ポートフォリオの「なに?」「どうつくる?」がまとめてわかる! 初心者向けガイド
「ポートフォリオをご用意ください」・・・仕事を探しているときに、こんなことを言われる、または、書かれていることがありますよね?
しかし、「ポートフォリオ」とは何なのか、いまいち、よく分かっていない方もいるでしょう。
また、ポートフォリオの意味が分かっていても、具体的にどのように作成したらいいのか、困っている方もいるはずです。
そこで本記事では、ポートフォリオについて概要を説明するとともに、ポートフォリオの作り方、さらには、優れたポートフォリオを作るためのポイントについても、解説していきます。
ポートフォリオとは?
ポートフォリオとは、そもそもどういった意味があるのでしょうか。
本来の言葉の意味は「書類かばん」または「書類かばんなど書類入れに収納された書類」です。
しかし、その本来の意味を乗り越えて、ある特定のものを指すことがあります。とはいえ、使用する場面によって指すものが違うのが、この言葉の意味を余計にわかりづらくしているかもしれません。下記に、具体的な例を示します。
■金融機関での説明や金融商品、財テクなどに関する解説サイトや書籍で使われる場合
「リスクを減らすためにポートフォリオを形成することをおすすめします」・・・銀行や証券会社から、そんな説明がされることがあります。
低金利時代に対応するため、今もっているお金を預貯金しておくのではなく、株や投資信託、債権を購入し、積極的に資産運用を行う方が増えています。
しかし、株式や投資信託は、債権や預貯金よりもリスクが高く、原本割れの恐れもあります。
そのため、株式や積極的な投資信託は資金のうち半分までにし、残り半分を債権購入や預貯金に回すなどの分散投資することが資産運用の定石と言われています。そういった分散投資自体を、ポートフォリオと呼んでいます。
■教育の現場で使われる場合
学校の先生や塾の講師などに使用されるポートフォリオとは、生徒一人一人の過去の履歴を示しています。例えば、試験結果やレポート、部活動などの実績をまとめたものです。総合的な成績評価のために使用しています。
これは、先生たちの間の会話で使用されることはあっても、生徒や保護者に対して使われることはないと言っていいでしょう。つまり、この用途は、ごく限られた機会でしか使われることはありません。
■クリエイティブ系やライティングなどの分野で使われている場合
イラストレーターやグラフィックデザイナー、ライターなどの求人で求められるポートフォリオは、先に述べた教育の現場で使われるのと少し似た意味で使われています。
しかし、教育の現場で使われている意味より、少し重たいものになります。
具体的には、「あなたのポートフォリオを提出してください」といった言われ方をすることが多いです。
これは、「実績をまとめたもの」ということです。
仕事を応募するときは、履歴書や職務経歴書を提出するものですよね。イラストレーターやグラフィックデザイナー、Webライターなどは、過去の作品を出すことを求められます。それを「ポートフォリオ」と呼んでいるのです。
今回の記事は、この後者のポートフォリオに関して、なぜ必要なのか、どのように作成したら良いのかを解説するものです。資産運用におけるポートフォリオについて知りたい方は、別の解説記事を参照くださいね。
ポートフォリオが必要な理由
イラストレーターやグラフィックデザイナー、ライターなどの求人において、履歴書や庶務経歴書のほかに、なぜ、ポートフォリオを提出することが求められるのでしょうか。
それは、イラストレーターやグラフィックデザイナーといったクリエイティブ系の求人では、過去にその人がどのような作品を作ってきたか見るのが、何よりも重要だからです。
ライティングも同様。過去にどの会社で仕事をしてきたかよりも、どんなものを書いてきたかが重要ですよね。
ポートフォリオを見れば、その人のスキルや実力が分かります。
つまり、採用の重要な基準というわけです。
ポートフォリオは出せばいいわけじゃない!
「ポートフォリオは過去の実績」と聞いて「なんだ、じゃぁ、過去の作品を渡せばいいのか」と安堵した方も多いでしょう。
しかし、ポートフォリオはただ出せばOKというわけでは決してありません。
教育の現場でのポートフォリオは、先生が生徒の評価をつけるための、資料的な意味合いが強いのに対し、求人におけるポートフォリオは、採用してもらうための資料といった意味合いが強いからです。
つまり、ポートフォリオの作り方自体も工夫する必要があるのです。
求人の際、なかにはポートフォリオを求められないケースもあります。
その場合は、テストといった形で課題が出される場合が多いです。
課題であれば、受ける人はみな一様に同じ課題に取り組み、同じような提出の仕方になるはずです。しかし、ポートフォリオの場合は違います。ポートフォリオはただ提出するように求められるだけで、提出の仕方は細かく指定されない場合が多いからです。
つまり、その提出の仕方、見せ方、すべてにその人の実力が映し出されてしまうということ。
それも、採用の基準に入れられる場合が多いのです。
だからこそ、ポートフォリオを上手に作ることが重要です。作品自体が良くても、ポートフォリオの出来が悪い場合には、他の人に採用枠を取られてしまう恐れもあることを頭に入れておきましょう。
ポートフォリオの作り方
ポートフォリオはどのように作れば良いのでしょうか。
職種によってポイントが異なりますので、採用の際にポートフォリオを求められることが多い職種別にご案内していきます。
■イラストレーターやグラフィックデザイナー系のポートフォリオ
○分量を増やしすぎないこと(作品は10~15個程度)
採用人数や応募人数にもよりますが、面接は1人あたり5~10分程度で終わる場合も多いです。量が多いと全てを見ることができません。これはと思う作品をまとめてくる必要があります。
○見やすいこと・きれいにみえること
バラバラではなくひとつにまとめる。大きいものが多い場合は、手に取りやすいよう、現物ではなくパソコンで見せる。
○メインを決めること(2つくらい)
面接ではアピールポイントを聞かれる場合が多いです。その際には、作品を引き合いに出すことになるでしょう。
「この作品は依頼先からこういったことを求められたので、~~といったところを注意しながら制作しました。とくに○○を表現するために△△といった工夫を行いました」
など、その作品を見せながら具体的な説明をするはずです。
〇自分自身についての紹介をのせること
繰り返しになりますが、求人の際に求められるポートフォリオは、採用してもらうための資料です。単なる作品集ではありません。あなた自身についての紹介スペースを作りましょう。
その際に、履歴書には書ききれない、または伝えきれない、あなたの人となりが伝わるようにしてください。
【メインにする作品の選び方】
アピールするメイン作品を決める際は、イラスト自体の出来映えがよいもの、時間をかけたものを選びがちですが、将来性や他の人との違いをアピールができる作品を選びましょう。
以下のようなアピールができるからです。
「この作品は、依頼先から、~~といった指示を受けて制作したものです。基本的には、依頼内容を忠実に再現するよう心がけていますがが、○○○は××という観点から、△△といった工夫を施したらどうか提案させていただき、結果、こういった作品に仕上がりました」
つまり「提案ができること」をアピールするということです。単にイラストがうまいという方は沢山います。他の人と差別化することが重要なのです。
■Webデザイン系のポートフォリオ
○メインを2つ程度にしぼり、あとは、ファーストビューやリストのみ。
何ページかに渡るWebサイトは、イラスト単体とは異なり、全体を見るのに時間を要します。そのため、説明する際に使用するWebサイトは2つ程度に絞ります。
○使えるスキルが一目でわかるよう一覧かイラストにする
Webデザインにおいて、IllustratorやPhotoshopなどの編集ソフトが扱えるか、コーディングなどの知識があるかどうかは重要です。
単に過去に制作したWebサイトを見せて説明しただけでは、採用担当者にうまく伝わりません。そこで、リストにして相手に指し示すことが重要です。言葉で列挙するのも良いのですが、視覚的に一目でわかるよう表にするのが一番です。その表現力も採用の基準になることでしょう。
〇実績が足りない場合には仮想サイトを作る
まだ、1社か2社程度の実績しかなく、実績を十分にアピールできない場合は、仮想のサイトを制作して実力をアピールしましょう。
その場合はトップページだけで構いません。5.6個はポートフォリオ専用に制作しておきましょう。ただし、コンセプトや使う技術をわけること。似たような趣旨や雰囲気のサイトでは、自分に可能性を感じてもらえません。
さまざまなデザインや構成ができることをアピールすることが大事です。
■Webライター系のポートフォリオ
〇どんなメディアで書いてきたのかを説明すること
※例として作品を紹介する場合は、著作権が依頼先にあることに注意しましょう。具体的には、その作品の依頼先に掲載の許可をとることです。許可がもらえない場合は、おおまかなジャンルと内容を書き示し、採用担当に事情を説明してください。
〇具体的な作業を説明する
記事が実際に掲載されるまでには、さまざまな過程を通してから実行されているはずです。
とくに、SEOを意識したWeb記事の場合、①キーワードや文字数の選定②見出しの作成③本記事のライティング④イラストや写真の挿入⑤校正⑥Wordpressなどでのアップ作業など、複数のステップを踏んでおり、それぞれ別の担当者により行われているケースが高いです。
自分が、③④だけ担当したのか、②③④を担当したのかを明確に説明しましょう。
また、要した時間を記載するのがおすすめ。どれくらいの分量をどれくらいの時間でこなせるかも採用担当が気にするポイントです。
〇得意ジャンルをアピール
ライティングと言っても、ジャンルや内容はさまざまです。そして、自分にも得意分野があるはずです。自分が得意とする分野を採用担当者にアピールするようにしましょう。もちろん、実際に応募する仕事に関連する分野内でのアピールが望ましいです。もし、初めてチャレンジする分野の場合には、過去の例を引き合いに出し、下調べの方法や苦労したこと、結果がどうだったかを説明し、初めての分野でも結果を残せる可能性があることをアピールしましょう。
〇数字で表せる場合は数字を入れる
Web記事の場合で、アクセス数カウンタがついている場合、その数字も伝えましょう。数字なので成果がわかりやすいのが特徴です。
〇関係のあるジャンルはまとめて
ポートフォリオで示すときは、ジャンル別にまとめるようにしましょう。そのほうが、どんなジャンルを書いてきたのか一目でわかるからです。
人は資料をまとめるときに、時系列でまとめてしまいがちです。たしかに、過去を振り返るとき、自分が行ってきた順番、つまり古い順から新しい順(または逆)に思い浮かべるものなので、至極当然なことです。しかし、面接の時間は限られています。しかも、採用担当者が知りたいのは、あなたの歴史ではなく、あなたに何ができるかなのです。したがって時系列でまとめるのではなく、ジャンル別にまとめ、わかりやすいものにしましょう。
○アピール案件を絞る
ポートフォリオに載せる案件は、数自体を絞ることがおすすめです。数が多すぎると、採用担当者は見る気さえ失ってしまいます。ジャンル別で、名称などを書く場合は、本数をしぼり、あとは〇本など数字で実績を表しましょう。
なお、具体的に掲載する案件は、応募する会社に関連する記事をチョイスしましょう。主に税金関係の記事のライターを探しているのに、関連度の低い健康記事系の実績でアピールしてもあまり響かないからです。同じような税金関係の記事の実績があるなら、その実績を、ないのであれば、比較的関連性の高い分野の実績をアピールするべきです。または、対象とする読者が近い分野の記事を選ぶなど、案件を絞るようにしましょう。
ワンランク上のポートフォリオにするポイント
■イラストレーター/グラフィックデザイナー、Webデザイナーの場合はポートフォリオ専用サイトをつくる
いわゆるクリエイティブ系のお仕事の場合は、あらかじめポートフォリオ専用サイトを制作することがおすすめです。求人に応募するために都度作るのではなく、Webサイトを普段から公開しておくのです。
Webデザイナーの場合には、腕の見せ所でもありますし、それが実績にもつながります。
イラストレーターやグラフィックデザイナーなどで、自分でWebサイトがつくれない場合は、ポートフォリオ専用フォーマットを提供しているWebサービスを利用すると良いでしょう。
なお、Webから仕事受注をできるようにしておくと、よりチャンスが広がるのではないでしょうか。
■Webライターはブログをつくる
Web記事のライターの場合、記事のURLや、概要を紹介することが一般的です。しかし、制作したことはアピールできても、月間PVやコンバージョン数などは企業から情報がもらえないことが多いです。また、知りえたとしても、一般的に企業の秘密事項にあたるので、実際には言えないという問題点があります。
そこでおすすめなのが、自分自身のブログを制作することです。
自分で制作したブログ記事であれば、アクセス数やシェア数など、より詳しい数値が出せるはず。そこで良い数字が出されば、自ら応募する際の印象を良くするだけでなく、より高収入の案件に出会える率が高まります。
Googleアナリティクスの画面
ポートフォリオのFAQ
■「紙で用意すべきか、パソコン上で見られるもので用意した方が良いのか」
これは、職種や募集する内容によって異なります。
紙の媒体のイラストやデザインに関する求人のポートフォリオは、当然紙で用意するべきです。ただし、担当者によってはパソコン上で見たいと言われるケースもあります。事前に質問が難しければ、両方用意しておいた方が良いでしょう。
Webデザイナーなど、パソコン画面上で公開される制作者の求人は、紙で用意しなくても特段問題はないでしょう。もし、当日紙で渡すよう指示されたときも、紙で用意していないことが採用するかどうかの判断に大きく影響することはないからです。ただし、どうしてもそこの会社で働きたいという場合には、準備しておくと良いですね。その場合は、クリアファイルなどに入れ、採用担当が見やすいようきれいにまとめるようにしましょう。
■「紙で用意する場合、どれくらいの大きさがいいのか?」
A4が基本です。イメージを伝えるためA3で見せたいという方もいますが、採用担当者が見やすいことが重要です。なお、特別な事情がない場合は、縦型が望ましいです。
■「背景は何色がいい?」
作品が際立つよう、白色背景が一般的です。ただし、作品の雰囲気によっては黒色でもOK.
■「どれくらいの分量を用意すればいいの?」
募集する規模や人数にもよりますが、応募者数が多い場合は、5~10分程度しか与えられない場合もあります。しかし、逆に20~30分もらえる場合も。もし30分の枠がもらえたとして、ポートフォリオに掲載した内容が少ないと、対応しきれない場合があります。できたら、事前に「1人あたり何分くらいいただけますか?ポートフォリオを用意するのに教えてください」と質問しておくと良いでしょう。企業は、その企業に合っていて、優秀な人物が欲しいはずなので、そんな質問をしたからといって落としたりしないはずです。もし、「人数によるから現時点ではわからない」などと言われた場合は、当日調整できるよう、10分バージョンと、30分バージョンなど、2パターン用意することをおすすめします。
ポートフォリオのデザイン
イラストレーターやグラフィックデザイナー、Webデザイナーなど、デザインをつくる職種の場合は、ビジュアルにこだわることが重要です。
PowerPointなどのスライドショーにする場合は、ストーリー性を、Webサイトでポートフォリオを制作する場合、Webサイトならではの動的な仕掛けをつくることで、採用担当を魅了するような世界観を演出することが重要です。
なぜならそれも採用基準となるからです。
ポートフォリオは、そのポートフォリオ自体を作品と考え、時間をかけて取り組むべきなのです。
■一流アーティストのポートフォリオを参考にしよう
具体的なイメージが作れない場合は、一流アーティストと呼ばれる人たちのポートフォリオを参考にすることがおすすめです。検索サイトで検索すると、たくさんWebサイトとして公開されているポートフォリオが見つかるはずです。
■表紙をつける
最初のページ、つまりファーストビューに、作品やプロフィールを入れる方も多いですが、ファーストビューは、自分を象徴する画像や映像のみにすることもおすすめ。「これから、こういうプレゼンが始まるのだ」が感じ取れるようなものです。ここに自分の主張、オリジナリティを全て詰め込む気持ちで作りましょう。まるで、映画や物語の始まりといったように、採用担当者をワクワクする気分にさせてくださいね。
voice cream 奈良より
ポートフォリオ作成に便利なサービス
ポートフォリオの作り方はわかっても、いざ一から作るとなると、思わず首をひねってしまうはず。最初のプラニングでつまずいてしまったり、とりあえずコンセプト無しで作り始めてしまって伝えたいものにそぐわないものになってしまったり・・・というのは、よくあることです。
そこで利用したいのがポートフォリオ作成をサポートしてくれるWebサービスです。フォーマットが用意されているので、イメージに合うフォーマットを選び、自分の作品や紹介文を登録していくだけでポートフォリオが完成するのです。
■Behance(ビハンス)
Illustratorなど、クリエイティブ系ソフトで有名なAdobeが運営するソーシャルメディアプラットフォーム。クリエイターに特化しており、世界中のクリエイターとつながることができます。
イラストレーター、グラフィックデザイナーはもちろん、Webクリエイター系も登録しています。ここでポートフォリオを作成することも可能。SNSでもあるので、ほかのクリエイターから「いいね」などリアクションももらえます。ここで作品を公開することにより、企業からオファーがもらえる可能性があります。なお、無料で使用することができますが、プロジェクトごとの登録であること、世界中で利用されているサイトなので英語で入力したほうが望ましいことから、慣れるまで少し時間がかかる可能性があります。
全部で5つのサービスをご紹介しますね。
■JAYPEG(ジェイペグ)
自分の作品を投稿できるソーシャルサービス。簡単に優れたポートフォリオが作成できます。
■PORTFOLIOBOX(ポートフォリオボックス)
無料でポートフォリオが作れるうえ、販売できるWebサービス。また、ドメインも提供してもらえるので、本格的なショップが制作可能です。ブログで宣伝することも可能です。
■Wixでつくるポートフォリオと個人ページ
マウスでドラッグしていくだけ。コーディングができなくても、ホームページ制作が簡単にできるWebサービス。コーポレーションサイトから、オンラインショッピングサイトまでさまざまな形態に対応しており、そのひとつとしてポートフォリオ用に適したフォームやノウハウも提供しています。
■I’m Creator(アイムクリエイター)
まとめ
今回は、ポートフォリオについて、その本当の意味について説明して参りました。
ポートフォリオはあなた自身といっても過言ではないほど、重要なものであることがお分かりいただけたと思います。
また、どのようなポートフォリオにしたら良いかも、イメージしていただけたのではないでしょうか。
ポートフォリオ制作に便利なWebサービスをうまく利用して、作品を際立たせるようなポートフォリオをつくってくださいね。