副業を認めなかったことにより企業が裁判で負けた例まで示しています。
さらに、副業に関する文言を入れたモデル就業規則も提示。
ホームページから自由にダウンロードできるようにしています。
そのモデル就業規則では、これまであった「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」という規定を削除し、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」という文言を入れたのです。 政府が、副業の自由化を推し進めていることがわかりますよね。
整う周りの環境
先に述べたような政府の動きに対応して、副業市場におけるプラットフォームも整いつつあります。
それは、「クラウドソーシング」です。
個人のスキルを手軽にお金に変える・・・そんなことが可能になるのがクラウドソーシングです。 仕事の依頼、納品もすべてオンライン上で行われるので、出勤する必要もありません。
また、募集している仕事の内容もさまざまです。 ロゴやwebサイトの制作といったIT関係の業務から、セミナーの受付や人事募集のやりとりといった秘書的な業務、数値やデータを表に入力するといった単純作業もあります。
さらに、単発で終わるような仕事や1日1時間程度で終わるものなど、仕事量も選べます。
自分のできる内容や範囲内で、仕事を探しやすい環境となっているのです。
企業としても、アウトソーシング化が図れるので、社内に余計な人材を確保するなどのリスクを減らすことができるようになります。
「収入を増やしたい」「スキルアップをしたい」という一般労働者と、「アウトソーシングをして効率的な経営がしたい」という企業が、相思相愛になったというわけです。
事実、副業の拡大に大きく作用すると考えられる、国内のクラウドソーシングの市場規模は、2020年予測値で、2,950億円と、2019年と比較して125%と増加傾向にあるとみられています。(2016年 矢野経済研究所推計による) このようなクラウドソーシングを取り扱う会社は実際に増えていますし、手軽に収入アップができるということで、登録をする人も増えていると思われます。
副業の定義
では次に、「副業とは一体どんなものを示すのか」について解説していきます。 副業とは、簡単に言うと、「本業以外で行う収入を得る仕事」を指します。 『収入を得る』と『仕事』というキーワードに注目をしてください。
下記にいくつかの具体例を挙げていきます。
■ボランティアは対象外
収入を得るのが副業という定義なので、収入とならないボランティア活動は対象外です。
たとえ、ボランティアに必要となる資金を募金などで集めたとしても、自分の収入にはならないため、副業と判断されることはありません。
■株やFXなどの投資は対象外
副業はあくまで仕事としての業務です。 つまり、労働を提供してその対価を得るという図式が成り立つものを対象としています。
株やFXなどの投資は、『仕事』に対する対価ではありません。 収入は「不労所得型」にあたります。 結果、副業とはなりません。
■不動産投資も対象外
マンションを買い、別の人に貸し出すなどして賃料を得るといった行為も、「不労型所得」です。 株やFX投資と同様、副業には入りません。
■アフィリエイトでの収入は基本的には対象外
ブログに広告を貼ることで広告収入を得るアフィリエイト。
こちらも、いわゆる「不労型所得」にあたるので副業には入りません。
しかし最初から広告収入を目的としたサイト構成や、その金額が大きいケースには、そう判断されない場合も考えられます。
また、本業で知り得たノウハウや企業秘密を公表することは、副業かどうか以前問題です。
トラブルを招く恐れがありますので注意しましょう。
■ネットでの物品販売はケースバイケース
オークションサイトやフリマアプリなどで不用品やハンドメイド商品を販売する人は多いと思います。
これが副業にあたるのかについては、その頻度によって判断がかわってきます。 不定期で販売する場合は副業にはあたりません。
しかし、仕入れてきたものを継続的に販売するといった場合は、ショップとして運営をしていなくても副業と判断される場合があります。
■業務請負は副業にあたる
本業以外の企業に所属し、給与といった収入を得たわけでなくても、クラウドソーシングなどの募集を通じて業務を請け負っている場合は、副業にあたります。 もちろんこれも、1,2回行っただけでは副業とされない場合も。 しかし、ある程度継続的に行った場合には、当然仕事として認定されると覚えておきましょう。
■2つの企業に勤務するのは副業
本業の就業時間後に、飲食店Aにて勤務する・・・これは当然副業にあたります。 本業のない土日などに別の企業で勤務したとしても同じです。 労働に対して収入を得るという行為となります。
副業の自由化?副業をする前に知っておきたいルールと注意点
ここまで読んで、副業に対して前向きになってきた方も多いと思います。
しかし、副業に自由化の波が訪れたとはいえ少なくともチェックしておきたいのが、自分の勤めている企業の就業規則や社内規定です。
その理由は、政府の推進もあり、副業を禁止する企業は減ったとはいえ、「副業をする場合には、届け出や報告を行う」「次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止または制限することができる。」といった規則を設けているところが多いからです。
これは先ほど紹介した、政府によるモデル就業規則にも記載されているためです。
その企業独自のノウハウなどの秘密の漏洩や、名誉棄損や信頼を損なうような副業については、禁止することができるというわけです。
もし違反すると、懲戒処分もあり得ることから、十分注意したいものですね。
副業をする人の義務
「会社に副業をすることを報告しOKをもらったから、これで安心して副業に専念できる!」と考える方もいるかもしれません。 しかし、許可を得たとしても気を付けるべき注意点があります。 それは、副業に夢中になるあまり、本業をおろそかにすることです。 夜遅くまで副業をすることで疲れがたまり、本業の業務に支障が出るなんてことになれば問題です。 改善がされなかったり、副業をやめなかったりした場合には、懲戒解雇の対象になりえます。 自己の健康や意識管理は必須事項といえます。
また、副業による所得が年間20万円を超える場合には、自分で確定申告を行う必要が出てきます。 一般的に企業に勤めている人は会社が申告を行ってくれているので、確定申告については知識や経験があまりない方も多いのではないでしょうか。 税理士に相談すれば簡単ですが、当然費用がかかります。 いまでは確定申告に使えるソフトも充実していますし、わざわざ税務署に行かなくてもオンラインで行うことも可能です。 節約したい方はチャレンジしてみると良いでしょう。
避けたい!こんなトラブル
最後に、実際にあったトラブル例をご紹介します。 本業の就業時間後にキャバレー勤務をしていた女性が、本業の就業中に居眠りがみられたという理由で解雇された例がありました。 確かに就業時間後は自由なので、キャバレー勤務自体はさほど問題とはならなかったはずです。
しかし、本業の仕事は8時45分から17時15分まで、キャバレー勤務は18時から深夜0時までと、労働が長時間に及ぶというものでした。 さらに企業の信頼性も損なわれるという面もあり、企業は解雇を通知することとなったのです。 その後裁判へと発展しましたが、解雇が有効と判断されました。
この例でもわかるように、副業が長時間にわたるものであること、深夜に行うもので本業に支障をきたす可能性があるものは、解雇の対象となるのです。 また、企業のブランドイメージを損なうものも、解雇という判断がくだされることになります。
次の例は、勤務している会社と同業の会社を立ち上げ、解雇された事例です。 しかも、その企業の中でも要職についていた人物であったことで、平成2年当時、話題にもなりました。
ほかにも同一業種の会社を設立し、本業の秩序に影響を与えたとして解雇になった例があります。 つまり、本業の利益と相反することは、解雇対象になるということです。
そこまで明らかに不当なことをせずとも、本業で得たスキルを活かしたいと思う方はいるはずです。 しかし、その企業でしか知り得ないノウハウを活用とした仕事は、その損害の度合いにより、解雇や賠償責任を求められる可能性が高く、避けた方が良いでしょう。
副業が事実上自由化され、さらに就業の環境が整ったことで、副業を始める方が増えていくことでしょう。 しかし、労働者が注意すべきことがあるのも事実。 トラブルにならないよう、副業内容のチェックや自己管理を行って、収入アップやスキルアップをはかってくださいね。