職業倫理ってどんな意味?その必要性や職種別の職業倫理をご紹介
「職業倫理」あまり聞きなれない言葉ではありますが、社会人として働く人には職種・業種に関わらず必ず理解が必要になるものです。
昨今、職業倫理が欠如しているために、ニュースに取り上げられるような事態になることもあります。
企業の粉飾決済や食品の偽装表示などがわかりやすい例でしょう。では、職業倫理がどういったものか、なぜ必要なのか詳しく説明していきます。
職業倫理の定義
「職業倫理」とは、『特定の職業に要請される倫理、または職業人に求められる倫理』のことで、個人はもちろん、企業などの組織など広い範囲にまで求められるものです。
そもそも「倫理」とは何か、わかるようでわからないという方もいるでしょう。
「倫理」とは、『人として守り行うべき道で、道徳やモラル』のことです。
ですので、職業倫理とは、『仕事をする上でのやっていいことといけないことを認識したうえで、その認識に従い行動すること』と言えるでしょう。
わかりやすい例でいうと、仕事上で知りえた個人情報を外部に漏らしてはいけない、というのは全ての職業に就く人に共通する職業倫理だと言えると思います。
職業倫理の必要性とは
ビジネスの基本は、取引先との信頼関係です。
相手のことを信頼していなければ、自社のデータを開示したり、顧客データを閲覧可能にしたりできませんよね。職業倫理というと難しく聞こえますが、基本となるのは自分の仕事に誇りを持ち、誠実に働こうという気持ちです。
相手をリスペクトし、嘘偽りのない誠実な関係を築こうとすれば、おのずとその行動に現れてくるものです。職業倫理が欠如しているような人がいれば、個人情報を悪用した犯罪や食品偽装の問題につながることもあります。
犯罪とまではいかなくても、粗悪品と知りながらその商品を販売した、配達員が郵便物を正しく届けず廃棄した、などという例もありました。職業倫理がなければ、そういった人と人もしくは企業との信頼関係の上で成り立っているこの世界を揺るがすようなことにもなるでしょう。
また、消費者は基本的には企業を信頼しているからこそ、表示された情報を信じてモノを購入したりサービスを利用したりしています。
職業倫理がなければ、企業はモノを売るために嘘の情報を与えることも平気で行うようになってしまいます。過去には、外国産の食品を国産だと偽って高い値段で販売していたという事件もありました。
消費者を守るためにも、職業倫理は理解するべき考え方なのです。
職業別の職業倫理の一例をご紹介
当然のことですが、職業によって職業倫理は異なります。ここから一例を見ていきましょう。
■医師の職業倫理
日本医師会の定めた医師の倫理綱領によると、下記のような内容になっています。
・生涯学習の精神を保ち、つねに医学の知識と技術の習得に努めるとともに、その進歩・発展に尽くす。
・この職業の尊厳と責任を自覚し、教養を深め、人格を高めるように心掛ける。
・医療を受ける人びとの人格を尊重し、やさしい心で接するとともに、医療内容についてよく説明し、信頼を得るように努める。
・互いに尊敬し、医療関係者と協力して医療に尽くす。
・医療の公共性を重んじ、医療を通じて社会の発展に尽くすとともに、法規範の尊守および法秩序の形成に努める。
・医業にあたって営利を目的としない。
参考ページ:日本医師会「 医師の職業倫理指針[第3版]」
これを見ると医師という職業上では、利益を求めて過剰な治療や投薬を行ったり、患者の意見を無視して治療を行うようなことは、職業倫理に反することと言えるでしょう。
医師に限らず、医療従事者というのは、特に高い倫理観を求められる職業です。世界に目を向けてみても、ドイツ、フランス、アメリカ、イギリスにおいても、倫理性を求められる職業の最高位にランク付けされています。
また医の倫理においては、他国と日本のものも大きな相違はありません。医師という職業で大事にされている考え方は世界共通のものと言えるでしょう。
■保育士の職業倫理
こどもたちの健やかな発達のために欠かすことのできない保育士のお仕事。全国保育士会では、以下のような倫理が定められています。
すべての子どもは、豊かな愛情のなかで心身ともに健やかに育てられ、自ら伸びていく無限の可能性を持っています。
私たちは、子どもが現在(いま)を幸せに生活し、未来(あす)を生きる力を育てる保育の仕事に誇りと責任をもって、自らの人間性と専門性の向上に努め、一人ひとりの子どもを心から尊重し、次のことを行います。
・私たちは、子どもの育ちを支えます。
・私たちは、保護者の子育てを支えます。
・私たちは、子どもと子育てにやさしい社会をつくります。
1.子どもの最善の利益の尊重
2.子どもの発達保障
3.保護者との協力
4.プライバシーの保護
5.チームワークと自己評価
6.利用者の代弁
7.地域の子育て支援
8.専門職としての責務
参考ページ:全国保育士会「全国保育士会倫理綱領」
一人ひとりの子供を尊重し、健康で安全な育ちを支えるということが書かれています。これを読めば安心して、保育施設や保育士を信頼しようという気持ちになりますよね。
多くの保育士が子供に寄り添った保育をしてくれる一方で、しっかりと職業倫理を理解していないごく一部の保育士が、悲しいことに虐待や最悪の場合は事件につながるようなことを引き起こしてしまうのでしょう。
子供の命を預かり、健全な発達を支える保育士にも、高い倫理性が求められています。
職業倫理まとめ
ここまで職業倫理について見てきました。一見すると難しい単語ですが、意味がわかれば難しいことはなく、その職業でやるべきこととやるべきでないことの指針とも言えるでしょう。
例では医師と保育士をあげましたが、職業倫理は明文化されているかどうかに関わらず、どの職業にも存在しています。在宅ワーカーやフリーランスでお仕事もしている方でも、業務上で知りえた情報の守秘義務などは課されていることが多いでしょう。
今後就きたい仕事があれば、その職業倫理について調べておくと、よりその職業についての理解が深まることと思います。
自分の職業についての誇りとしっかりとした倫理観を持って、仕事をしていきたいですね。